ESG投資増加の背景とそのトレンドの持続可能性を探る

2021/05/31 ValueWalk

ESG投資増加の背景とそのトレンドの持続可能性を探る

倫理的な投資は新しい考え方ではない。ESG(環境、社会、コーポレートガバナンス)ファンドが初めて登場したのは、投資家たちがタバコの生産のような、企業の社会的責任を果たさない銘柄やその産業全体をポートフォリオから除外し始めた1960年代に遡る。

 

かつては「あるといいもの」と考えられていたESGファンドだが、最近では「なくてはならないもの」という認識が消費者の間で主流になっている。この傾向はすでにCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミック以前から勢いづいており、COVID-19はそのプロセスをさらに加速させたといえる。

 

2020年はESGファンドの市場規模が急増した年だ。先般発表されたMSCIの世界機関投資家調査(Global Institutional Investor Survey)によると、アジア太平洋地域では、投資家の約79%がCOVID-19の影響を受けてESGファンドを「大幅に」または「中程度に」増やした。カナダでは、社会的責任投資への流入額が32億ドルを超え、ESGファンドの純資産総額は前年比37%増の220億ドルを越えた。

 

また、アメリカではESG投資ファンドの資産がこの3年間というわずかな期間で4倍に増加した。この分野が急速に成長していることは明らかであり、減速の兆候は見られない。では、いったい背景には何があるのか、また、このような急増は一時的なものか、あるいは勢いはここで止まるのだろうか?

舞台が整った

ESGファンド急増の背景に、ここ数年間における市場に対するいくつかのミクロトレンドの登場がある。一例としては、リーダーの役割を担う若い世代が増え、彼らが投資手段や投資先などのポートフォリオに関する重大な決断を行うようになってきていることにある。また、投資家からファンドマネジャーへの要求も増えている。ミレニアル世代の約90%が自分の価値観に合った投資をしたいと考えており、自らの投資志向をより重視しながら、資産を時間の経過とともに増加するように課している。

 

このような世間の認識の変化が倫理的な投資アプリの増加につながり、結果として投資家は自分にとって重要なものに対し、これまで以上に投資しやすくなった。例えば、女性たちが作った投資アプリ「Ellevest」では、Ellevestのウェブサイトによると、「ジェンダーの不平等や人種差別、気候変動など女性に偏った影響を及ぼす課題」に対して投資することができる。

 

また、かつては、ESGは収益性とトレードオフの関係にあると考えられていたが、まったくそうではないことを示唆する多くの調査結果もある。

 

BlackRockの調査によると、ESGインデックスはこれまで、従来のインデックスと同等かそれ以上のパフォーマンスを示している。この調査によると、実際のところ、訴求力のあるESG方針は、健全な財務状態など、訴求力のあるその他のインデックスと同等であるという。つまり、こうしたESGの観点を取り入れ、指針として掲げる企業は、景気後退時に他社よりも健闘する可能性がある。

 

Fidelity Internationalが発表したホワイトペーパーでも、ESG特性が異なる企業に株価の変動が及ぼす影響を検証した結果、同様の知見が得られた。また、同報告書は、持続可能性評価の高い企業は、市場が下落した際に、同業他社よりも一貫して高いパフォーマンスを示すと結論づけている。

 

このデータによると、利益とESGの基本方針は互いに排反するのではなく、実際には互いに連携できるのだ。では、ESG投資を急増させたパンデミックとは一体何だろうか。

ESG投資を急増させた最悪の事態

このようなトレンドが背景にある中で、COVID-19のパンデミックという最悪の事態が倫理的な意思決定への関心を世界中で高めたことにより、2020年にESG投資が急増した。

 

2020年3月、世界は一夜にして先行きが非常に不透明な時代に突入した。アメリカでは、パンデミック発生から数ヵ月間で2,200万人もの労働者が職を失った。他の国でも同様の事態が起き、オーストラリアでは5月までに100万人近くが失業し、イギリスでは8月までに就業者数が75万も減少した。多くの命と雇用が失われたが、人々はこの悲しみの中で団結し、互いに支え合うようになった。

 

COVID-19の第1波では、企業は利益を得るよりも、従業員の安全確保や社会的保障といった、目に見える脅威に対処せざるを得なかった。そのため、多くの場合、短期的な収益目標は棚上げされた。モーニングスターのサステナビリティ・リサーチ・ディレクターであるJon Hale氏は、こうした取り組みを実施した企業は、長期的には顧客から評価されると考えている。

 

「昨今では、企業価値の大半は顧客からの信頼といった無形資産に基づいており、企業がパンデミックの渦中にどのように難局を乗り越えたか、あるいはうまく対処できなかったかをステークホルダーは記憶に留め、そのことがいずれ企業の利益に影響するだろう。」とHale氏はCNBCに語った。

このトレンドは持続するのか?

しかし、ESG投資ファンドの急増は永遠に続くわけではなく、すべての投資が増加しているように、単なる上げ相場傾向にすぎないと評論家たちは指摘している。また、このセクターは環境配慮をしているように装いごまかす「グリーンウォッシング」のリスクが高いともいわれている。持続可能性がトレンドになると、企業はビジネス慣行を根本的に変えることなくこの時流に乗りたくなるのだ。

 

しかし、バークレイズやJPモルガンなどの大手投資銀行の複数の幹部は、ESG投資ファンドが一過性のブームにすぎないという考えを公然と非難している。

 

例えば、バークレイズ・プライベート・バンクの当時のCEOであるKaren Frank氏は、CNBCのインタビューの中で、持続可能性は単なるトレンドではなく、人々の今後における投資方法の根本的な変化を表していると主張した。

 

200人の専門家を対象とした2月の調査では、投資マネジャーの3分の2近くが、今後5年以内にすべてのファンドにESGが組み込まれると考えており、一過性のブームではないとう考えが支持されていることがわかった。

 

同様に、JPモルガンは顧客に向けた2020年度の決算短信の中で、「市民社会の回復は目覚ましく、ボランティア活動、社会的結束、地域社会への支援、そして、公共の利益か個人の自由かへの注目が増加しているCOVID-19による世界的危機がESG投資への流れを加速させていると考えている。」と述べている。

 

ESGがついに真剣に受け止められるようになったという考えが、業界の主要企業の圧倒的な支持を得ている。かつては単なる脇役と考えられていたESG投資ファンドは、業界に大転換をもたらす存在として急速に台頭しており、世界中のポートフォリオの構成を根本的に変えると予想されている。ただし、この動きが人種的公平や気候変動、女性の権利といった問題にどれだけ大きな影響を与えるのか、そして、どれだけ早く結果を出せるのかはまだわからない。

 

 

この記事はBlockchain NewsのValueWalkが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願い致します。

 

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