「照明×カメラ」が生み出す、新たな天井ソリューションとは?

2020/07/29 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 照明器具にカメラを搭載した新コンセプトの商品
  • そこには監視カメラのイメージを払拭する様々な工夫がある
  • 照明が記録する俯瞰画像が、社会課題を解決に導く
「照明×カメラ」が生み出す、新たな天井ソリューションとは?

昨今、安全・安心への備えとして、映像記録のニーズが高まっている。しかしその反面、防犯カメラの類いは生活者にネガティブな印象を与え、それが普及を阻害しているのもまた事実だろう。

 

そこでこのほど東芝ライテック株式会社が開発したのが、照明器具にカメラを組み込んだ新たなコンセプトの商品『ViewLED』である。既存の照明インフラをそのまま活用できる利便性に加え、防犯カメラ特有の物々しさと無縁であることから、心理面の影響を最小限に留められるのが大きな特徴で、将来的には、記録したデータがクラウドと連携することで、社会に新たな価値をもたらす可能性を秘めている製品だ。

 

『ViewLED』開発の背景、そしてこれからの世の中に与える影響について、プロジェクト関係者に話を聞いた――。

 

照明設備の網羅性を生かせる『ViewLED』の強み

「照明器具の分野は長らく省エネ性ばかりが重視されてきましたが、近年のIoT化の流れを受け、新たな付加価値が求められるようになりました。その点、電源ラインと直結していることは照明器具の大きな強みで、これを分配することで各種センサーが搭載しやすい利点があります。そこで着目したのが、カメラ機能です。リサーチしてみると、例えばマンション敷地内の駐車場やゴミ捨て場など、いたずら防止のためにカメラ設置が求められながらも、電源確保やコストの問題がネックになっているケースが散見されることがわかり、これが『ViewLED』の着想に繋がりました」

 

そう語るのは、東芝ライテック株式会社 サイバーフィジカルシステム推進部の井上優氏だ。

 

東芝ライテック株式会社 サイバーフィジカルシステム推進部 部長 井上優氏

東芝ライテック株式会社 サイバーフィジカルシステム推進部 部長 井上優氏

デジタルカメラは最もわかりやすいセンサーの一つ。照明器具単体での機能向上を追求するのではなく、「照明×カメラ」によって新たな価値を生み出すには、うってつけのアイデアだった。こうしてプロジェクトが具体化したのは、2018年9月のことである。

 

しかし、ここでネックになったのが、社内にカメラ開発のノウハウを持っていないことだった。

 

「そこで我々としては自社開発にこだわるよりも、一刻も早く新しい価値を世の中に届けることを優先し、カメラに関して優れた技術を持つ企業とパートナーシップを結ぶ選択をしました。他方、カメラメーカー側では光量不足に頭を悩ませていたということもあり、照明器具とのマッチングは互いに利のある組み合わせだったのです」(井上氏)

 

他業種との共創により、『ViewLED』によって照明インフラをそのままソリューション化することは、これまで照明メーカーに徹してきた東芝ライテックにとって、まったく新しい挑戦であった。

 

威圧感を与えないデザインに高評価

こうして技術面がクリアになった上で、開発陣は次なるハードルに直面する。それは従来の“監視カメラ”が持つネガティブなイメージだ。

 

「新たに監視カメラを取り付けることには、撮影される側としてはやはり抵抗があるもので、監視されている印象を覚える人は少なくありません。しかし、IoTにおけるカメラ機能の目的はあくまで有事の際の映像の記録であり、そこに係る管理側の業務の効率化にこそ価値があります。いわゆる監視カメラとの目的の違いを、いかにして伝えていくかが大きな問題でした」(井上氏)

 

そこで、カメラを照明器具の中に、いかに自然に取り入れるかがポイントとなる。そのために重要なのはデザインだ。

 

「カメラ部分が突出するなど、監視カメラを想起させる形状では意味がありません。画角を邪魔しないよう配慮しながら、カメラ部分をできるだけ自然に筐体内に格納するために、あらかじめ何パターンものデザインスケッチやモックを用意して入念に検討を重ねました。結果的に、東芝ライテックとしてはこれまで無縁であった、iFデザイン賞(注1)やグッドデザイン賞(注2)をいただくことができたのは、非常に嬉しい成果ですね」(井上氏)

 

「ViewLED」はデザイン面でも高い評価を得ている

「ViewLED」はデザイン面でも高い評価を得ている

また、社内外の関係者に対しても、映像を記録することに対するネガティブイメージを払拭するために、実際の記録画像を見せることで理解を求めた。俯瞰画像の利便性を視覚的にアピールし、そこにどのような価値が生まれるかを訴えたのだ。

 

実際、例えば工場や商業施設など多くの人員が働く場では、人の動きを画像から分析することで、作業効率や空間の利用効率、さらには安全性の向上など、様々な点で環境改善に繋げることができる。そうした開発陣の苦労の甲斐あり、やがてカメラ設置に対する反対意見は聞かれなくなったという。

 
注1:iFデザイン賞:「世界三大デザイン賞」の一つで、毎年インダストリー・フォーラム・デザイン・ハノーファー(iF)が主催するもの。
注2:グッドデザイン賞:日本で唯一の総合的デザイン賞で、公益財団法人日本デザイン振興会が主催するもの。

新たな天井ソリューションがもたらす可能性

こうした『ViewLED』開発プロジェクトの舞台裏では、社内の新しい戦力も活躍した。昨年、入社4年目(当時)で同製品のデジタルマーケティングを担当することになった石丸裕佳氏は、次のように振り返る。

 

「『ViewLED』は東芝ライテックにとって、これまでなかった新しいタイプの商品です。そこで製品の認知度を上げるために、今回はオンライン上でのマーケティングが非常に重視されました。もともと営業畑であった私にとっては未知の領域で、ゼロから勉強する必要がありましたが、反響が数値で確認しやすいので、試行錯誤しながら少しずつ成果をあげていくプロセスには大きなやり甲斐を感じています」(石丸氏)

 

東芝ライテック株式会社 法人営業部法人営業第一担当 石丸裕佳氏

東芝ライテック株式会社 法人営業部法人営業第一担当 石丸裕佳氏

営業部時代は製品の省エネ性や演出効果をアピールすることに主軸を置いていたが、カメラと照明がセットになることで、導入の“その先”を提案ができるのは、石丸氏にとって新鮮な体験であったという。

 

そして、製品を知ってもらうことさえできれば、開発陣にとって思いもよらない用途が見つかることもある。

 

「例えば限られたスペースに多くの商品が陳列される売店では、カメラを付けようにもスペースがないという悩みがあることを知りました。これは我々だけの視点では見つけられないニーズの好例でしょう」(井上氏)

 

『ViewLED』が天井ソリューションとして広まれば、さらに予想外のニーズを引き寄せるに違いない。

 

全社アンケートで決定した『ViewLED』という製品名

『ViewLED』という新しいソリューションが生まれる背景では、社内のリソースがフルに活用されていた。東芝ライテックにとっては初物尽くしのプロジェクトであり、社内を積極的に巻き込む必要があったと井上さんは語る。

 

「この『ViewLED』というネーミングにしても、100以上あった候補の中から数案に絞り込み、最終的に全社員へのアンケートによって決定したものです。おかげで新たな製品を会社全体で作り上げていこうというムードが高まりました。東芝グループは照明だけでなく空調やエレベーターなど、多くのビルソリューションを手掛けているのが強みです。その中で『ViewLED』の認知度を上げていくことは、今後の事業戦略にもきっとプラスに働くと思います」(井上氏)

 

そこにあるのは、東芝グループが掲げる「ともに生み出す」という共創の理念。前出の石丸氏も、「知識も人脈もない中でこのプロジェクトに携わることになり、社内外の多くの人に助けられました」と語る。

 

『ViewLED』には、照らす・視る・知るという3つのコンセプトが込められています。つまりは従来カメラが存在しなかった場所に設置されることで、それまで見えなかった価値を知るきっかけとなる製品なのです。私の今後の役割は、この価値をさらに世の中に広めることで、生産性や安全性の向上といった社会課題の解決に貢献することだと思っています」(石丸氏)

 

実際、すでに東芝グループ内では、クラウドサービスとの連携も視野に、次の構想が進められているという。『ViewLED』という新たなインフラが、より暮らしやすい社会を実現する。そうした未来への期待感こそが、プロジェクトチームの大きな原動力となっているのだ。

 

井上氏・石丸氏

 

関連サイト

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特長 | カメラ付きLED照明 ViewLED/クラウドAI画像解析サービス ViewLED Solution | 東芝ライテック(株)

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