気候変動緩和目標は包括的な解決策へ向かう

2021/02/17 wbcsd

気候変動緩和目標は包括的な解決策へ向かう

2015年のパリ協定調印以降、われわれは長い道のりを歩んできた。

 

しかし、その一方で以下の点においてはなすべき進捗を達成していない。

  • 世界のCO  排出量は増加の一途をたどっている。
  • パリで示された政府間の結束は、調印後、試練にさらされて分断状態にある。

 

だがその一方で、大きく進捗を遂げたものもある。

  • CO 排出量を半減させる「1.5度目標」が、2018年に発表の国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の報告書以降の基準となった
  • 多くの企業が、2050年までの達成を目指したネットゼロ目標を設定した
  • 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言がなされた

 

持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD:World Business Council for Sustainable Development)が、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21、いわゆる「パリ会議」)に向けて低炭素技術パートナーシップイニシアティブ(LCTPi:Low-Carbon Technology Partnership Initiative)と呼ばれる活動をリードしていた2015年当時のことを、私は覚えている。最終的に235社を超える企業と50以上のパートナーが一堂に会して、CO排出量削減に向けた9つの大規模なビジネスソリューションに取り組み、政策決定者たちに大胆な行動を求めた。COP21ではビジネス界が存在感を示し、「われわれには解決策がある。明確な政策方針、できれば炭素価格を提示してもらえれば、われわれは取り組みを加速させる」と述べた。

 

パリ協定では、より明確になった科学的根拠と高まる自然災害の影響を元に、ビジネス界が必要とし求めた明確なメッセージや方向性が提示された。多くの企業は現在、ネットゼロへの過程でもたらされる変革に向けて自社戦略の調整を行っている。

 

また、新型コロナウイルスの世界的大流行から、地球規模の出来事によって引き起こされ得る衝撃への備えが、総じて不十分であったということが明らかになった。そして、気候変動の影響はさらに大きくなる可能性があることは、誰しもが理解している。新型コロナウイルスのパンデミックが引き起こした混乱にもかかわらず、エネルギーや食品産業、はたまた、自動車やハイテク産業まで、非常に多くの企業が壮大な目標を掲げている。新型コロナウイルスは手荒い方法で、すべての要素は相互に関連しているということもわれわれに教えてくれた。つまり、気候、自然、健康、社会的公平性を考慮した包括的な方法で解決策とその実施策を考え抜き、真のシステム転換を達成する以外に選択の余地はないのだ。

 

パリ会議後に複数回開催された締約国会議(COP)では大きな進展はなかったが、近年になってカナダ、中国、日本、韓国、そしてもちろん欧州グリーンディールなど、各国政府の取り組みが本格化している。事態の展開次第では、米国が再び先頭に立つことへの期待感も高まっている。

 

次なるステップ- COP26への道のり

気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)を次なる重要な節目の一つとして、すべての公約や目標を実現するには、以下の2つが必須である。

  1. 企業は、今後10年以内にCO 排出量半減を達成するために必要な解決策の実行に向け、事業計画を作成すべきである。そのためには、企業内でのCEOのリーダーシップだけでなく、産業部門内やバリューチェーン全体の協力が必要である。
  2. 企業は、自社の目標や計画を包み隠さず開示し、その実現に向けた進捗状況を報告する必要がある。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言やESG(環境・社会・企業統治)の動向は、そうした目標や計画の実施において重要になる。

 

COP26民間金融戦略(COP26 Private Finance Strategy)は、財務上のあらゆる意思決定において必ず気候変動を考慮に入れるために、TCFDが果たせる役割について説明している。COP26担当英国首相財務顧問で、国連気候アクションファイナンス特使を務めるMark Carney氏は、10月に開催されたTCFDサミットで「あなた方が気候変動リスクとともに、気候変動によるチャンスという非常に重要なことを考慮できるように、私たちは、情報発信に取り組んでいます」とコメントしている。

 

TCFDの同サミットで私が強調したように、「我々は、より多くの環境配慮型の企業が資本コストの削減などで優遇される資本市場を作り、その結果として、目の前の重要なシステム移行に、より多くの金融資本が配分されるようにしなければならない」

 

気候変動緩和目標のさらに先へ – 率先して行動するためのWBCSDの支援

こうした取り組みはすべて、われわれがCOP26までに実現できると考える大掛かりな目標にとって幸先が良いものであるが、今世界で達成しているCO 排出削減量ではまったくもって不十分なため、CO 削減量を倍増する必要がある。われわれは変革と目標設定についてこれまで論じてきたが、今までの野心的な目標をさらに超えて、今後10年以内にネットゼロを現実のものにする時が来ている。

 

ビジネスの場でネットゼロを検討する際の大きな疑問は、ビジネス界が実行できる根本的な変化とは何かということだ。今われわれがCOP26の議題を決めるなら、11月に開催されるCOP26に、ビジネス界からどのような解決策を提示できるだろうか?これこそが2015年にパリで開催されたCOP21と、次回のCOP26との違いである。つまり、われわれは世界的な合意の採択を目標としているのではなく、COP26は「具体的な実行」を検討する会議である。

 

これを受けて、われわれは現在、WBCSDのすべてのプログラムをネットゼロおよび1.5度目標に見合うように調整している。2020年4月、われわれは気候変動対策に関するWBCSDのすべての活動に対する、一貫性のある横断的な枠組みとして、LCTPiに代わるSOS 1.5を立ち上げた。SOS 1.5は、各企業がネットゼロを目指す自社の取り組みを加速させるためのガイダンスを策定するとともに、産業部門やバリューチェーンで必要とされる集団的行動を促進するための取り組みを展開している。WBCSDが改定した会員基準には、1.5度目標が盛り込まれている。私の知る限り、2050年までにネットゼロを達成することを企業向けの会員基準に盛り込んだのは、WBCSDが世界初の経済団体である。

 

また、新たな活動要素も追加している。例えば、農業1.5や、自然に根差した解決策へのリンクなどであり、こうした活動要素については、WBCSDは先日、新しい報告書『Mapping nature-based solutions and natural climate solutions(自然に基づく解決策と自然気候解決策のマッピング)』を発表したばかりである。この報告書は気候と自然の両方にとってプラスとなる
企業が、一貫性と信頼性の高い行動を加速させるのに役立つ。自然に根差した解決策は、パリ協定の達成のための最大37%の解決策の提供に役立ち、ビジネス界にも人にもメリットをもたらしながら、自然喪失という難題の解決を支援する可能性がある。気候変動と自然が、COP26での2つの重要分野であることからも明らかなように、COP26の指導者たちがこのことを認識していることは、大変喜ばしいことである。

 

結論として、これは気候についてだけではなく、体系的な変革についてのことであり、ビジネス界に関することだけではない。ビジネス界には果たすべき大きな役割や強い発言力があり、われわれはそれらを利用すべきだと考える。しかし、われわれは各国政府や投資家コミュニティ、さらには市民社会と新たな協力関係を築くためにもCOP26を活用すべきである。なぜなら、協力し合って初めて具体的な規模で実施できるからである。

 

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