受け入れか死か、欧州企業がインダストリー4.0を受け入れざるを得ない理由とは

2021/01/26 suman

受け入れか死か、欧州企業がインダストリー4.0を受け入れざるを得ない理由とは

2019年10月、あるニュースによって欧州の自動車産業に激震が走った。今後3年以内に欧州を代表する自動車ブランドのうちの一つが廃業に追い込まれるだろうというものだ。フランス、ドイツ、イタリア、イギリスの自動車業界の300人を超えるリーダーを対象に行われた調査の結果、この衝撃的なニュースが発表されるに至ったのである。

 

イノベーションや研究開発にさらに投資をしなればならないというプレッシャーが市場に高まっていると、回答者の3分の2以上がこのProtolabsの調査に回答している。この調査で浮き彫りになったのは、大手自動車メーカーおよびサプライヤーである、BMW、ダイムラー、JLR、マニエッティ・マレリ、フォルクスワーゲン、ウィリアムズF1といった欧州最大手の企業であっても、デジタルプロセスが加速する今日の環境に適応するのに苦労を強いられているのが現状である。

 

デジタルディスラプション(デジタルテクノロジーによる破壊的イノベーション)は自動車製造部門に限らず、あらゆる分野に変化をもたらしている。右肩上がりの成長を続けるテクノロジーによってデジタルトランスフォーメーションが加速している中、業界を問わず世界中の企業が悪戦苦闘している。第4次産業革命はこうしたデジタル時代の中で始まったのである。

 

インダストリー4.0の定義とは?

第4次産業革命(インダストリー4.0)は、「サイバーフィジカルシステム」(CPS)というコンセプトに基づいて製造業のあり方を理論化したものである。CPSは処理能力、通信や制御機能などが強化された機器と高度なコンピューターシステムが相互作用するもので、通常、以下のテクノロジーにより実現される

 

  • 高度な製造ソリューション
  • モノのインターネット(IoT)
  • 付加製造(3Dプリンティング)
  • 仮想現実(VR)、複合・拡張現実(XR: Mixed and Augmented Reality)、シミュレーション
  • ロボット工学
  • 人工知能(AI)
  • ビッグデータとアナリティクス
  • クラウドコンピューティング
  • エッジコンピューティングとスマートセンサー
  • インダストリアルインターネット
  • サイバーセキュリティ
  • ウェアラブルデバイス

 

上記に限らず、インダストリー4.0の破壊的な創造の潜在力は、こうしたテクノロジーなどが組み合わされることで生み出されているのである。

 

図1 – インダストリー4.0の定義と歴史 – 出典: デロイト

 

インダストリー4.0の普及には、ある分野のバリューチェーン全体ビジネスプロセスを持続可能な形で変化させていくような、全体的なアプローチが必要となる。やや大きすぎるとも思える目標だが、物理的なシステムとデジタルシステムの両方を繋げるようなテクノロジーがあれば、この目標は達成可能である。ただし、この新しい産業パラダイムは、テクノロジー、スキル、能力を統合させること、および「スマートファクトリー」の考え方を経営モデルに積極的に取り入れる企業文化により実現するものである。デジタル化とは、バリューチェーンに影響を与えるデジタルトランスフォーメーション全体のことであるが、インダストリー4.0はその中でも工業生産設備に関するデジタルトランスフォーメーションに重点を置いていることに注意してほしい。

 

デジタル時代の変化の実例

エネルギー産業を例に挙げる。自動車製造部門と同様に、エネルギー産業は昨今のデジタルによる破壊的な創造において、将来の競争力やつながりを維持するためには新しいパラダイムに適応しなければならない。エネルギー企業、技術革新の実現において戦略的に大きな役割を果たしているが、昨今の激しい変化に直面して、もはや今まで通りに事業を展開することができなくなっている。流動的で不安定な市場において、エネルギー企業が、今ある資源を有効活用して生産性を維持向上させるためには、俊敏さと適応能力の両方を身につけなくてはならなくなっている。

 

同分野の大手企業には、インダストリー4.0の重要性を早くから理解し、はるかに進んだ導入実績を誇る企業がある。例えば、ADNOC(アブダビ国営石油会社)は2019から、「Oil & Gas 4.0」という独自のデジタルトランスフォーメーション戦略に着手している。この戦略における4つの主要な柱は以下の通りである。

 

  • テクノロジーを組み込む – 業務におけるあらゆる部分にテクノロジーを組み込むことで、新しい時代のエネルギー需要を満たす
  • 人材の強化 – 新しく輝かしい心構えを持つ人材、イノベーションを活用できる人材を育成する
  • パートナーシップの育成 – 世界中のエネルギー産業企業と連携するだけでなく、エネルギー産業以外の企業との連携を拡大する
  • 環境リーダーシップ – テクノロジーを利用してエネルギー産業をより持続可能な分野へと成長させる

 

第4次産業革命の価値

先にも説明したが、デジタルが変革の基盤となることで、欧州のエネルギー産業は新しい価値を存分に解き放つことができる。図2は、エネルギー分野単体において、第4次産業革命がどれ程の価値をもたらしているかを表している。

 

 

図2 – インダストリー4.0の価値 – Giuliano Liguori

 

第4次産業革命により、企業はパラダイムシフトの受け入れを余儀なくされている。企業が変革しなければならないことは、ビジネスモデルだけでなく、運用方法、エネルギー供給エコシステムとの連携、エンドユーザーとの向き合い方など、多岐にわたる。

 

19年10月に発表されたニュースに欧州の自動車メーカーは戦々恐々としていることだろう。しかし、エネルギー産業の例からもわかる通り、業界がデジタルによる破壊的な創造を積極的に受け入れ、従来浸かってきたぬるま湯から抜け出し、大胆な変化、発展を遂げるチャンスが目の前にある、ともいえるのである。

 

この記事はNew Europeのsumanが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願い致します。

 

※本記事は2019年10月3日に公開された記事を転載しています。

※本記事の文中リンクは英語のページに遷移します。

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