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電力需要予測にAI導入! ディープラーニングで発電所を効率化


精度を上げる要となったデータ抽出「スパースモデリング技術」

「具体的には、過去のデータのほか、気象予測やイベント情報から将来の需要量をAIが分析。その予測値と実績値の関係をフィードバックして機械学習にかけるのが大まかな仕組みになります。そして最大のポイントは、東芝独自の気象予測データのボリューム(地点数)やバラエティ(気象要素)を従来よりも大幅に増やしている点です」(進氏)

これまではおよそ4万平方キロに及ぶ東京電力の供給エリアに対し、県庁所在地など6~7地点のデータを材料としていたが、今回はアメダスの観測ポイントである100地点の気象予測値を生成。さらに、スパースモデリング(※1)という機械学習の技法を駆使し、多地点の気象情報の中から電力需要に影響の大きな地点のデータを活用している。
※1:スパースモデリング
大量データの中から有意なデータを抽出するモデリング技術のこと。

多地点の気象予測データを生かすスパースモデリング技術

多地点の気象予測データを生かすスパースモデリング技術
※特許出願中
需要量に影響する重要地点を自動選別(例:時間帯による重要地点の相違)

今回のチームが結成されたのは、コンテストの募集告知を目にした進氏が、AI技術に長けた志賀氏、スパースモデリングのプロフェッショナルである高田氏にそれぞれ知見を求めたことがきっかけだという。

「私は、これまで工場の製造過程の中で得られる加工条件やセンサーの値などのビッグデータを用いて、品質低下の要因を特定する技術を研究開発してきました。膨大な要因候補の中から、真の要因を見つけ出すところで、スパースモデリングを用いていますが、その技術が電力需要予測に応用できるというのは、新鮮で面白い試みだと感じました。スパースモデリングはまだまだ大きな可能性を秘めており、本来の業務以外にも横展開できないかと考えていた矢先で、私としても渡りに船のお誘いでした」(高田氏)

カギを握った「アンサンブル学習技術」とは?

続いて開発陣が着目したのは、予測値と実績値の誤差。特に太陽光発電は気象条件によって発電量が変わり、需要量は人間の行動によって細かく変化するため、膨大な誤差が発生する。

その膨大な誤差データを、AIによって修正するサイクルを繰り返すわけだが、ここで取り入れられたのが「アンサンブル学習技術」だ。
アンサンブルとは集団のこと。AIとひとくちに言っても様々な手法があり、それらの手法を組み合わせることで予測精度の向上を図る。

「今回採用した、予測値と実績値の法則性を学習させる技法には、例えば夜間の精度が高い反面、昼間の気温に敏感に応答し過ぎるなど、一長一短がありました。そこで複数(集団)のAI技法を駆使し、それぞれが得意な時間帯などを分析した上で、最も精度が高くなるようブレンドしています」(進氏)

ディープラーニング予測値をブレンドするアンサンブル学習技術

ディープラーニング予測値をブレンドするアンサンブル学習技術
※特許出願中

その結果、従来方式と比較して予測誤差が0.5~1.0%減少する技法が完成。誤差が1.0%減ると、電力供給コストは約0.1%下がると言われ、仮に供給コストを年間1兆円とすれば、実に10億円もの削減が可能ということになる。

そうした成果が評価されての今回の最優秀賞受賞。システム全体を統括した志賀氏は、次のように振り返る。

「今回はこれまでの研究開発の結果をシステムにのせるだけでなく、コンテスト主催側のシステムと連携する必要があり、それを定められた期間内にすべて完遂する必要がありました。非常にタイトな進行ではありましたが、このような結果につながってホッとしています」(志賀氏)

当然、次の目標は実用化ということになる。開発陣は2020年までの導入を目指し、さらなる調整に励んでいる。次世代の社会づくりのために縁の下で活躍する技術のひとつとして、ぜひ引き続きご注目いただきたい。

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