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モーターには希少資源が使われていた!? 忘れられた磁石リバイバルへの挑戦


市場、実験室から忘れられた磁石が最新技術と共によみがえる

SmCo磁石はモーター用の市場においても、そして研究対象としても長らく忘れられた存在。当然、実用化に向けては幾つものハードルがあった。

「実験室レベルで、そして量産レベルのそれぞれで超えなければならない壁がありました。まず、鉄濃度を高めると、モーターの設計で重要な保磁力(※注1)が低下してしまう、という問題です。私たちはこの保磁力が低下する原因を突き止め、当社独自の熱処理による組織制御技術を開発することで、280kJ/m3という(BH)max(※注2)を室温で実現しました。このタイプの磁石では世界最高となるパワーです

従来技術との比較

実験成功のプレスリリースは大きな反響を集め、新聞やテレビなど多くのメディアに取り上げられた。ちょうどレアアース高騰に経済界、産業界が危機感を募らせていた時期でもあったのだ。

量産化に際しても問題を一つひとつクリアし、安定した品質を担保。東芝と東芝マテリアルが共同開発した技術によって量産プロセスの道筋が見えた。桜田氏がプロジェクトの原初企画を構想し始めた2007年から7年後、2014年のことである。

そして、早くも2014年度には商用化のファーストステップを刻む。JR九州の新型車両「305系」系電車の駆動システムへの採用が決定し、2015年2月から営業運転がスタートしたのだ。

さらなる高磁力、高耐熱磁石の開発にまい進する開発陣に吉報が届いた。2017年3月、優れた国産技術を開発し、産業分野の発展に貢献・功績を残した開発者・グループに贈られる「市村産業賞貢献賞」の受賞が決まったのだ。

レアアースの中でも特に希少な重希土類を一切使用せず、高い磁力と優れた減磁耐性を併せ持つ高鉄濃度SmCo磁石を世界で初めて開発したこと。そして、独自の熱処理による組織制御技術によって量産体制を確立し、鉄道車両の駆動システムに採用されたことが高く評価された。

株式会社東芝 研究開発センター 桜田新哉氏

「約25年の長きに渡り、一緒に仕事を行ってきた東芝マテリアルの岡村正巳さんと共に受賞できたことを大変うれしく思っています。ただ、岡村さんは2017年3月に逝去され、贈呈式への参列はかないませんでした……。若手の頃からお世話になり、研究開発の後押しをしてくれた岡村さんと積み上げてきた成果が、実用化に結び付いたと思います」

開発技術の適用例

鉄道車両での活用が軌道に乗った今、風力発電機、電気自動車、ハイブリッド車、エアコン、エレベータ、産業用モーター……幅広い用途での活用が視野に入ってきた。もちろん本磁石が目指す140℃の耐熱性を必要とはしないモーターも存在する。だがネオジム磁石と共存し使い分けながらSmCo磁石の用途を拡大することは、希少資源をいかにバランスよく使用していくかという大きな問題を解決する糸口になるに違いない。

■脚注
※注1 : (BH)max(最大磁気エネルギー積):磁石が持つエネルギーの大きさ。
※注2 : 保磁力:外部磁界に対抗して磁石が磁束を保とうとする力のこと。

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