EV×シェアリング!? EV×自動運転!? 次世代電池と進むEV普及のその先へ

2018/02/14 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • EV社会に欠かせない二次電池の課題を知っておこう!
  • これまでにはなかった二次電池「SCiB™」ならではの特長とは?
  • 自動運転タクシーが迎えに来る!?SCiB™がもたらす未来を展望!
EV×シェアリング!? EV×自動運転!? 次世代電池と進むEV普及のその先へ

自動運転、電気自動車(EV)、カーシェアリング――近年、世間で話題になっている自動車にまつわるさまざまなワード。だが、これらは個別に検討され、将来、どのように関連していくかは意外と議論されることが少ないのではないだろうか。

 

一台のEVを複数人でシェアリングし、人々が自由に所定の場所で乗り捨てる。また、自動運転技術の進展により、無人のEVタクシーが目的地まで送ってくれるようになる。そうした未来が実現したとき、EV用バッテリーに求められるスペックは、実は現在考えられているものとは異なってくるのだという。

 

そこに着目しているのが東芝の二次電池SCiB™。今回、私たちが考えもしなかったEV社会の潜在ニーズを掘り起こし、来たる未来を展望してみよう。

「EVの充電に20分も待つことができますか」

さまざまな調査会社が、2050年には1年間に販売される自動車の約半分がEVだと予測している(※)。しかし、現在、EVには課題がまだまだある。その一つが走行距離だ。

※「EV・PHVロードマップ検討会」(2016年3月23日) 経済産業省

「現在、最も走行距離が長いとされるEVでも、フル充電で約400km程度といわれています。だいぶガソリン車に近づいてきましたが、雪降る夜道で暖房しながら走行したらどうでしょう?単純に電池の搭載数を増やせば、それだけ長く走れますが、電池の重量増加による燃費低下やコストの問題から、あまり現実的とはいえません」

 

現在のEV事情をそう明かすのは、東芝インフラシステムズ株式会社 産業・自動車システム事業部の宮本祐紀子氏。EVの長走行距離化には、現実的にはまだまだ厳しい道のりが待っているといえよう。

 

二次電池とEVに関わる市場調査を行っている宮本氏

二次電池とEVに関わる市場調査を行っている宮本氏

だが、国内には現在、約2万8,500基のEV用充電設備が設置されている。そうした充電設備をうまく利用すると、現行のEVでも生活に支障がない気もするが、どうなのだろうか。

 

「もちろん、東京から大阪までEVでドライブ旅行に出けることは可能です。でも、充電時間が問題です。充電が終わるまでの15~20分の間、しかも旅行の最中、何度も何度もスタンドで待っていることはできるでしょうか」(宮本氏)

 

従来の二次電池において問題とされてきた走行距離。しかし宮本氏によると、EV社会の未来を見据えたとき、実は必要となってくるのは走行距離だけではなく、充電にさほど時間がかからない「急速充電」なのだという。この新たなニーズに応えたのがSCiB™なのだ。

走行距離だけが重要ではない理由とは?

今後、EVが普及するためには、必ずしも長い走行距離は必要としない。特に都市部などでは、電車で駅まで来た後、タクシーなどを使って駅の周辺の遠くても数十kmを移動するといったこともあるだろう。近距離を移動し、その後で充電できれば、社会生活では十分である。

 

ただ、そこで連続して使用する時に重要となるのが充電速度だ。充電するたびに15~20分間も待っていられない。

 

「SCiB™の最大の特長は6分で80%充電可能という急速充電です。このような特長をもつ二次電池は他にはなかなかありません。そのために急速充電という特長を生かした用途・領域がこれまで考えられてきませんでした。しかしSCiB™は、使い方をひと工夫することで従来見逃していた潜在ニーズを満たし、大きく未来が変わる可能性を秘めています」(宮本氏)

 

SCiB™のセル(二次電池の最小単位)

SCiB™のセル(二次電池の最小単位)
複数のセルを収納したモジュールを自動車に搭載する

例えばEVの路線バス。従来の二次電池では充電時間が必要なため、ガソリン車を使用していたときよりも、待機用のバスを多く用意しておかなければならなかった。だが、SCiB™は充電時間が6分で済むため、待機用のバスを配備する必要はない。さらに、バスは決まった距離のルートを走り、戻って来た時に充電すればよいので、ルート1回当たりの走行距離は長くはなく、多くの二次電池を搭載する必要はない。結果的に重量のみならず、コストも抑えることが可能になるのだ。

 

「近い将来、生まれるかもしれない自動運転タクシーにもSCiB™は適しています。ロボット掃除機のように、近距離を移動したタクシーが自動で充電設備に戻る。充電時間が短いので、とても回転率が良くなります。こうした回転率が収益に直結するカーシェアリングもSCiB™の特長が発揮できる分野だと思っています」(宮本氏)

 

2017年まで環境省委託事業「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の一環として実施したEVバスの実証走行

2017年まで環境省委託事業「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の一環として実施したEVバスの実証走行

このような繰り返し充電を想定した使い方において重要となってくるのが長寿命性である。SCiB™は充放電を1万5,000回以上繰り返しても劣化しない(※)という優れた特長を持っている。急速充電と長寿命をセットにしているからこそ、SCiB™は未来を大きく変えていく原動力となりうるのだ。

※60Aの場合。

それにしても、急速充電を特長とした二次電池がなぜこれまでに生まれてこなかったのだろうか。

 

「一般的なリチウムイオン二次電池は、大きな電流で充電を行うと、反応が追いつかず、負極側にリチウム金属が発生し、短絡(※)する可能性が生じます。これが急速充電の開発を妨げてきました。しかしSCiB™は負極の素材にチタン酸リチウムを採用するなどの工夫により、原理的にリチウム金属が極めて発生しにくく、また万が一、内部で短絡が生じた場合でも熱暴走を起こしにくいという、自動車においては何物にもかえられない安全性を確保しています」(東芝インフラシステムズ株式会社 産業・自動車システム事業部 長谷川亜希氏)

※短絡:電気回路における2点が、低いインピーダンスで接続され、ショートすること。

SCiB™を技術面から説明する長谷川氏

SCiB™を技術面から説明する長谷川氏

今後、さらに拡大するといわれているカーシェアリング。これがEVになるとき、SCiB™の特長が生かされるのだ。安心安全を確保したEVが道路を走る。EVのシェアリングで複数人が一台を乗り回し、現在の数十倍の回数で充放電が行われても、電池はまだまだ使える。さらに車を乗り捨てた後、素早く充電できる。また、無人タクシーが走り回り、駅の近くなどで急速充電し、即座に次の客を拾う。特に人口が集中する都市部では街の風景が様変わりするだろう。

 

一方で、宮本氏によると、郊外では走行距離が必要になることも多いため、ハイブリッド車が普及する可能性が高いという。二次電池は減速によって熱として捨てられる運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収し、走行用のエネルギーとして再利用することが可能である。自動車の長い使用年数の間、減速時に何度も急速充電をすることを考えると、やはり必要となってくるのは幾度もの充放電に耐えうる電池の長寿命性。都市部のみならず郊外にもSCiB™にしか実現できない社会が生み出されていくだろう。

 

SCiB™を搭載した自動運転タクシーが迎えに来る日がすぐそこまで来ているのかもしれない。急速充電・長寿命性・安全性すべてを兼ね備えた二次電池がつくりだす新しいコミュニティに期待したい。

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