loading
TOP > 社会インフラ > 消せる印刷機と消せるペン モノづくり企業の魂の共鳴

消せる印刷機と消せるペン モノづくり企業の魂の共鳴


コモンセンスでは不可能な実験・・・?

「フリクションボールの消えるインクは60度程度の温度で色が消えます。一方、定着器では150度以上に加熱します。この圧倒的な差をいかにして埋めていくのか。パイロット社は消色温度である60度を上げるべく、そして東芝テックは定着の150度を下げるべく、それぞれ苦闘しました

そう語るのは開発プロジェクトリーダーを務めた吉田稔氏。この業界初の開発において「プリンティングエンジンの根本とは何か」を徹底的に追究した。

「『溶かすこと』と『圧力をかけること』。この2つが定着の核です。どのように溶かし、どのように圧力をかければ定着温度を下げられるのか。これがこの開発の最大のポイントでした」(吉田氏)

東芝テック株式会社 技術企画部 技術企画担当 吉田稔氏

東芝テック株式会社 技術企画部 技術企画担当 吉田稔氏

着目したのは、半導体製造に用いられるワイヤーボンディング装置。先端が基盤に対して高速で往復する動きを利用して、紙に熱と圧力を加える定着器を模した実験装置を製作し、実験を重ねた。

ワイヤーボンディング装置の動きを利用して製作した実験装置。プレスする際の圧力や熱を少しずつ変えて実験を重ねた。

ワイヤーボンディング装置の動きを利用して製作した実験装置。プレスする際の圧力や熱を少しずつ変えて実験を重ねた。

「パイロット社と定めた消色・定着温度の目標は100度。コモンセンスからいえば、双方にとっても到底できるようなものではなく、開発スタート時では実現できるかは全く分かりませんでした。しかし、開発を経るにつれ、パイロット社の方が『できるかも』とおっしゃったとき、私たちは『できる』と確信したものでした。彼らは有言実行だったからです」(中村氏)

パイロット社は消色温度の目標を100度以上とし、東芝テックは定着温度の目標を100度以下とした

パイロット社は消色温度の目標を100度以上とし、東芝テックは定着温度の目標を100度以下とした

お互いに実験データを見せ合い、少しずつ温度差をなくしていく。消えるインクでトナーを試作してから5年が経過した。パイロット社の技術改良に加え、東芝テック側では、定着器の加熱する時間と圧力を従来の約4.5倍にすることで、定着温度を目標値にまで押し下げ、製品化に成功した。

定着器の仕組み。Aの領域の定着パッド(赤)でトナーをヒートローラに押し付けて熱を加え、Bのポイントで圧力をかけて、トナーを定着させている。

定着器の仕組み。Aの領域の定着パッド(赤)でトナーをヒートローラに押し付けて熱を加え、Bのポイントで圧力をかけて、トナーを定着させている。

「Loopsの特長は、消色だけでなく、同時にスキャンすることでデータを電子化して保存・活用できることにあります。紙を5回再利用することで、約57%のCO2削減になるという試算もあります。Loopsが活躍する場の一つが新聞社。原稿の校正と確認で何度も修正と印刷を繰り返しますから、Loopsを用いると、エコだけでなく経費削減にもなります」(吉田氏)

中村氏(左)と吉田氏(右)

中村氏(左)と吉田氏(右)

2013年に開催されたCOP19(※)のGreen Climate Exhibitionには、Loopsがエコモデルの見本として出展された。日本企業でこの展示会に出展できた会社は他には存在しないLoopsは世界に日本のエコイメージを植え付けることにも貢献したといってよいだろう
※気候変動枠組条約締約国会議(Conference of the Parties)

印刷、データ化、消色、印刷・・・・・・このループから名付けられた複合機Loops。環境にやさしく、コスト面でもメリットを備えたペーパーリユースシステムは、未来につながる輪をゆっくりと、しかし着実に描こうとしている。

■関連サイト

  • ↓ スクロールで続きを読む ↓