仮想発電所(VPP)とはいったいどういうものか?

2020/12/15 info@greentechmedia.com

仮想発電所(VPP)とはいったいどういうものか?

私たちはますますバーチャル化が進む世界に生きている。仮想サーバー上にある仮想現実システムを利用して、仮想の友人たちと仮想会議を行うことができる。そして近年、エネルギー業界で最大の流行語となっているのが、仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant)だ。

 

この言葉が最初に登場したのは、1990年代である。しかし、VPPはこの10年で飛躍的に普及しており、単なるコンセプトにとどまらず、ますます多くのエネルギー企業がVPP関連のビジネスを生み、活用し、商業化している。これから、この仮想エネルギー現象の主役を紹介しよう。

仮想発電所(VPP)について

現代のVPP事業の先駆者的存在であるドイツのNext Kraftwerkeによると、VPPは「風力発電所やソーラーパーク、熱電併給システムなどの分散型の中規模発電ユニットのネットワークであると同時に、電力消費者と貯蔵システムの柔軟性の高いネットワーク」である。実際に、VPPはデマンドレスポンスプログラム内のバッテリーやデバイスといった単一種の資産を組み合わせて、あるいは、異種の資産を組み合わせて複数のユニットを構成することできる。

 

このように構成されたユニットは、「VPPの中央制御室を経由して給電されるが、とはいえ、その運用や所有権は独立したままである」ともNext Kraftwerkeは言う。言い換えれば、VPPと従来の発電所の関係は、インターネットに接続されたたくさんのデスクトップコンピューターとメインフレームコンピューターの関係と同じである。どちらも複雑なコンピューティングタスクを実行できるが、一方は、すでにそこにある分散型ITインフラを利用する。

 

VPPの大きな特徴は、電力需要のピークに対応する柔軟な容量を集約できることである。この点において、VPPは天然ガスを燃料とする発電に匹敵する、あるいはそれらに取って代わることができ、配電網のボトルネックの対処に役立つが、通常は同様の設備投資を必要としない。

VPPとマイクログリッドの違いは何か?

マイクログリッド(およびミニグリッド)も、分散型再生可能エネルギー、貯蔵、柔軟な需要、および化石燃料発電所の複合型である場合が多いが、重要な違いがある。以下に例を挙げる。

 

  • VPPは電力系統に統合される。マイクログリッドはオフグリッド型(電力系統につながっていない独立型の電力システム)であることが多く、(系統連携型である)オングリッド型の場合は、系統がダウンしても独立して稼働を継続できるように散在型に設計される。
  • VPPは、電力系統の任意の部分に接続された資産を利用して組み立てることができるが、マイクログリッドは通常、島や地域といった特定の場所に制限される。
  • VPPとマイクログリッドは、使用する制御・運用システムに違いがある。VPPはアグリゲーションソフトを用いて運営され、従来の発電所の制御室を模した機能を提供する。マイクログリッドは、散在型に必要なハードウェアベースのインバーターやスイッチの増設、現場の電力潮流や電力品質管理に依存する。
  • もう1つの違いは、市場および規制に関わるものである。VPPは卸売市場を対象にしており、通常は特定の規制を必要としない。一方、マイクログリッドは、エンドユーザーへの電力供給に重点を置いている。

VPPとデマンドレスポンスの違いは何か?

こちらは少し複雑で、エネルギー業界のセマンティクス(意味論)に関連している。「デマンドレスポンス(需要応答)」という用語は数十年前から存在しており、電力系統の緊急時に対応するために、工場や商業ビルに手動で電力需要を制御するよう協力を求めるプログラムである。この10年ほどの間に、この業界はより高度化してきたが、自動化された柔軟性の高いプログラムの増加と並行して、依然として手動のプログラムも存在する。

 

もう1つの意味上の違いは、需給曲線のどちら側にあると捉えるか、ということである。日本エネルギー経済研究所が引用した文書によると、デマンドレスポンスは需要側の取り組みであり、VPPは供給側の取り組みである。

 

しかし実際には、これは大きな違いとは言えない。Enel X台湾で運用しているようなVPPは、基本的にはデマンドレスポンスをベースとしており、電力需要がそのVPPの電力の大部分を形成している。

このような理由から、デマンドレスポンスの資産を、VPPに組み込むことができる柔軟性の高いユニットの一種だと考えることが、今日ではおそらく最も容易である。

VPPはどのように収益をあげているのか?

従来の火力発電所は、必要に応じて容量を供給するだけでなく、電圧の安定化から周波数応答まで、系統安定化のためのさまざまな補助的サービスも提供する。VPPはどちらの種類の運用からでも収益をあげられる可能性がある。

 

例えば、容量の面で言えば、VPPは電力系統強化の必要性を回避するためにすでに配備されている。オーストラリアのある事例を挙げると、Evoenergyという公益企業は、VPPを利用することで変電所の更新を回避して、約200万豪ドル(約150万円)の節約に成功した。

 

オレゴン州では、Portland General Electricが4メガワットのVPPを建設している。これは、200メガワットの分散型柔軟性の先駆けとなるものだ。このVPP実験に参加している世帯は、バッテリー購入費用の割り戻しを受けるか、既存のバッテリーの使用料として月20ドルまたは40ドルを受け取る。

 

最後に、VPPがコモディティ化しつつあることを示す兆候としては、カリフォルニア州レッドウッド・シティに拠点を置くAutoGridが、Amazon Web Servicesのマーケットプレイスを通じて自社の管理システムの販売を行っている。コンバインドサイクル式のガスタービンで試してみよう。

VPPの統合に複雑で高級なソフトは必要ないのか?

そのようなソフトは必要である。技術はVPP設計の重要な要素の1つであり、先駆的存在の企業は、バッテリーなどの顧客の設備をベースにした資産の監視・制御を行うために、ソフトウェアプラットフォームの構築が必要な傾向にある。

 

例えば、2016年までに、VPPのコンセプトにすでに取り組んでいたエネルギー貯蔵企業は、ドイツだけでも少なくとも6社あった。

では、どの企業がVPPを作っているのか?

近年、VPPの先駆者のほとんどが争奪戦の末に大規模グループに吸収されており、その結果、VPPが主流になりつつある。以下に例を挙げる。

 

  • 地熱・再生可能エネルギー企業であるOrmat Technologiesは、2017年の初めにViridity Energyを買収した。
  • 同年、Greensmith Energyは、フィンランドの電力大手Wärtsiläに買収された。
  • イタリアのEnelは分散型エネルギー技術に対して短期間に多額の投資をしており、Demand EnergyEnerNOCeMotorWerksを買収して、VPP販売の基盤を築いている。
  • Engieは2018年に英国のKiwi Power、2019年にスイスのTikoの経営権を取得した。
  • Shellは2019年に、オーストラリア、ドイツ、米国VPPの開発を行っているドイツの家庭用バッテリーメーカー、sonnenを買収した。
  • Hanwha Q Cellsは2020年8月、サンフランシスコに拠点を置くVPP技術プロバイダーのGeliを買収した。
  • Generac Power Systemsは2020年10月、Enbala Power Networksを買収した。買収額は明らかにされていない。
  • また同月、世界有数のグリッド規模のエネルギー貯蔵会社、FluenceがAMSを買収した。
  • 昨年、スペイン最大の石油・ガス会社であるRepsolは、金額は不明だが、Ampereに投資した。

 

これらはVPP関連取引の一例に過ぎない。また、買収以外の取引もある。

 

  • バーモント州に拠点を置くGreen Mountain Powerは、ソフトウェア開発会社のVirtual Peakerと提携して、顧客の設備をベースにしたTesla Powerwallのバッテリーをニューイングランドの電力系統に配備する事業を進めている。
  • ドイツのNext Kraftwerkeは、電気自動車用バッテリーの容量でオランダの二次予備力市場に参入しており、スタートアップ企業のTibberもドイツで同様の活動を展開している。
  • 住宅用太陽光発電大手のSunrunは、マサチューセッツ州からカリフォルニア州ハワイ州までの米国市場で、ソーラー・プラス・ストレージ(太陽光発電とエネルギー貯蔵)型VPPを構築している。
  • Teslaは2018年、南オーストラリア州に5万台のソーラー・プラス・ストレージシステムを設置する契約を結び、世界最大のVPP事業者になったほか、世界中で多数のプロジェクトに関わっている。
  • 英国のスマートストレージ事業を手掛けるMoixaは、日本で22,000台のストレージシステムを管理しており、日本以外でも小規模のVPPを展開している。
  • Centricaは、sonnen、ベルギーのソフトウェア会社であるN-Side、Western Power Distribution、National Gridと提携して、イギリス西部のコーンウォールでVPPを構築している。
  • Centricaの出資を受けるGreenCom Networksは、VPPサービスを提供できるソフトウェアを用いて、ドイツで「エネルギーコミュニティ」を構築している。
  • General Electricは、ブロックチェーン技術を使用したVPPの構築調査を行っており、従来の発電所用と並行して、VPP開発用のデジタルシステムを販売している。

 

繰り返しになるが、このリストはすべてを網羅しているものではなく、VPP分野の活発な動きを捉えたものである。エネルギー大手が電力系統に対する将来のニーズを満たすことができる要素の集約を争うなか、この分野ではさらなる買収や統合が予想される。

 

この記事はGreentech Mediaのinfo@greentechmedia.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願い致します。

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