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サイバーとフィジカルの融合 技術トップが語る未来像(前編)


既に実現!?両者が融合した製品・サービスとは?

-実際にサイバー技術とフィジカル技術の融合が実現しつつある製品やサービスには、どのようなものがあるのでしょうか?

斉藤 東芝では既に技術的に取り組んでいるものがあります。ひとつは「バーチャル・パワープラント」。これは太陽光や風力などの発電システムや水素エネルギーをはじめ、電気自動車や蓄電池など、分散している電力をIoTで連携させることで、あたかも一つの発電所のように運営していくものです。節電やネガワット取引なども含めてIoTを活用し、AI技術で分析や電力需要予測などを行うことで、各分散電源や需要家側の機器を制御し、最適な電力供給を図る仕組みの構築をお客様と進めています。

最適な電力供給を図る仕組みのイメージ

また、鉄道の分野では、バッテリーと永久磁石を使用した高効率モーターを搭載したハイブリッド機関車を手掛けています。環境性に優れていることが特長ですが、将来的にはネットワークにつなげる運用データを収集・分析することで、最適なメンテナンスの提案や運行計画の最適化にも貢献できるのではと考えています。

他には、ロボット分野でも技術の融合を進めています。具体的には、我々が持つセンシングや制御技術を活用して、物流の自動化を図るロボットを開発しており、稼働状況のデータを収集・分析して複数のロボットを効率的に稼働させる技術を開発中です。

-東芝が手掛けている製品群において、具体的にどういった領域の技術を強化していくのですか?

斉藤 我々はエネルギー、社会インフラ、半導体やストレージなどの分野で様々な部品やシステムを手掛けていますが、今後注力していく分野のひとつが二次電池「SCiB™」です。

この電池は負極材料にチタン酸リチウムという金属酸化物を用いたことで、急速充放電のほか、高い安全性や長寿命を実現しています。2011年より量産・出荷していますが一度も事故を起こしていません。寿命についても2万回の充放電*を行っても電力容量は70%以上を維持しており、車載向けや産業向けに使われています。

この電池について、高容量化と高出力化を図っているところです。高容量化についてはニオブチタン酸化物という新材料に着目し、これを使い現行のSCiB™の1.5倍の電池容量を目指しています。また、電池内部にセパレーターというものがあるのですが、この構造を変えることで出力と容量の両方を向上させることができました。今後、電気自動車ではカーシェアリングの利用が進み、急速な充放電ができる電池が求められてくると考えています。
*試験条件:環境温度25℃、充放電電流 3C(60A)/3C(60A)

 

SCiB™

半導体分野にも引き続き注力していきます。パワーエレクトロニクスと言われる分野で自動車や産業機器、発電システムなどに使われる半導体ですが、数千ボルトの電圧にも耐えられるデバイスの開発をしています。さらに、SiC(シリコンカーバイド)やGaN(ガリウムナイトライド)などの化合物半導体を用いて小型化と高効率化を実現する次世代のデバイスの開発も進めています。車載向けということでは、自動運転社会を見据えて高精度の画像認識プロセッサや距離を計測するセンサーも開発しています。

今、モビリティの分野では「CASE*」というキーワードがありますが、電気自動車の普及は既定路線です。そしてそれがどのように自動運転に結び付くかということを考えたときに、電池や車載半導体など我々が持っているような技術がカギとなってきます。自動車メーカーが電機メーカーの知見に興味を示しているということも、このことを裏付けているでしょう。
*コネクティビティ(接続性)の「C」、オートノマス(自動運転)の「A」、シェアード(共有)の「S」、そしてエレクトリック(電動化)の「E」による造語。

-AI技術についてはどういった方向性で研究開発を進めるのでしょうか?

斉藤 我々はAI技術について、現場の本質的課題を解決するためのものという発想で技術開発をしてきました。古くは1960年代に開発した郵便番号自動読み取り区分機をはじめ、長年の技術の蓄積があります。データがあふれる現場や人が介在する現場でどういうソリューションを提供できるか。そのためのAI技術を追求しています。

例えば、橋梁の劣化具合を分析する技術や高い精度で電力需要を予測する技術、音声認識や音声合成の技術をベースにした対話システムなどがあります。今まで培った現場での知見を生かしながら、共同研究先とも連携して開発を進めています。開発の方向性としては正解が分かっているものについて、いかに効率的に結果を見出すかという「人手をかけるAI」から、人間が事前に教える必要がない「自ら学ぶAI」の開発を進めています。

斉藤史郎氏

 

――サイバーの世界とフィジカルの世界が融合していく新しい時代。研究者や技術者に求められるのは、情報の源となるデバイスやシステムの性能とそこから収集した情報をより精度高く分析し予測するAI技術、これらのレベル向上と開発スピードの加速だ。そのためには、研究開発投資や社内外での共創、新分野の開拓など、従来の考えに変化を加えていくことが必要とされる。次回の後編では、東芝の技術開発におけるマインドチェンジについて迫る。

 

■関連サイト

東芝エネルギーシステムズ(株)
「IoT技術により次世代の電力流通を実現するソリューション」サイト

(株)東芝 ニュースリリース
黒鉛の2倍容量の新酸化物負極を採用した次世代二次電池SCiB™を開発

(株)東芝 「研究開発・技術」サイト

 
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