ロックダウン下でも貨物輸送を止めるな -東芝グループの南アフリカでの貢献

2021/03/05 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 南アフリカの経済基盤に貢献する、鉄道システム
  • 技師がともに生み出す、機関車の保守、安定運行
  • ロックダウン下での継続支援、変わらない社会貢献
ロックダウン下でも貨物輸送を止めるな -東芝グループの南アフリカでの貢献

南アフリカ経済にとって重要な鉄道システム

鉄鉱石や石炭といった天然資源の輸出を主要産業とする国々では、資源の安定輸送の確保は、経済基盤の維持と、次世代への投資の可能性を広げるための重要な要素である。南アフリカにおいて、長距離にわたって内陸部と沿岸部をつなぐ鉄道システムは、最重要の輸送インフラとして長い歴史を持つ。この鉄道システムは、南アフリカにとって様々な戦略的役割を担っており、その一つが鉄鉱石や石炭といった重要な輸出品の輸送なのだ。

 

1985年、東芝は南アフリカの国立鉄道会社トランスネットに重量物運搬機関車(10E、10E2)を供給。それら機関車は、今も現役で稼働を続けている。また、その後に納めた2種の機関車も運行しており、その一つのトランスネット貨物電気機関車15Eは、ケープタウンの北側に位置する鉱山の街シシェンから西側のサルダナ港までの861kmもの「鉄鉱石線」を結び、年間約6,000万トンにもおよぶ鉄鉱石の輸送に力を発揮している。そして、もう一つのモデル19Eは、南アフリカ東部にあるムプマランガ州のエルメロから東海岸のクワズール・ナタール州リチャーズベイにある輸出港まで石炭輸送に従事している。15Eと19E、いずれも南アフリカで製造されたモデルだ。

 

15Eは、ユニークな50kV交流電源に対応する貨物電気機関車である。これは、鉄鋼石線のような超重量物を長距離運搬するための最適な設計となっている。貨車300両以上、全長約4kmに及ぶ列車の動力源として、15E機関車は貨物車両の間に複数連結されているが、これら複数の15Eは、1人の運転者が列車制御・監視システムにより操作することができる。この仕組みによって、列車は急峻な上り坂でも円滑に移動できるのだ。また、架線の無い鉱山で鉄鉱石を積載するときに必要となるディーゼル機関車が連結されているが、このディーゼル機関車も15E機関車から制御され、貨車が満載の時は15E機関車と連動して働き、貨車が空の時にはアイドリング状態となって15E機関車のみで運転されることで、環境に優しく経済的な制御を可能にしている。

 

一方19Eは、2種類の電源に対応可能な機関車のため、電圧を自動判別しながら、機関車を変更することなく交流・直流の境界となるエルメロ地域を通過することができるという特長を持つ。さらに、19Eには、25kV交流の回生ブレーキ技術が採用されている。こうした環境に優しいシステムの採用は、南アフリカの電気機関車では初の試みとなる。

シシェン-サルダナを結ぶ鉄鋼石線の空中写真 (アブリ・レ・ルー氏撮影)

シシェン-サルダナを結ぶ鉄鋼石線の空中写真
(アブリ・レ・ルー氏撮影)

技術の向上、そして研修を通じた伝達

東芝テクニカルサービスインターナショナル社の南アフリカ支社は、エルメロとリチャーズベイに拠点を置く。両拠点で保守を手掛ける技術チームは、「仕事への真剣な思い」と「顧客への献身」という言葉が、自らの業務を語るうえでのキーワードになっていると語る。どちらの拠点の技師も、顧客であるトランスネットに専門的なアドバイスを定期的に行い、常にオープンなコミュニケーションを意識することで高い価値を提供しているのだ。

 

もちろん、機関車を整備することは、顧客に貢献する一つの方法であるだろう。だが、もう一つの顧客支援として東芝は、機関車の効率的な保守を目的としたトランスネットの技師への研修を行っている。これによってトランスネットは、自ら機関車を良好に維持する技術を向上させることができる。東芝は、トランスネットの技師に対して、機関車の様々な構成部品についての研修プログラムを提供し、故障箇所を特定するための調査の方法や、回路図の読み方などの研修を行っている。長距離運搬用に製造された機関車を使用するには、当然ながら信頼性が極めて重要であり、技師は機械の修理や保守を効率的に行う方法を理解しておくことが求められる。

 

このように機関車の信頼性は非常に重要であるため、定期的な保守が欠かせない。また、整備後の東芝の役割の一つとして重要なことは、出発した機関車が安定して走行し続けることの確保である。そのために、機関車の保守状況についての報告書を作成し、確認された不具合の対応に立ち会っている。

 

技師が大切にする価値観

エルメロとリチャーズベイの技術チームに対して、東芝グループとして大切にしている価値観のうち最も意識しているものについて尋ねると、彼らは様々な背景を持っているにもかかわらず、口をそろえて「ともに生み出す」ことだ、と答える。だから、トランスネットと連携して技術的な課題を解決し、解決策を立てることが鍵となるのだ。また、課題の解決にあたって支援が必要な場合は、日本の技術部門と連携している。これらの活動一つひとつが、東芝の価値観である「ともに生み出す」ことに他ならないのだ。

東芝グループ理念体系

「ともに生み出す」ために、トランスネットとのオープンなコミュニケーションは、お互いを一つのチームとして認め合うこと、より優れた仕事をすることにつながっている。こうした良好なチームワークにより、東芝の技術チームはトランスネットに対し、最善の解決策と今後の方針を打ち出すことができる。多くのシステムから構成される機関車において、システム全体や構成要素を改良するために、この信頼関係の上に、新しい検査法などが継続的に開発されていくのである。

 

リチャーズベイの技師は言う。「お客様には、私たちの仕事への真剣な思いを評価していただいております。その結果として、東芝に機関車の保守お任せいただいているのです」 また、2013年に19Eを納品して以来、トランスネットを支援し続けてこられたのは、「東芝のサービスの価値をご理解いただいているからです」とも語る。

 

エルメロの技師たちは、日々問題を見極め持続的な解決策を提案するなど、顧客のニーズに応えるために意識していることについて次のように語っている。「私たちは、常に誠実に行動し、問題を解決できるようにお客様と開かれた関係を築こうとしています」

 

トランスネットの技師も同じように感じており、東芝のサービスに満足している。「19Eは当初、設計で気になる点があったが、東芝がきちんと責任を持って対応してくれたのを大変嬉しく思っています。東芝は、私たちの戦略的なパートナーとして、トランスネットの技師と変わらず課題に取り組んでくれています」と、同社広報部長のゾドワ・マニシ氏は強調している。

「ともに生み出す」の価値観のもと、東芝の技師は、オープンなコミュニケーションを大切にする

「ともに生み出す」の価値観のもと、東芝の技師は、オープンなコミュニケーションを大切にする

東芝の強み

南アフリカの技術チームは、日々、日本の本社と連携することで膨大な知識と豊富な経験を蓄積している。そして、東芝の機器は、設計・製図から最終製品に至るまで、最先端かつ高い信頼性を確保している。このことは、信頼性の評価が高いことと故障検出が低いことの裏付けとなっている。

 

南アフリカと日本には7時間の差があるが、お互いの反応がとても早いので、本社との連携で特に困ることはないという。さらに、技術チームの活動の一環として、週1回の会議が設けられており、オープンなコミュニケーションが確保されている。このような中で、日本のエンジニアは、様々なタイプの機関車についての膨大な知識をもとに、積極的に現地を支援しているのだ。

 

また、リチャーズベイの現場には日本人のエンジニアが常駐しており、チームに助言を出したり、必要に応じて現場作業を支援したりと、常に連携を大切にしている。現地の技師は、日本人エンジニアの豊富な知識に刺激を受け、日々新しいことを学べることを喜んでいるのだという。

 

膨大な知識をもって、学ばんとする意欲に応える

膨大な知識をもって、学ばんとする意欲に応える

新型コロナウイルス感染症の蔓延は、どの産業においても働き方の変革を迫ることとなった。東芝の技術チームも、この状況に適応しなければならなかった。しかし、レベル5のロックダウンの中でも機関車を走らせなければならない。そこで、東芝の技師は自宅からトランスネットへの支援を継続した。そして、多くの産業や経済にロックダウンが波及している中でも、機関車の保守に責任を持ち続けた東芝の技師たちは、厳重なロックダウン環境下においても”Essential Worker”として早い段階で現場に戻るため、正しいマスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保といった、政府が定める新たな安全基準に準拠しながら現場での執務に復帰したのだ。

 

人と、地球の、明日のために。

このように、東芝は、世界の人々の生活の質を維持し、向上することに取り組んでいる。南アフリカでは、トランスネットと東芝で技師どうしが効果的に連携し、トップクラスの研修や技術支援を行うことで、技師としての能力の向上や、最終的には社会全体へと貢献している。この取り組みを通じて、年々機関車の稼働率があがり、反対に報告される故障の件数は減少している。

 

東芝アフリカを代表する島田氏は、次のように言う。「南アフリカと日本で、東芝の技師が密接に連携し、顧客に機関車の保守に満足いただけるよう努めていることを、本当に嬉しく思います。環境負荷への対応、安全性、時間の正確性、快適性、そして信頼性といった、鉄道輸送に求められることを満たすよう、引き続き努力していきます」

東芝アフリカ 社長 島田厳介氏

東芝アフリカ 社長 島田厳介氏

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