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モーションキャプチャで探る 技能の匠の動きの秘密


モーションキャプチャから判明した疲労の謎

二人のデータの比較で大きく異なっていたものの一つが、両足への重心のかかり具合。右足、左足における力の入り具合の平均値を示す青色と緑色の点線に注目してください。岡部さんは松井さんに比べ、両足の数値の差(赤矢印)が大きいです。これはつまり、岡部さんの重心が前足に偏っているということ。前傾姿勢だと大きく疲労すると松井さんが経験で感じていたのは、重心が前にかかりすぎるからでしょう」(中村氏)


縦軸は床反力(足への力の入り具合)[N]、横軸は時間[s]を示している。

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縦軸は床反力(足への力の入り具合)[N]、横軸は時間[s]を示している。岡部選手は松井指導員に比べ、重心が片方の足に偏っているため、青点線と緑点線の幅が大きい。なお、岡部選手は左利き、松井指導員は右利きのため、より力の入る前足が逆となっている。)

技能者育成にモーキャプを役立てる企業は数社存在するが、ほとんどが身体の一部だけを計測するもの。それに対し、東芝の訓練では、身体全体を計測して筋骨格シミュレーションで分析する。これにより得られる最大の効果は、身体のあらゆる部位のつながりを把握できること。

指導員やビデオが外見による指導だとすれば、モーキャプは身体内部からの指導だといえるでしょう。一流技能者が一流たるゆえんはフォームだけにあるのではありません。例えば姿勢と重心は連動します様々な部位の最適なつながりが熟練技能者の身体に内在しているのです」(中村氏)

モーションキャプチャで測定した岡部選手の身体の動きをパソコン上で再現

モーションキャプチャで測定した岡部選手の身体の動きをパソコン上で再現

モーキャプによる技能者育成の取り組みはまだ始まったばかり。もちろん課題も山積みだ。

外見と身体内部をより連携させることが重要です。例えば私たちの指導では音を大切にしています。ヤスリがうまく材料にあたって削れているときと、ヤスリがぶれたときの音は違うのです。モーキャプで力の入り方を測定し、音の違いと結び付けていきたいと思います」(松井指導員)

「モーキャプを着用すると、軽量とはいえ、やはりベルトの加圧があり実際の競技とは異なる環境となります。より簡素なセンサで計測できる仕組みづくりが課題です」(中村氏)

モーションキャプチャ活用の今と未来について話し合う三氏

モーションキャプチャ活用の今と未来について話し合う松井指導員、岡部選手、中村氏(左から順に)

最後に、ベテラン、若手の技能者から見たモーキャプの可能性を聞いてみた。

「前傾姿勢が疲労につながる。これまで経験から教えていた内容がデータにより間違っていなかったと確信することができました。確かに技能が上達するにつれ、自分の身体の特性に合わせた動き方を、モーキャプではなく試行錯誤で身につけていかなくてはいけません。ただその前には基本の習得が必須。モーキャプはこうした若手技能者の習得スピード向上に役立つはずです」(松井指導員)

「身についている癖は簡単に抜けるものではありません。自分で心から納得することが技能上達の近道だと思っています。『外見から見える感覚』と『身体内部の力の働き方』の両面から納得する。そこにモーキャプの意義があるのではないでしょうか」(岡部選手)

左から松井指導員、岡部選手、中村氏

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