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電気抵抗ゼロの世界 超電導技術の大いなる飛躍


後悔から継承へ 超電導技術者のスピリット

住吉氏:我々がMRI用の超電導磁石を提供する直接のお客様は医療機器メーカー。しかし、最終的には一般の方々が使用します。いわゆるBtoBtoC(※)といわれる製品です。

※「Business to Business to Consumer」の略。

当時開発したMRI用超電導磁石(東芝未来科学館HPより転載)

当時開発したMRI用超電導磁石(東芝未来科学館HPより転載)

しかし今振り返ると、当時の我々は、磁場精度の向上など、超電導磁石としていかに良いものを作るかということに専念しすぎて、「C」のエンドユーザーのところまで意識しきれていなかった。利用者の視点を考慮して設計ができていなかったところは大きな反省だと思っています。

――こうした反省がその後の東芝の超電導技術の開発に取り組む姿勢に大きな影響を与えているのでしょうか。

高見氏:そうですね。私は重粒子線がん治療に使われる重粒子線がん治療装置用の超電導磁石の開発に携わりましたが、エンドユーザーを意識して開発・設計できたことが、この技術のブレイクスルーにつながったと思っています。

東芝エネルギーシステムズ株式会社 京浜事業所 原子力機器装置部 高見正平氏

東芝エネルギーシステムズ株式会社 京浜事業所 原子力機器装置部 高見正平氏

――重粒子線がん治療とは、放射線の一種である重粒子線を用いた最先端のがんの治療法。加速させた重粒子を患部に当てて治療を行いますが、重粒子の軌道を制御して照射するためには、高磁場が必要ですね。

住吉氏:従来、重粒子線の軌道を制御できず、患部に照射する際、患者の体を傾けていました。でも体への負担を考えると、がんを患っている方を動かすことなんてできません。

そこで重粒子線を発生させ照射を行う構造体「ガントリー」に超電導磁石を使用することで、ガントリーの小型化を実現患者を傾けるのではなくガントリーを360°回せたのが画期的だったんだよね。

重粒子線がん治療装置 回転ガントリー(協力:量研/放医研)

重粒子線がん治療装置 回転ガントリー(協力:量研/放医研)

高見氏:ガントリーの回転には様々な技術が必要で、そのうちの一つが磁場を高速で変える技術。患部がいかなる位置にあっても正確に重粒子線を照射できるように、患部の位置に合わせて磁場を変え、照射の軌道を制御する必要があるのです。

しかし、普通の超電導磁石は高速で電流を変えるのが苦手で、すぐに温度が上がってしまいます。磁場を高速に変化させる技術を開発したことにより、ガントリーを回転でき、さらに患者の治療時間も短くなりました。

一般の方々が実際に利用する製品として良いものが作れる。開発者として、これほどうれしいことはありません。

住吉氏:今後も大学や研究機関と連携しながら最先端の技術に取り組みつつ、そこで培った技術をより良い製品づくりに生かしていくというサイクルが重要です。こうしたサイクルを通じ、技術を継承してくことが我々の使命だと思っています。

住吉氏(左)、高見氏(右)

住吉氏(左)、高見氏(右)

高見氏:量産品に求められるのは安いだけでなく、品質の良いものですから、常に最先端の技術を量産品にも盛り込んで、製品の品質を上げていく必要があります

現在、超電導技術は、医療やリニアモーターカーなど我々の身の回りで適用され始めていますそうした時代において、きちんとエンドユーザーのニーズを察知し、設計・開発段階から取り入れることを意識しなければと思っています。

――高見氏が開発に携わった重粒子線がん治療装置には、今回ご紹介した磁場を高速で変化させる技術の他にも様々な技術が搭載されています。次回、詳しくお話しいただきましょう。

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