半導体って何だろう? エジソン、フレミングの真空管の系譜

2018/05/23 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • エジソン発見の科学法則を受け継いでフレミングが真空管を開発
  • 真空管も半導体製品も役割は「電気を操る」?
  • 物質も「半導体」?製品も「半導体」?
半導体って何だろう? エジソン、フレミングの真空管の系譜

半導体と、誰もが知る発明王エジソンとの意外な関係をご存じだろうか。

 

エジソンの発明品として有名なものの一つが白熱電球。1883年、トーマス・エジソンは白熱電球のフィラメントの劣化について研究しているうちに、フィラメントを金属箔で覆うと、金属箔とフィラメントの間に電流が流れるのを観測した。

 

発明品は多数あるものの、エジソンが発見した科学法則はこれが唯一のもの。しかしエジソンはそれ以上、研究を行うことをしなかった。

 

その後、「フレミング左手の法則」で有名なジョン・フレミングが、エジソンの発見に着目して研究を進め、真空管が誕生。これが半導体の祖先である。

真空管

真空管

見た目は大きく変われども、現在使用されている半導体の本質的な役割は真空管とあまり変わらない。それは「電気を操る」ということだ。

「電気を操る」とは?

私たちが日常使用している電気製品。例えば洗濯機ではモーターが動いたり、止まったり、スピードを変えたり、逆回転したりしている。このようにモーターの動き方を変えるには、流れる電気の量を変えたり、電気の向きを変えたりする必要がある。

 

これが「電気を操る」の意味すること。全ての電気製品に欠かせない。だが、どうすれば電気を操ることができるのだろうか。

電気の操作の意味

電気の操作の意味

これに応えたのが、真空管、そして真空管の後に開発された半導体である。

 

電気が本格的に使用されるようになったのは約200年前。エジソンにより電球の実用化が始まり、その後、電話などの通信機器の普及で生活の中で電気を利用する場面が増加した。

 

だが、問題も生まれる。例えば通信機器。電話機と電話機をつなぐだけでは、回路上の電気抵抗により電気信号が弱くなり、遠方の相手に音声が届かなかったのである。音声信号を増幅させるべく、「電気を操る」必要性に迫られていた。

通信機器の問題

それを解決したのが真空管。これは増幅や整流などを行い、回路に流れる電気の量をコントロールする部品のことである。ガラス管の内側が真空になっていることから真空管と呼ばれる。

 

下の動画は1925年に生産された真空管ラジオを再調整して動かした貴重な映像だ。3本の真空管を使って受信信号から音声信号を取り出し、それを増幅させてスピーカーからはっきりと流すことが可能になった。

 

真空管を使用したラジオ
この動画は2018年5月23日に公開されたものです。

しかし真空管には、ガラス管であることから壊れやすい、小型化しにくい、寿命が短いなど多くの欠点があった。そうした弱点を克服し、誕生したのが半導体製品だったのだ。

なぜ真空管は半導体に置き換わったの?

1947年、米国・ベル研究所にてトランジスタが発明される。トランジスタとは、電気を増幅させ、加えてスイッチの役割も担う半導体製品。真空管と似た機能を果たしている。

トランジスタ

先ほどご説明した通り、真空管は電気の量を調整する部品だ。これが可能だったのは、電気の通りやすさを変えていたから。実は電気の通りやすさが変わる性質を持つ物質は自然界にも存在する。代表例がケイ素(シリコン)やゲルマニウムだ。これらを半導体と呼んでいる。ベル研究所はゲルマニウムを活用してトランジスタを作ったのだった。

 

半導体の大きな特徴は条件によって電気を通したり通さなかったりすること。半導体はそれら単体では電気を通さない。しかしリンやボロンといった別の物質をわずかに添加することで、電気を通すようになる。

 

トランジスタなどの半導体製品の最大のメリットは真空管に比べ圧倒的に小さいこと。高さが約8cmもあった真空管に対し、初期のトランジスタ製品は1cm弱であり、これらを使って回路を組むことで、真空管時代のコンピューターは大幅に小型化された。

 

また、半導体製品は真空管に比べ、長寿命で高機能、耐久性に優れ、しかも安価。次第に真空管はトランジスタなどの半導体製品に置き換わっていった。

真空管時代のコンピューターは高さが180cmもあった(東芝未来科学館所蔵)

真空管時代のコンピューターは高さが180cmもあった(東芝未来科学館所蔵)

なお、半導体と半導体製品は区別されるべきもの。ケイ素(シリコン)やゲルマニウムなどの物質のことを半導体と呼び、その特性を利用して回路を形成し、さまざまな役割を果たすようになったデバイスが半導体製品である。

 

ただ、現在では半導体製品のことも「半導体」と言い表されることも多いのでご注意いただきたい。「電気を操る」半導体製品は高性能化により、低消費電力化、ひいては低炭素社会を実現することが可能だ。東芝は、自動車・産業用・IoTを支える半導体製品の開発を通して、人にやさしいエレクトロニクスに貢献している。

 

1878年、日本で初めて電灯が点灯した。成功させたのは藤岡市助ら工部大学校(※)の学生たちとその教授。藤岡は東芝の創業者の一人で、今では日本のエジソンと呼ばれている。真空管発明のもととなったエジソン、そして藤岡。二人のエジソンのDNAを東芝の半導体技術は脈々と受け継いでいる。

 

※現在の東京大学工学部

エジソンからフレミングの真空管へ。真空管から半導体製品へ。半導体の歴史は、とりもなおさず「電気を操る」技術が私たちの生活を変えていった歴史でもあったのだ。

Related Contents