洋上風力発電の先進国イギリスに見る、グリーンエネルギーで動く世界

2021/02/05 The Guardian

洋上風力発電の先進国イギリスに見る、グリーンエネルギーで動く世界

イギリスのヨークシャー海岸沖で、174基の風力タービンが風を受けて回転し、100万世帯以上分に相当する電力を供給している。2020年に本格稼働となったこのHornsea Oneプロジェクトは、世界最大規模の洋上風力発電システムだ。また、アイリッシュ海の沖合では87基の風力タービンを設置したWalney Extensionが稼働中である。どちらもイギリスでこの5年間に建設された数少ない発電所規模の洋上風力発電であり、再生可能エネルギーへの移行に拍車をかけている。

イギリスでは洋上風力発電が拡大しており、その発電出力は今や11GWに届く勢いで、世界一の規模を誇り、化石燃料からの脱却を目指す世界の先駆けとなっている。ほんの10年前までイギリスの電力の40%近くが石炭による火力発電に頼っていたのだから、現在の洋上風力発電の拡大は注目に値する。2019年には、石炭による火力発電量は約2%にまで激減しており、政府は石炭への依存を段階的に廃止し、2024年までにゼロにすることを目指している。今日、イギリスの電力の44%が再生可能エネルギーからの供給によるもので、これは2050年までに二酸化炭素のネットゼロ排出、2030年までに洋上風力発電出力40GWというイギリスの長期目標の達成を見込める数字となっている。

イギリスを洋上風力発電のトップに押し上げた要因は様々であるが、特にここ数年の成果は目覚ましい。「洋上風力産業セクター契約がイギリス政府との合意に至り、政府と企業の間でより緊密な連携が実現しています。また、洋上風力発電に対する規制がさらに整備され、開発者やサプライチェーン企業、金融セクターが積極的に投資に乗り出しています。投資が活発化することでイノベーションがさらに促進されると同時に、競争性が生まれることでこれまでにないペースで価格が引き下げられています。」こう説明するのは、Hornsea One洋上ウィンドファームの開発、運営を手掛ける再生可能エネルギー会社Ørstedの、イギリス地区担当責任者であるDuncan Clark氏だ。

世界規模でのエネルギー移行を加速するためには洋上風力発電の成長が不可欠であり、エネルギー専門家の多くが大規模な電化のために必要であることを認めている。海上に建設された洋上ウィンドファームは、貴重な陸地を占有することなく、実用可能な規模でグリーン電力を安定提供できることから、この移行はますます推進されている。Ocean Renewables Energy Action Coalition(海洋再生可能エネルギー連合)による最新の提言では、2050年までに1,400GWの洋上風力発電が可能であるとのこと。これは、世界の電力需要における10分の1の電力を供給できるに相当し、実現すれば毎年30億メートルトン以上のCO2が削減できることになる。

グリーン電力の中核

「経済全体を見据えたネットゼロへの一連の取り組みを考える上で、そのすべての中核を担うのが電力セクター、つまりゼロカーボン電力です。」と語るのは、コロンビア大学グローバルエネルギー政策センターの上級研究員であるMelissa Lott氏だ。Lott氏は自らの研究で脱炭素に向けた技術的な取り組みをモデル化した上で、次のように述べている。「私たちはますます多くの電力を必要としている、という重要なメッセージは痛感しています。」そのため化石燃料の燃焼に依存している技術を徐々に減らしていくことこそ、私たちが目指すべき方向なのである。

再生可能エネルギーのコストもこの10年間で低下している。BloombergNEFによると、今日では世界の3分の2以上の国で、化石燃料エネルギーによる電力よりも、風力エネルギーや太陽光エネルギーによる電力の方が低価格であるという。洋上風力発電の電力コストは2012年と比較して66%以上下がっており、北西ヨーロッパでは新たに化石燃料発電所を建設するよりも洋上ウィンドファームの建設コストの方が低いのだ。

しかしコストが下がっているにもかかわらず、世界規模でのグリーンエネルギー移行の実現にはまだ長い道のりが待っている。国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)による2020年分析では、再生可能エネルギーから供給されている電力は世界ではわずか28%に留まり、石炭やガスによる電力供給が依然60%を占めている。住みよい未来を築くためには、ガスや石油の生産を早急に削減・廃止し、再生可能エネルギーをニューエコノミーの基盤としていくべきである。

洋上風力発電の効率的な導入

コストを下げる以上に必要なことは、洋上風力発電の申請許可や立地決定をスピードアップするなど、再生可能エネルギーの迅速な導入を奨励することである。これについてはイギリス独自の成功事例が参考になる。

発電所規模の再生可能エネルギーに向けた土地の利用許可およびリース契約についてLott氏はこう説明する。「環境保護と施設設計のプロセスを合理化して、洋上風力発電のために大きな面積の土地をリースできるようにするというこのアイデアは、様々地域で目にすることができます。こうしたリースプロセスに関して、イギリスは他国の何歩も先を行っています」

さらに大規模な洋上風力プロジェクトが現在進行中で、これが実用化すれば洋上風力発電出力40GWというイギリスの目標が達成されると考えられる。「Hornsea Twoにおける洋上施設の建設が始まり、このプロジェクトだけでもさらに1.4GWの電力が新たに出力されることになります。また、Hornsea Three、Hornsea Fourの計画、開発が進行中で、洋上風力発電による電力供給は今後ますます大きくなるでしょう。」と語るのは、Clark氏だ。

さらに「近年、洋上ウィンドファームの規模は大幅に拡大しており、新世代のプロジェクト具体化しつつあります」と彼は語る。

また、洋上プロジェクトは環境基準により厳密に精査され、海洋生態系を理解した上で設計されなければならない。「海底の状態、水深、海底の動き、波のパターンを知る必要があります。」Ørstedの洋上風力発電の研究開発責任者であるChristina Aabo氏はこのように述べ、この調査プロセスには数年かかることもあるという。

Aabo氏の想定では、将来的に大規模な洋上風力発電ハブが実現し、相互接続され、網のように張り巡らされたネットワークを介してエネルギーを伝達できるようになるという。「これはまさに、複雑かつインテリジェントな風力発電構造といえるでしょう。1つの国に限らず複数の国での相互接続も実現するのです。」とAabo氏。この極めてダイナミックな構造により、大量のエネルギーを確実に伝達できるようになるのだ。

あらゆるものを電力化する

再生可能エネルギー拡大の影響は、電力の脱炭素化だけに留まるものではない。再生可能エネルギーが豊富になるにつれて、脱炭素化の動きが他の経済分野に波及することにもつながる。

例えば、環境配慮型のビルの分野では、ガスから電気による熱源に移行しながら、エネルギー効率の高い建物へ改築する需要も生まれる。「熱源の電力化は、実に大きなチャンスです」と述べるのは、脱炭素研究の科学者であり、「アメリカでのゼロカーボン実現に向けて(Mobilizing for a Zero Carbon America)」レポートの著者であるSam Calisch氏だ。同氏が特に強調するのは、ヒートポンプがいかに熱源設備の電化に貢献し、エネルギー消費量を減らしているか、ということである。

また、別の可能性として、公共交通機関の電力化と拡大に加え、内燃機関エンジン搭載の車から電気自動車へ移行することが考えられる。内燃機関エンジン搭載の車と比べて、電気自動車はマイルあたりのエネルギーコストが低く、最終的なコスト削減につながることから電気自動車の採用を奨励し「(電気自動車を)走らせることで長期的な節約を実現する」ような、電動車両への移行を実現させる政策が必要である、とCalisch氏は説明する。「この考え方は非常に重要です。なぜなら、自動車はこれまでもこれからも、道路輸送の主役であり続けるからです」

再生可能エネルギーへの変換がより困難な、トラック、電車、船、飛行機といった大型車両向けには、別の方法を考える必要がある。例えば、電気自動車とは異なり、飛行機の長距離フライトにバッテリーを実装することは現実的ではない。その代替案としてCalisch氏は、飛行機に電力を供給する水素燃料やバイオ燃料の利用が積極的に検討されていることを指摘している。同氏は、水素が化石燃料ではなく再生可能資源に由来するものであることが重要であるとも言う。

いささか技術的な疑問が残るものの、これが大規模な再生可能エネルギーの前進を遅らせる理由にはならないはずだとCalisch氏は述べている。「大型車両での輸送が排出量削減への大きな障害になり始める前に代替案を導入すべきですが、その導入までには長い道のりが待っています。」とCalisch氏。だがこうした技術を導入するまでに、現場での大規模な試験を経て技術的な課題をクリアするような新たな案が生まれている可能性は高いとは説明する。

結局のところ、かつては実現不可能と思われていた気候変動危機に対する解決策が多く生み出され、今や世界に活力を与え始めている。洋上風力発電は夢物語だと考えられていたのはそれほど昔のことではない。「20年前、風力発電の仕事をしているといったとしたら、多くの人々が首を横に振ったことでしょう。」とAabo氏はいう。イギリスの実例からわかる通り、現在は政府が大胆な目標設定を行い、明確な政策を制定することにより、風力発電などのグリーンエネルギーが発展し、低炭素の未来が形作られていくのである。

この記事はThe Guardianが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願い致します。

※本記事の文中リンクは英語のページに遷移します。

関連サイト

※ 関連サイトには、(株)東芝以外の企業・団体が運営するウェブサイトへのリンクが含まれています。

風のエネルギーを利用する風力発電:製品・技術サービス:再生可能エネルギー | 東芝エネルギーシステムズ株式会社

Related Contents