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海芝浦 閉じられた地の開かれた想像力


芥川賞作品の舞台にも!? 閉じられた開放性の魅力

どうしたら工場地帯特有の雰囲気を持つ海芝浦は地域に開かれたものになるのか――思いついたのが公園を作るというアイディア。1997年に完成した、緑地が愛らしいこぢんまりとした海芝公園は、現在、老若男女問わず様々な人々で賑わっている。

海芝公園の入り口

海芝公園の入り口

それもそのはず。海芝公園からは京浜運河を挟んで、近くに鶴見つばさ橋、遠くに横浜ベイブリッジを望むことができ、景観が抜群。その他、「改札外に出られない」、「電車の本数が少なく到達しにくい」など、東京に近いとは思えないほどレアな駅の魅力が詰まっている。

鶴見つばさ橋

鶴見つばさ橋

開かれた公園から閉じられた魅力を堪能する――この逆説的な体験を紐解くカギとして、海芝浦を舞台にした2つの小説を紹介しよう。

一つ目は笙野頼子『タイムスリップコンビナート』。第111回芥川賞を受賞した作品だ。マグロと恋愛する夢に悩む語り手は突然の電話で海芝浦に行くよう命令される。海芝浦にたどり着いた語り手の目に映る海は、SFのように近未来的で厳しい。バブル崩壊後の不況の中、マグロとの恋愛には何ら進展がないという夢にも似た「行き止まり」の実相を「行き止まり」の駅・海芝浦で突き付けられることとなる。

推理作家として著名な西村京太郎の『運河の見える駅で』も取り上げたい。この小説で印象的なのは海芝浦の空の色。小説の冒頭に主人公が恋人と眺める真っ青な美しい色と、ラストで主人公が一人だけで見る海芝浦の地の色合いが鮮やかなコントラストとなって読者に訴えかけてくる。

海のみならず、空の色も印象的だ

海のみならず、空の色も印象的だ

どちらの作品も海芝浦という地ならではの想像力が基盤となっている。閉じられた地は、時には灰色の重苦しい内面を映し出し、時にはそこにいる人を小さく囲みこむような親密な空気を生み、時には海にきらめく光のような歓喜をもたらす。

閉じられた地であるからこそ生まれうる想像力は小説家のみならず、私たちをも同様に刺激してやまない。これが人々を惹きつける理由の一つなのかもしれない。

だが、それも海芝公園に訪れるからこそ可能なのだ。閉じられた魅力と向き合う一つの場所として、海芝公園は人々に開放されている。

海芝公園

日々流れていく生活。辛いことも、理不尽なことも、幸せも喜びもある。そうした時々で一旦立ち止まって考えたいときは、ぜひ海芝浦に来ていただきたい。

あるいは流れが濁ったように滞り、あるいはゆったりと雄大に構え、あるいはさざ波にきらめく海に面する閉じられた地。そこで生まれる開かれた想像力が私たちをより高い次元へと連れて行ってくれるはずだ。

海芝浦

 

この動画は2018年5月30日に公開されたものです。

※海芝公園は改札外にあります。一般の方は、海芝浦駅からは海芝公園にのみ出ることができます。海芝浦駅または海芝公園にお越しの際は往復の運賃が必要となります。

※京浜事業所に向けての写真撮影はご遠慮いただいております。

■海芝公園
開園時間:9:00~20:30(ただし、元旦のみ朝6時30分から開園)
車での来園はできませんので、JR鶴見線をご利用ください。

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■関連サイト
鶴見臨港鐵道株式会社ホームページ

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