スマート・エネルギー・システムはなぜ大切なのか?

2021/07/05 Duncan Jefferies

スマート・エネルギー・システムはなぜ大切なのか?

電気は当たり前にあるものと思いがちだ。スイッチをパチンと動かせば照明がつくし、ボタンを押せば人気のテレビ番組が見られる。とはいえ100年前なら、電気は一部の人しか恩恵を受けられない贅沢品だった。

 

イギリスでは1900年代初頭、民間企業と地方自治体がごちゃ混ぜになって、それぞれが大都市の一部や大きな町に電力を供給するシステムを運営していた。しかも、電気代はかなりの額だった。そのため1926年、当時のスタンリー・ボールドウィン首相は、国内にある最も効率の良い発電所を結ぶ送電会社National Gridを設立し、一般家庭や企業に安定した電力を手頃な価格で提供した。しかし、すべての人に電力を届けたこのエネルギー・システムは今、大きな変化の時を迎えている。

 

「現在の電力システムは、随分昔に設計され、建設されたものです。そのため容量には限界があるのです」と話すのは、より高度なスマート・グリッド技術についてダラム大学で研究しているHongjian Sun氏だ。「電力システムが作られた当時は、石炭火力発電所が継続的に電力システムに電力を供給するだろうと考えられていていました」。

 

しかし実際には、イギリスに現存する3カ所の石炭火力発電所はすべて、2025年までに閉鎖される予定だ。また、その一方で、政府は2050年までに、イギリス国内での温室効果ガスの排出をネットゼロにまで削減すると公約している。つまり、エネルギー・システム全体を迅速に脱炭素化する必要があるのだ。

 

この中心となるものが、より多くの再生可能エネルギー源を統合することだ。しかしこれには別の問題を伴う。「風がいつ吹くか、いつ曇るのか晴れるのかなどは、私たちにはコントロールできません。そのため、再生可能エネルギー源は間欠的な電源なのです」とSun氏は説明する。

 

現在の電力システムには制約があるにもかかわらず、独立系の気候シンクタンク、エンバーによると、再生可能エネルギーは2020年、化石燃料を追い抜きイギリスの主電源となった。さらに、イギリスでは2020年4~6月の間、石炭火力による発電を一切しない状態が67日間続いた。1880年代以降、イギリスが石炭火力発電なしに過ごした最長日数だ。

 

しかし、電力の非継続性という問題を予測し、備え、これらに対応できるように現在の送電網をアップグレードせずに――言い換えれば、もっとスマートなものにせずに――よりクリーンでグリーンなエネルギー・システムに転換することはできない。我々は、エネルギーをいかにして生成、消費、貯蔵、監視するかを根本から考え直す必要がある。

 

デジタル技術を活用したこれまでよりもスマートなエネルギー・インフラは、エネルギーの需要と供給のバランスを取る柔軟性に優れたものとなる。また非継続的であるという再生可能エネルギーの特徴を考えると、エネルギー事業者にとってより多くの再生可能エネルギーをシステムに統合しやすくするため、電力の急増や停電といったリスクも低減できる。

 

このデジタル技術は、スマート・メーターが各戸の接点となり、エネルギー供給事業者と消費者間の双方向コミュニケーションを可能にする。必要な時は電力量を増やしたり、電力消費パターンを変更したり、電気自動車(EV)や太陽光パネル、風力タービン、ヒートポンプをエネルギー・システムに加えやすくしたりする情報をスマート・メーターが電力システムに提供する。

 

「エネルギーは、どのくらい使うかだけではなく、いつ使うか、発電源にどれだけ近いところで使うかが大切です」と話すのは、Smart Energy GBのRobert Cheesewright氏だ。そのため、システム上のコミュニケーションを向上させることで、消費者はエネルギーが自分の近くで発電されたときに最適な時間帯に使うということが容易になる。

 

一部の大企業はすでに、ピーク需要時に自動的にヒーターやエアコン、その他の設備をオフにするデマンドサイド・レスポンスとして知られるシステムを導入している。

 

計画としては、中小企業や住宅でも似たような対応ができるようにし、スマートな食器洗浄機や洗濯機、タンブル乾燥機、さらには冷蔵庫など、スマート・メーターに接続されている電化製品が、オフピークの時間帯に自動的に稼働するような活用を目指す。「実際のところ冷蔵庫は常にオンになっているわけではないのです」とCheesewrightはいう。

 

「冷蔵庫は自動的に運転を停止したり開始したりして、温度調節をしています。スマート・メーターからの電力価格の信号を加えて、食品が腐るかもしれない温度以上には上がらないようにしつつ、電力が安いときに冷やしてくれるようにすれば、節約できるうえ、電力システムへの負荷を軽減できます」

スマート・メーターが30分毎に提供する電力使用量の測定値を使うことで、ピーク・オフピーク・夜間など、「使用時間帯」ごとに異なる料金設定を導入する電力供給事業者も増えるだろう。

 

 

また、このように提供されたデータのおかげで、電力送電網の事業者がインフラのアップグレードをより効率良く計画的に行えるようになる。例えば、当初の投資をEVやヒートポンプなどによる需要が最も高まっている建物に集中するなどだ。

 

確かに、誰もがガソリン車やディーゼル車をEVに乗り換えることができれば素晴らしいが、みんなが仕事から帰宅して同じタイミングでEVのプラグを入れたら、現在の電力システムは恐らく崩壊してしまうだろう。しかしながら、よりスマートなエネルギー・ネットワークなら、EVの充電は夜間の時間帯にずらして行えることになる。

 

さらにEVは、蓄電システムとして活用できる可能性もある。「夜6時に帰宅して、電力システムから電気を引き出して車を充電する代わりに、朝4時にシステムからの供給電力で充電した車のバッテリーを使い、自宅の電気を賄うこともできます。車のバッテリーは若干消耗しますし、緊急時に車が必要となったときのために完全に消費してしまわないように気を付ける必要はあります。しかし夜10時に再び充電を始めれば、翌朝仕事に向かうときにはフル充電されています」とCheesewright氏はいう。

 

よりスマートなエネルギーのインフラは、新たなビジネスモデルも創出する。例えばドイツ企業Sonnenは、数千もの太陽光パネルやバッテリーを集めて、仮想発電所を作った。同時に消費者は、対個人のP2Pマーケットプレイスを通じて、太陽光パネルや風力タービンからの余剰電力を送電網に売却したり、地元の家庭に売ったりすることで、生産者であり消費者でもある「プロシューマ―」になることもできる。

 

「手に入るエネルギーのうち最も安く、効果的で、便利なのは、地元で生成されたエネルギーです。そのため、自宅から最も近い風力タービンまたは太陽光パネルが自分のコミュニティに電力供給してくれれば、そこから恩恵を受けられます」とCheesewrightは話す。

 

AI(人工知能)や機械学習は、このプロセスを自動化し、さらなる効率化を実現するべく電力システムを調整するのに役立つ可能性がある。「P2P取引をするなら、自動的にやってくれる何らかのシステムを頼りにすることになるでしょう。常に手動でスイッチをオンやオフにしたくはないはずです」とSun氏はいう。

 

未来の分散型電力システムはそのため、スマートなデジタル技術でつながれた、何千という小規模発電網や供給事業者から構成されるものになる可能性がある。ある意味、National Grid設立前にあったシステムのハイテク版といったところだ。

 

とはいえ、電力システム初期の開拓時代とは異なり、私たちは誰もがクリーンで信頼性の高い電力を手頃な価格で自宅で利用できるべきだ。さらに、政府は2050年までに、炭素排出ネットゼロを達成するとの公約を法制化している。イギリスは先進国として初めて、このような法律を定める国となった。全員でこの目標値を達成するための手助けとなるものだ。

 

この記事は、スマート・メーターの重要性と、そこから人や環境が得られる恩恵に対するイギリスの理解の促進を目指す、政府支援の非営利組織Smart Energy GBの提供によって執筆されたものです。

 

この記事はThe GuardianのDuncan Jefferiesが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願い致します。

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