急速な都市化が進むインドのインフラを支える、技術と想い

2020/09/09 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • インドの急速な都市化を支える社会インフラの構築に、東芝が貢献
  • 高速かつ安全性と信頼性が高いエレベーターと、その品質向上への継続投資
  • インドと日本の連携による事業の成功と、それを裏づける東芝の価値観
急速な都市化が進むインドのインフラを支える、技術と想い

GDP(国内総生産)が2.9兆米ドルと世界第5位に位置づけているインド。その産業は依然として農業が中心だが、今、工業化が急速に進んでいる。とめどない工業化、近代化、暮らしの劇的な変化を背景に、インドではこれまでにないスピードで都市化が進行しているのだ。国連の最新レポートでは、2050年末までにインドの53%を超える人々が都市部に住むと見込んでいる。

 

1960年代、日本などの国々では都市化を通して、大規模な変化が起こり、持続的な成長が実現した。世界の歴史のなかでも、日本は他に類を見ないほど短期間で都市化と近代化を遂げ、人々が地方から大都市へ、特に東京へと移動した。快適な都市生活の基盤として近代的なインフラの重要性を理解していた日本は、質の高い社会インフラを構築し、他の国々にとって一つの見本になった。

 

1960年代の東京・渋谷の様子

1960年代の東京・渋谷の様子

日本の軌跡を追うように、インドは世界トップクラスのインフラ構築に乗り出しており、今や高層ビル群が空を埋め尽くそうとしている。都市部での高層ビルの急増は、インドを世界第2位のエレベーター市場にし、その規模は目まぐるしい速さで拡大している。

 

これまで日本のインフラの構築に貢献してきた東芝は、現在インドなどの国々に対して、持続可能な都市開発と経済成長に必要な社会インフラの構築に注力している。日本で培った技術力と長年にわたる知見を駆使し、東芝は今、インドが「新しい未来を始動させる」ための後押しをしているのだ

 

インドの都市化における東芝の貢献

東芝エレベータ株式会社は、東芝の技術力を最大限に生かし、高速かつ安全性と信頼性が高いエレベーターをお客様に納入してきた。台湾のTAIPEI 101に設置された同社のエレベーターは、世界最速のエレベーターとして何年にもわたりギネス世界記録を保持した。業界に新たな価値をもたらす取り組みは続いており、最近では乗場行先階登録システム FLOORNAVIがiFデザインアワード2020*で金賞を受賞した。

* 1953年設立の歴史ある独立組織、iFインターナショナルフォーラムデザインが授与

アジアで積極的に事業を展開する東芝は、2011年にインド市場に参入。2012年にはインド最大のエレベーター企業であるジョンソンリフツ社と東芝ジョンソンエレベータ・インド社を設立し、インドのエレベーター市場に参入した。同社は、超高層ビルや高級ビル向けを中心に、「高速」「安全」「快適」な乗り心地を追求した製品を展開しており、高品質な製品を提供すると同時に、インドでの事故ゼロという記録を維持している。これは、すべてのエレベーター設置場所で実施している厳格な「7段階品質チェック」の賜物である。また、サステナビリティは同社の最優先事項の一つであり、そのエレベーターには多くの省エネ機能が標準搭載されている。

 

人材開発が成功のカギ

エレベーターの販売、設置、保守に携わる現場エンジニアの能力や知識をさらに強化するために、東芝ジョンソンエレベータ・インド社は、タミルナド州チェンナイにエレベーターなどの昇降機の据付技術を教育するトレーニングセンターを設立した。この施設には教育機能だけでなく、エレベーターの設置や保守に使用する部品を保管する役目もあり、様々な品質管理機能を備えることで信頼性を担保する施設としても期待されている。

 

エンジニアリングへの継続的な投資をもとに、最先端のソリューションの提供や、人材開発に注力している

エンジニアリングへの継続的な投資をもとに、最先端のソリューションの提供や、人材開発に注力している

「私たちは、このトレーニングセンターでの活動を通じて、安全と品質を最優先に、品質向上の取り組みに継続的に注力し、信頼性の高い製品を市場に提供していきます。そして、このセンターが持つ据付部材の保管機能や組み立て施設を最大限に活用することで、現場作業のさらなる効率化も目指しています」

 

そう語るのは、東芝ジョンソンエレベータ・インド社の社長の佐藤氏だ。

 

東芝ジョンソンエレベータ・インド社 社長 佐藤克彦氏

東芝ジョンソンエレベータ・インド社 社長 佐藤克彦氏

成功へのロードマップを描く

インドでの事業開始から約8年、東芝ジョンソンエレベータ・インド社は累計で3,800台を受注し、直近7年間の前年比CAGR(年平均成長率)は15%を超えている。そして、2025年度までに年間2,000台規模の受注を目指している。

 

「東芝には、お客様に最高の製品やサービスをお届けするために必要なフレームワークがあり、それは製品・システムの開発から製造、設置、調整、保守、サービスに及んでいます。私たちは、東芝グループの理念に基づいて、持続可能な未来に向けて、現代の暮らしや社会を支える環境調和型の製品開発に注力しています。東芝の技術力を最大限に生かし、インドのお客様に一層ご満足いただくとともに、東芝のエレベーターに全幅の信頼を寄せていただけることを目指しています」(佐藤氏)

 

前例のない都市への人口増加は、居住スペースと商業スペースの両方に巨大なエレベーター需要を生み出しており、インドのエレベーター市場は拡大基調にある。市場の成長はさらに続く見通しで、同社はインド特有のニーズに合わせた世界品質の製品を展開することで、この需要増加に応えている。

 

エレベータ

インドでも実践される東芝の価値観

東芝グループ理念体系について、東芝ジョンソンエレベータ・インド社の副社長、ファルハン・ジェイブ氏は次のように語る。

 

「東芝グループの価値観に基づいて活動した結果、当社はインドのエレベーター市場において尊敬され認められるようになりました。私たちはこれまで多くの実績を上げてきましたが、なかでも特に心に残っているのは、ダイヤモンドビジネスでその地位を世界的に確立した都市、スーラト市のダイヤモンド取引所を2019年に受注したことです」

 

東芝ジョンソンエレベータ・インド社 副社長 ファルハン・ジェイブ氏(写真右から3人目)

東芝ジョンソンエレベータ・インド社 副社長 ファルハン・ジェイブ(写真右から3人目)

スーラトダイヤモンド取引所は、インドで2番目のダイヤモンド取り引きの拠点になる見込みで、東芝ジョンソンエレベータ・インド社はこの取引所が実施するプロジェクトにおいて信頼できる会社として選ばれた。このプロジェクトでは、合計128台のエレベーターを受注し、12台のエレベーターを乗場行先階登録システムで群管理する特殊な機能も導入されている。ファルハン氏らは、それまでの経験と知見を総動員して、最高度の専門性を発揮すべく、このプロジェクトに取り組んだ。

 

「通常、典型的な小・中規模のプロジェクトでは、営業担当が最初から最後まで顧客に対応し、その他の職種、例えば設計や物流、現場でのオペレーションなどを担当する者は、プロジェクトが始まった段階で参画します。しかし、このプロジェクトでは、あらゆる部門の担当者を集めた戦略チームを結成するという異なるアプローチを試みることで、顧客の問い合わせに正確かつリアルタイムに対応できる体制を整えました。横断的なアプローチで価値を生み出し、それを競争力ある価格で提供できるようにすることで、前例のない成功への土台ができたのです。それだけにとどまらず、仕様の確認や期日内での確実な納品、競争力のある価格水準に関しても、本社である東芝エレベータ株式会社から多大なサポートがあったのも重要な成功要因です。東芝グループの価値観である「ともに生み出す」を実践していなければ、このアプローチは実現しなかったでしょう」(ファルハン氏)

 

グジャラート州スーラト市のスーラトダイヤモンド取引所(SDB)

グジャラート州スーラト市のスーラトダイヤモンド取引所(SDB)

インドで展開する東芝のビジネス

インドにおける東芝の事業の歴史は60年近くにおよび、今ではエネルギー、社会インフラ、ストレージソリューションといったB2B分野におけるリーディング・カンパニーの一つだ。東芝は「Make in India and Export from India」を掲げ、これらのビジネスにおいて、インドを製造や輸出の拠点としてきた。

 

東芝のインド事業を統括する東芝インド社・社長の岡田氏は、次のように語る。

 

「私たち東芝は、政府がMake in Indiaを提唱するずっと前から、インドを製造かつ輸出の拠点として位置づけています。これまで、『Make in India and Export from India』を掲げて、多くの資本を投下し、人材とスキル開発への投資も行ってきました。これからも、ガンジス川の浄化プロジェクトや若者の能力向上のために職業訓練等を実施する政策である『Skill India』など、政府が実施する社会的プロジェクトに協力し、私たちが事業活動を行っているインド社会に持続的に貢献していきます」

 

東芝インド社 社長 岡田朝彦氏

東芝インド社 社長 岡田朝彦氏

世界が困難に直面している今、東芝はインドでの新型コロナウイルスによる影響を軽減するために不可欠な支援に奮闘する人々の努力に敬意を表し、新型コロナウイルスのパンデミックと闘う施設や州政府の取り組みを支援する目的で、約2,450万ルピー(32万5,795米ドル)を寄付した。そして、東芝にも新型コロナウイルスと闘う人々がいる。それは、この危機的状況下を安易にやり過ごすというのではなく、現場で顧客をサポートすることを選択した、東芝ジョンソンエレベータ・インド社で保守を担当する技術者たちである。

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