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世界のエネルギー事情を変える技術 「直流送電」は何がすごい?


直流送電が世界のエネルギー事情を変える!?

「交流送電の場合、送電施設に必要なのは変圧器だけで済みますが、直流送電施設にはこれに加えて直流から交流へ、交流から直流に変換する変換器が必要となります。つまり送電設備のコストで見れば、交流送電のほうが有利です。しかし、例えば海底ケーブルを通して50キロ、100キロといった距離を送電することは、送電中に電力ロスの大きい交流では不可能なのが実情。その点、直流であれば1,000キロでも2,000キロでも、技術的に無理なく送電できます」(高木氏)

つまり、送電と受電の双方に然るべき設備が整えば、送電できる距離と範囲は拡大することになる。実際、東芝ではこうした特性を生かし、高電圧直流送電(HVDC)の技術をさまざまなシーンで活用中だ。その具体例の一つがイタリアにある。

「イタリアでは、昨今の問題から原子力発電所の新規建設が困難で、安定的な大規模電源の確保に悩まされています。そこで、イタリアのチェパガッティとモンテネグロのコトルをアドリア海を挟んでおよそ400キロの距離を海底ケーブルで結び、主にモンテネグロ側から電気を送るプロジェクトが立ち上がり、2017年現在建設工事を進めています」(佐藤氏)

東芝エネルギーシステムズ株式会社・電力流通システム事業部 佐藤純正氏

東芝エネルギーシステムズ株式会社・電力流通システム事業部 佐藤純正氏

モンテネグロ側で発電した交流の電気を直流に変換し、海底ケーブルを通してイタリアの変換設備に送電、そこで再び交流に変換する。これによって400キロの距離を越えた再生可能エネルギーの電力供給が可能になった。低炭素化への流れで、再生可能エネルギーを利用する便益が評価されての投資である。数年越しの大規模プロジェクトだが、これによってイタリアの電力事情は今後、大きく変わっていくだろう。

イタリア〜モンテネグロ間約400kmを海底ケーブルで繋ぐ

イタリア〜モンテネグロ間約400kmを海底ケーブルで繋ぐ

変電所の完成予想図(CG)

変電所の完成予想図(CG)

こうした直流送電技術の浸透は、さらに世界のエネルギー問題の解決に深く関わることになるはずだ。

「日本の再生可能エネルギーは現在、北海道や九州などで活発に発電が進められていますが、すでにそれぞれの地域だけでは使い切れないほどの発電量になる場合があります。そこで需要の高い東京や大阪などの大都市圏への長距離送電が可能になれば、一層再生可能エネルギーの活用は進むでしょう。」(高木氏)

現状、太陽光発電や風力発電は直流で発電されている。これをそのまま、距離を問わずに需要地へ送ることができれば、再生可能エネルギーの促進に大きく貢献するだろう。周囲を海に囲まれた日本列島においては、洋上風力発電普及の後押しにもつながるかもしれない。

折しも昨年、WWFジャパン*が2050年までにすべての電力を自然エネルギーで賄うという、長期目標を策定したばかり。これを実現するには、交流送電の技術だけでは困難なのは言わずもがなだ。

*WWFジャパン:世界最大規模の自然環境保護団体

もちろんコスト面の問題は無視できないが、既設の送電網を生かしつつ、要所で変換設備を活用する視点を持てば、次世代の電力網づくりが現実味を帯びてくる。直流送電と交流送電、双方の特性を生かしたベストミックスの姿を追うことが、理想の社会環境につながるのかもしれない。また投資と便益のバランスが重要だが、便益に関する評価や価値は時代で変化するので、未来を見越した社会インフラ投資が重要だろう。

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