大きな一歩を踏み出した量子コンピューティングの可能性とは?

2021/05/12 Ashley Montanaro and Phasecraft

大きな一歩を踏み出した量子コンピューティングの可能性とは?

2021年3月、IonQがSPACを合併すると報じられ、量子コンピューティングハードウェアの上場会社誕生に向けた第一歩が踏み出された。今回の合意に至ったのは、IonQの賞賛に値する技術的成果によるところが大きい。研究開発上の課題はまだかなり残っているものの、量子テクノロジーが大きな可能性を秘めていることは現段階で認識されている。

 

量子コンピューティング業界は、量子コンピューティングの可能性を実現するために、ハードウェアおよびソフトウェアにおけるテクノロジー上の基礎的な課題に取り組む必要がある。ソフトウェア開発者は、各ハードウェアデバイスの仕様や用途に合わせたアルゴリズムを使用することで、近々実現できるハードウェアの能力について理解を深めてソフトウェアを作成し、ノイズやエラーを抑える必要がある。また、IonQのようなハードウェア会社は、複雑なアプリケーションを実行するために、量子ビット数や回路深度をさらに拡張できるハードウェアを開発する必要がある。ソフトウェア、ハードウェアの開発者はどちらも進歩を続けており、商業的、産業的、科学的に意味のあるアプリケーションを提供するために、双方が共同で取り組んでいくべきである。

 

量子コンピューティングを実現するハードウェアとソフトウェアにおいて、明るい未来へ一歩近づくような重要な進歩も多く見られた。今では量子コンピューターが古典的なコンピューターの性能を超えて重大な問題を解決できる、いわゆる「量子優位性 (quantum advantage)」への道のりが見えてきている。バッテリーや超伝導体といった新素材のシミュレーションなど、量子コンピューティングが新しい方法で科学と産業を前進させる未来の姿を、私たちは見ることができる。これらの進歩により、現在のアプローチよりもはるかに資本効率の高い方法で、より優れたエネルギー貯蔵やクリーンエネルギーがより迅速にもたらされることになる。

 

このように大きな期待が寄せられている一方で、量子コンピューティングは一朝一夕では実現しないことを覚えておくべきだ。実現までには何十年もかかるだろう。それでも、数年以内に実現できる量子ハードウェアで有望なアプリケーションが登場するだろう。いや、しなければならない。

 

量子コンピューティングに関して覚えておくべき重要なポイントを3つ挙げる。

 

  1. 量子コンピューティングは古典的なコンピューティングの代替ソリューションではない。量子コンピューティングは、スーパーコンピューティングの強化版であると誤解されることが多い。これから投資を考えている人は、量子コンピューターは古典的なスーパーコンピューティングの代替品や改良品ではなく、デスクトップやモバイルデバイスの代替品でもないことを理解しなければならない。量子コンピューティングは、企業のデータインフラストラクチャにおける既存のコンポーネントを単純に置き換えるものでもない。量子コンピューターを最大限に活用するには、量子演算に適した部分だけを全体の問題から分離させる必要がある。

  2. 量子コンピューティングはすぐに実現するわけではない。すでにいくつかの見出しが誌面を賑わせているものの、量子コンピューティングがサイバーセキュリティや金融などの業界を一夜にして覆しているというニュースを目にするようになってからまだ1年も経っていない。量子ハードウェアはまだノイズやエラーを抑えられるほどの堅牢さはなく、近々実現できるハードウェアで実行できるように最適化されたソフトウェアプログラムやアルゴリズムもない。量子ハードウェアの開発は資本集約型であり、投資家は長い目でその実現を待たなければならない。

  3. 量子コンピューティングはあらゆる活用事例に適しているわけではない。量子コンピューティングは、量子力学に関連する問題に特化している。たとえば、先端科学の分野では現在、実験室での開発およびテストに数十億ドルもかかるケースも多くあるが、そうした事例にはより有効である。長期的には、量子コンピューティングは、特定のクラスの最適化問題の解決をスピードアップする可能性がある。ただし、ビッグデータ、機械学習、財務、といった注目を集めるコンピューティングにおける突出した課題を解決してくれるような魔法のソリューションではない。

 

量子コンピューティングのスタートアップ企業の共同創設者であり、量子コンピューターの理論およびテクノロジーを開発している主要大学でリーダーを務める著者の見解としては、量子コンピューティングのための堅牢なエコシステムが必要である。今後の可能性と有望な未来、およびこれから数十年にわたる開発を実現するには、慎重な投資が不可欠だ。

 

業界側としても忍耐強い投資を期待しており、量子コンピューティングのさらなる可能性と明るい未来を実現するために、新たな人材がこの分野に参入するよう働きかけている。投資家は、量子コンピューターが研究室から世に出て、持続可能かつ高成長の先端コンピューティング産業として世界に羽ばたくまでには、長期にわたる研究開発が必要であることを知っておくべきだ。

 

今はまだ量子優位性の段階には到達していないが、材料、製薬、金融などさまざまな分野の大手企業が、量子コンピューティングを使ってビジネス変革の可能性の評価を手掛けるチームを設けている。この革新的なテクノロジーを最大限に活用できる企業に多大な先行者利益がもたらされる可能性を考えると、今こそ経営陣は量子コンピューティングの評価を行うべきである。多数の科学およびテクノロジーの専門家を手厚く迎え入れておくことで、将来莫大なリターンが期待できるのだ。

 

Ashley Montanaroは、英国の量子ソフトウェアのスタートアップ企業Phasecraftの共同創設者であり、ブリストル大学で量子コンピューティングを研究している教授でもある。

 

この記事はVentureBeatのAshley MontanaroおよびPhasecraftが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願い致します。

 

※本記事の文中リンクは英語のページに遷移します。

 

 

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