街中の風景をアップデートする! 「透明フィルムLED」が持つ可能性とは

2019/12/25 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 透明で自由に曲げられるフィルム状のLEDデバイスが開発された
  • そのベースにあるのは北海道・旭川に拠点を置く東芝ホクト電子の技術
  • 若手とベテランの共創で生み出された新たな電飾モジュールの可能性
街中の風景をアップデートする! 「透明フィルムLED」が持つ可能性とは

技術の発展と共に街の風景も変化する。近年ではデジタルサイネージの台頭により、街中の広告表現が一変したことにそれは顕著だろう。

 

一方、イルミネーションの季節には、省エネ性と高輝度を併せ持つLEDが風景を彩るのももはや当たり前。そのLEDデバイスもまた、時代と共に着実に進化を遂げている。

 

そこで今回注目したのが、東芝ホクト電子株式会社が開発した「透明フィルムLED」だ。その名の通り、一見透明なフィルムでありながら、高輝度のLED発光装置として機能するこのモジュールは、イルミネーションやディスプレイへの応用でデザインに革新をもたらすことが期待される。

透明で自在に曲げられ両面が光る、新感覚のLEDモジュール

「透明フィルムLEDとは、透明なプラスチックフィルム上に微細配線電極を形成し、LEDのチップを配置して接着することで80%超という高い透過率を実現したLEDモジュールです。LED消灯時は配線電極とLEDチップが目立たないため透明に見え、LED点灯時は他のLEDモジュールよりも高輝度と省エネ性を併せ持ちます。自由に曲げられるフィルムの柔軟性を生かせば、立体的な光を演出できるのも特長です」

 

そう語るのは、東芝ホクト電子株式会社曽我部氏だ。

東芝ホクト電子株式会社 透明フィルムLED事業推進部 グループ長 曽我部寿氏

東芝ホクト電子株式会社 透明フィルムLED事業推進部 グループ長 曽我部寿氏

透明なフィルムであることから、窓ガラスや壁などの平面の電飾はもちろん、曲面への実装が容易。すでに今年からサンプルの展開をスタートしており、様々な案内板や誘導灯、ショーウィンドウなどへの活用が期待されている。

東芝ホクト電子株式会社 透明フィルムLED事業推進部 松下孝一氏

東芝ホクト電子株式会社 透明フィルムLED事業推進部 松下孝一氏

「筒状に丸めるなど立体的な表現を可能としているので、これまでになかった電飾が設定できるでしょう。LEDを消灯すればただの透明なフィルムに戻ります。つまり、日中の街の風景や屋内の景観を邪魔することもないわけです」(同・松下氏)

柔軟なプラスチックフィルムに配線しLEDを配置しているため、フィルムを曲げれば立体的な光の表現ができる

柔軟なプラスチックフィルムに配線しLEDを配置しているため、フィルムを曲げれば立体的な光の表現ができる

たとえばショーケースへの活用なら、普段は集客のためきらびやかな装飾やメッセージサインを施しながら、中の商品を見せる際にはLEDを消して透明化することができるので、目的に合わせたフレキシブルな演出が行えるという。

LED消灯時は透明なため、何も無い状態から徐々にメッセージを表示することもできる (左からLED消灯時→LED点灯時)

LED消灯時は透明なため、何も無い状態から徐々にメッセージを表示することもできる (左からLED消灯時→LED点灯時)

透明フィルムLEDの特長

透明フィルムLEDの特長

旭川に根差す東芝ホクト電子のポテンシャル

透明フィルムLEDを開発した東芝ホクト電子は、北海道・旭川市に拠点を置き、日本最北に位置する東芝グループの電子部品メーカーである。
旭川といえば背景に大雪山系の連峰を構える、北海道の代表的都市としてよく知られている。およそ130の河川が流れる風光明媚なこの環境に東芝ホクト電子が誕生したのは、1950年のこと。東芝の旭川工場として創業し、一般照明用電球を製造していたのがその前身だ。

 

東京から飛行機で約90分という地の利の良さと、地震や風水害などの災害が少ないこと、さらに1年を通して湿度が低いことなど、精密機器の製造開発に適した環境を持ち合わせている。

 

「東芝ホクト電子は、バーコードラベルの印刷やCT画像などの医療用印刷装置に使われるサーマルプリントヘッド(※1)、電子レンジなどに使われるマグネトロン(※2)、航空機用カラーディスプレイ管やフレキシブルプリント配線板の製造事業が主力。これらをベースに近年は新規事業も推進しており、その一つが透明フィルムLEDです。中でもサーマルプリントヘッドとフレキシブルプリント配線板の技術が透明フィルムLEDの開発に生かされています」(曽我部氏)

※1:サーマルプリントヘッド:熱を使って印刷する感熱式プリンターの中で、印刷を行う際に、紙などの媒体に熱を加える部品。
※2:マグネトロン:直流電力をマイクロ波に変換する真空管の一種。

フレキシブルプリント配線板とは、車載機器や医療装置など多くの機器で用いられる薄くて柔軟性がある回路を構成する部品のことで、東芝ホクト電子では設計から生産までを一手に請け負っている。

 

「透明フィルムLEDは電気をLEDに供給するため、透明フィルムにフレキシブルプリント配線板を接続しています。これには、『異方性導電フィルム』と呼ばれる微細な金属粒子を混ぜ合わせた導電性のプラスチックフィルムを用いたものです。高温で接続する一般的なハンダ実装ではないので、LEDの特性変動や信頼性低下の心配がありません」(松下氏)

 

「異方性導電フィルム接続技術は液晶パネルやサーマルプリントヘッドでも応用されていますが、共にフレキシブルプリント配線版をガラス基板やガラエポ基板といった固い基板に接続するものです。透明フィルムLEDでは、柔らかいプラスチックフィルムに接続する必要があるため、接続品質を保つ製造プロセスの開発には苦労しました。これには、若手のアイデアと努力が詰め込まれています」(曽我部氏)

若い人材の視点を積極的に取り入れ、新たな可能性を拓く

同社では、製品開発や製造プロセス開発の面で新たな着想を取り入れるべく、若手社員の現場登用を積極的に進めている。実際に旭川で透明フィルムLEDの開発と製造プロセスに携わる面々に話を聞いた。

左から、東芝ホクト電子株式会社 透明フィルムLED開発グループの石谷晃氏、千葉一希氏、橋場友紀氏、田中浩二氏

左から、東芝ホクト電子株式会社 透明フィルムLED開発グループの石谷晃氏、千葉一希氏、橋場友紀氏、田中浩二氏

「私は主に製品の評価を担当しています。まだ入社2年目で、この分野に関してほとんど何も知らない状態で配属されましたが、周囲のサポートを受けながらスキルを身につけている実感があります」(千葉氏)

 

「主にLEDチップの実装技術を担当しています。私は中途入社でまだ半年ということもあり、実務的な知識が及ばない点も多々あるのですが、重要な工程を担当させてもらえているのはモチベーションになります」(橋場氏)

 

また、そうした若い戦力を束ねるベテラン勢にも、この環境は良い影響を及ぼしているようだ。

 

「弊社ではこれまで、こうした新規事業を立ち上げる機会が少なかったため、社歴に関わらず刺激のある現場になっています。その分、困難も多いですが、若い人材との交流から得られる発見も多く、理想的な環境で業務を進めることができています」(田中氏)

 

若手とベテラン、世代やキャリアが変われば、目線も変わる。これが時に開発の現場に大きなヒントをもたらし、共創を通した新しい価値観が新たなアイデアを生み出すことがあるという。

 

透明フィルムLEDは、これまで世の中に存在しなかったタイプのデバイスですから、我々からするとお手本になるものがほとんどありません。だからこそ、新しいものを共に創り出すことに大きなやり甲斐を感じていますし、おかげで世代を問わず目的に向けて一体感のあるチームができあがっていると感じます」(石谷氏)

 

社内の技術の粋を結集した透明フィルムLEDは、国内だけで34の特許が出願(※3)されている。「社歴の浅いうちからこうした特許出願を手掛ける経験ができることは、若手自身および会社にとって必ず将来の財産となるでしょう」と曽我部氏が語るように、人材育成の点でも大きな影響を及ぼすはずだ。

※3:2019年10月時点

透明フィルムLEDが始動させる新しい未来

若手とベテランが共創しつつ開発された透明フィルムLEDは、配線が目立たず、ベースとなる基板も透明でLEDチップの光を余すことなく使えるため高輝度だ。また、柔軟という特長も併せ持つため、様々なシチュエーションでの活用に向けて動き始めている。LEDの配置によって模様やロゴなどを自在に表現できることから、駅のホームドアやエスカレーター側面をサイネージとして活用、あるいは、身近なところではタンブラーに電飾を施してムードを盛り上げるグッズとするなど、活用の幅は広い。

 

今後は、電飾表現の新たなプラットフォームとして、ユーザー側から多彩なアイデアや活用法が生まれてくることになるだろう。果たして、透明フィルムLEDがこれから私たちにどのように風景をアップデートして見せてくれるのか。遠くないその新しい未来を心待ちにしたい。

電飾例

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