ヤギ・ひつじでCO2削減!? 緑地から広がるCSRの種

2017/11/08 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 東芝府中事業所にヤギとひつじがやってきた!?
  • 実は「ヤギ・ひつじ除草」の効果は抜群。
  • ヤギとひつじから広がるCSRの種とは?
ヤギ・ひつじでCO2削減!? 緑地から広がるCSRの種

さまざまな企業で取り組んでいる環境活動。しかし、具体的なアクションを起こそうと思うと、何をすればよいのか、頭を悩ませる担当者も少なくないはず。そのような中、東芝府中事業所では、ヤギとひつじを使った取り組みを行っている。かわいらしいヤギとひつじがもたらす意外なパワーをご紹介しよう。

ヤギ・ひつじの除草効果は予想以上!?

「府中事業所の緑地面積は約10万㎡です。例年、機械を使った除草を行っていましたが、多大なリソースの投入やCO2の発生、除草くずの処分などさまざまな問題がありました。これまでも東京都内の住宅地にある事業所として、府中事業所では多くの環境経営の取り組みを進めてきましたが、2014年、自治体や企業で行われ始めていた『ヤギ除草』についてニュースで知り、導入の検討を始めました」

 

そう語るのは、東芝府中事業所の鎌田英昭氏だ。「ヤギ除草」とはヤギに雑草を食べさせて除草するというもの。すでに「ヤギ除草」を行っていた別の企業の見学を通して、具体的な内容を把握し、2015年、府中事業所では初めてヤギ3頭を受け入れ、「ヤギ除草」を開始した。

東芝 府中事業所 鎌田英昭氏

東芝 府中事業所 鎌田英昭氏

「『ヤギ除草』を開始したところ、社内でこれまでにはない取り組みだとの評価を受け、2年目も続けることにしました。2年目はヤギに加え、ひつじも導入しましたが、ひつじを利用した例は珍しかったため、テレビ局の取材などを受けて話題になりました。3年目となる今年は除草ロボットも導入しています。ロボットによる除草では、再生可能エネルギーを使った電源供給設備を自製するなどの工夫をしているのですよ。」(鎌田氏)

草を食むひつじ

草を食むひつじ

ヤギとひつじをめぐるエピソードも。

 

「一度、ヤギが逃亡したこともありました。ひょいひょい逃げられて、なかなか距離を詰められなかったのですが、最後は東芝ブレイブルーパスに所属するラグビー部員の松岡久善選手が日ごろ鍛えたタックルの瞬発力を生かしてヤギをつかまえました。さすがです」(鎌田氏)

 

ラグビーといえば、日本代表としておなじみの大野均選手も府中事業所の緑化を含めた施設管理を担当している。大野選手の実家は酪農家であるため、そこからヤギの毛刈りを行うという発想が生まれ、東京農工大学と連携して毛刈りを実施したこともあるという。

ヤギの世話をする大野均選手

ヤギの世話をする大野均選手

「ヤギ・ひつじ除草」の効果は抜群。機械による除草と比較すると、年間では613.3kgのCO2が削減できる。さらに、ヤギたちの糞尿は窒素肥料になるという効果も。しかし、何といっても、ヤギ・ひつじを利用する最大のメリットは除草コストの削減だ。

 

「まず、除草くずが出ないため、その処分費用が削減できます。しかし、それだけではありません。これまでは景観の問題から、芝生は短く刈りそろえる必要がありました。しかし、ヤギ・ひつじに除草してもらうエリアを区画すると、食べさせるために芝生を少し長めに放置する必要があります。それにより、結果的にマンパワーによる刈り込み面積が削減され、コストダウンが達成されました」(鎌田氏)

ヤギ・ひつじによる除草効果は大きい

ヤギ・ひつじによる除草効果は大きい

もちろん、これには「芝生の景観が損なわれているのは、ヤギとひつじのために草を伸ばしておかねばならないからだ」という周囲の理解が必要であることから、「ヤギ・ひつじ除草」に関するストーリー作りやアピールが重要となる。だが、このストーリー作りが、環境経営や地域貢献などのさまざまなCSR活動を結びつけていく契機になったのだという。

「総体としてのCSR活動」とは?

鎌田氏をはじめとする施設管理担当者たちは「ヤギ・ひつじ除草」への理解を進めてもらうため、これまでさまざまなストーリー作りを進めてきた。1年目はサンくん、アーちゃん、ルーくんとヤギに名前を付けたり、ヤギとひつじをモチーフにキャラクターを作って案内看板に活用したりした。2年目にはTシャツ、3年目には缶バッチを作成。

「ヤギ・ひつじ除草」への理解を深めてもらうためにTシャツや看板を作成

「ヤギ・ひつじ除草」への理解を深めてもらうためにTシャツや看板を作成

ヤギ・ひつじを活用した地域との連携も進んでいます。今年、毛刈りでもお世話になった東京農工大学から、受け入れ先の見つからないヤギの親子が4頭出たとの連絡をいただき、受け入れ可能なエリアを持つ府中事業所でヤギの親子を受け入れることになりました」(鎌田氏)

子ヤギも除草プロジェクトに参加

子ヤギも除草プロジェクトに参加

こうした取り組みにより「ヤギ・ひつじ除草」に対する地域からの理解も着々と得られている。近所の幼稚園や小学生が散歩で府中事業所の周辺の一般の道路を通り、そこから見えるヤギとひつじに喜んでいることも多いとか。

 

「最近では『干し草プロジェクト』も実施しました。東京農工大学ではアニマルセラピーの一環で周辺の小学校に除草ヤギを貸し出していますが、それほど小学校の敷地内に草がないため、大学からエサを購入して配っているのが実状。そこで府中事業所では構内からの排熱を利用して、除草くずをコストゼロで乾燥させ、小学校に配ったのです。こうした取り組みを持続していきたいと思っています」(鎌田氏)

 

今後は、東京農工大学と連携し、雑草種の中でも毒草などを除き、引き取り需要の高い牧草だけを繁殖させ、除草回数を削減するとともに、処分費を削減することを考えている。さらなる地域連携・企業連携の強化で、大きなイノベーションがもたらされることも期待されよう。

 

この動画は2017年11月8日に公開されたものです。

「CSR活動は目に見える結果を出すのが難しく、なかなか具体的なアクションにまで落とし込むことができないことも多いと思います。しかし、私は一つの取り組みだけではなく、そこから押し広げ、さまざまな活動を有機的に組み合わせた『総体としてのCSR活動』を進めていくことが求められていると考えています。「ヤギ・ひつじ除草」を中心に、事業場内のCSRひいては地域全体が結びついていくという意味で、府中事業所の活動はとても意味があるのではないでしょうか」(鎌田氏)

 

のんびりと草を食み、それでいて実は意外な力を持つヤギとひつじのかわいらしい姿を一度見に来てはいかがだろうか。

 

※ヤギとひつじは、時期によっては事業所内で飼育していない場合があります。
 また、一般公開はしておりませんが、敷地外の一般道路からご覧いただけます。
(時間帯によってはご覧になれない場合があります)

府中事業所全体で取り組む「ヤギ・ひつじプロジェクト」

府中事業所全体で取り組む「ヤギ・ひつじプロジェクト」

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