人間とAIが共生する新たな働き方

2021/08/30 Igor Ikonnikov

人間とAIが共生する新たな働き方

新たなテクノロジーというものは、そのユーザーが潜在的なメリットとデメリットを比較検討するにつれて賛否が分かれる。それを首尾よく導入するには、まず少人数のユーザーで小規模にシンプルな形態で目的が達成することを確かめてから、活用する規模を拡大する必要がある。人工知能(AI)も例外ではない。AIの場合は、常に人の特権であった認知領域に踏み込むという、さらなる課題がある。このテクノロジーがどのように機能するかを理解しているのは、ごく一部のスペシャリストに限られる。従って、AIがますます社会に導入されていくにつれて、一般の人々に対して教育を提供することが必要となる。

 

先日、ボストンに拠点を置くAI企業CogitoのCEO兼共同設立者であるJosh Feast氏と、新しい時代の仕事におけるAIの役割について話し合う機会があった。ここでその時の内容を紹介する。

 

Igor Ikonnikov: AIベースの企業を立ち上げ、成長させたご経験からご承知のように、今後AIは信じられないほど強力なツールになる可能性がある。しかし、労働力に及ぼす影響や、この新たなテクノロジーがいつかは自分に取って代わるのではないかと懸念する人も多い。そこでまず、AIが仕事を奪う可能性があるかという話題を取り上げたい。

 

Josh Feast: たしかに最近この質問は何度もされる。不確かな未来を傍観するのではなく、AIと人の関係をどのように形づくっていけば我々が満足できる結果を得られるのかに注目すべきだと思う。私が伝えたいのは、我々はAIを採用したマシンと共存する世界に生きているし、今後ますます進んでいくだろうということだ。だからこそ、テクノロジーの進歩に抗うのではなく、それを受け入れて活用しなければならない。企業がAIテクノロジーを導入して現代の企業に革命を起こそうとも、仕事においても人間としての感情は常に重要な資産であり続けるだろう。人間に取って代わるのではなく、テクノロジーを活用して補う、あるいは単に人間を手助けすることが目的だ。

NUSビジネススクール学長兼教授であるDavid De Cremer氏と、ヒューマン・ライツ財団(Human Rights Foundation)の会長でありRenew Democracy Initiativeの創設者でもあるGarry Kasparov同意見だ。彼らは以前、「AIが人間の労働者に取って代わるかどうかという問題は、AIと人が同じ資質や能力を持っていることが前提となっているが、実際にはそうではない。AIを採用したマシンは、スピードが速く正確で一貫して合理的だが、直感的、感情的、文化的な繊細さがない。」と説明している。AIと人間の長所を組み合わせることで、さらなる効果が発揮できる。

 

Ikonnikov: COVID-19(新型コロナウイルス感染)の影響もあり、この数年 で、急速に人と人の対面でのやり取りの価値が見直されたことや、高度な自動化の必要性など、様々な点で混乱が起こった。しかし、これは両方の強みを組み合わせるチャンスなのだろうか。

 

Feast: 感染症のパンデミックから1年以上が経過し、大勢の人にとってリモートワークが当たり前となった今、我々の行動のほとんどがデジタル化されテクノロジーによって媒介されている。効率や生産性が向上する一方で、人と共感することが減ったことを補い、活力や前向きな交流を増やす必要性が高まっている。言い換えれば、AIは既に人と共生しており、その相互関係を今後どのようなものにしたいかを明確にするのは我々次第だ。この考察には、人間とAIの関係の可能性を最大限に引き出すために、先入観に捉われない、前向きな見方と共感が必要になる。人を意識したテクノロジーが未来を形づくる上で、大きな役割を果たせると信じている。

 

Ikonnikov: 「人を意識したテクノロジー」とは、具体的にはどのようなものなのか。。

 

Feast: 人を意識したテクノロジーは、人間の感情的、社会的な知性に対応し、それをサポートする能力など、人が本来持っているスキルをさらに補うために、人が今必要としているものを感じ取る能力である。それが新しい分野でのテクノロジーによる価値の付加に新たな扉を開く。この事例としては、ジョンズ・ホプキンス応用物理研究所(Johns Hopkins Applied Physics Laboratory)で開発されたロボットアームのように、義肢が身体の延長のように感じられるヒューマン・マシン・インターフェースを備えた「スマート」義肢がある。人間のような反射神経と感覚を備えたこのロボットアームには、温度や振動をフィードバックするセンサーが搭載されており、人の手足の感覚を模倣してデータを収集してもいる。その結果、通常の腕と同じように反応できる。

同じコンセプトが、大規模な企業や組織の中で働く人間にもあてはまる。我々の仕事の大部分は、他の人々との共同作業である。このような人と人との相互作用において、時々きっかけを見逃したり、争いになったり、他の人の視点を見失ったりすることがある。テクノロジーは、そのようなパターンやきっかけを客観的に「認識」するものとして、我々をサポートすることができる。

 

Ikonnikov: 人を意識したAIを活用するために、マシンの知能と人間の知能とのバランスを取る必要があると言っていますが、職場ではどのように解釈すればよいのか。

 

Feast: そのバランスを取って最適化し、職場での課題にうまく対処するには、いくつかの先導を切らなければならない。

人を手助けするようにAIに力を持たせるには、人が積極的によく考えてAIを形成する必要がある。そうすればするほど、AIは個人にも組織にも役立つようになる。実際、マイクロソフトのHuman Understanding and Empathyグループのチームは、適切なトレーニングを行えば「AIはユーザーをよりよく理解し、より効果的にコミュニケーションを取り、テクノロジーとのやり取りを改善できる」と考えている。人を訓練するのと似たようなプロセスでテクノロジーを訓練することが可能である。タスクを時間通りに完了させるといった外的な目標の達成だけでなく、満足度を最大化するといった内的な目標の達成にも応じて価値を与えること、つまり、外因性価値と内因性価値と呼ばれるものだ。人にとって何が本質的に大事なのかというデータをAIに取り込むことで、AIが人をサポートする能力が高まる。

 

Ikonnikov: 職場が進化し、日々のワークフローにAIが浸透すると、その結果はどうなるのか。

 

Feast: 組織がAIと組み合わせて人を活用し、最も重要な局面で充実した体験ができれば職場での成功がもたらされる。新たなチャンスの波が生まれるのは、こうした瞬間的な相互作用による。例えば、対面の会話では双方がお互いに社会的シグナルを発し、検出し、解釈し、反応する。それは会話のダンスとも呼ばれている。

特にリモートワークの普及により、我々は皆ビデオ通話や音声通話でコミュニケーションを取らなければならず、その会話のダンスの本質に迫ろうとしてきた。アイコンタクトやボディランゲージ、共有された実際に会った時の経験など、他のコミュニケーション手段がない状況で、チームメンバーやマネージャーが会話の中で感情を表現するには、音声(今はビデオ)が唯一の手段となる。従業員と顧客の会話であろうと、従業員と経営者の間で交わされる会話であろうと、ビジネスの成否を左右する瞬間である。人が自分自身を訓練するのと同様に、人によって訓練された、人を意識したAIは、このような場面で人の能力を増大し、重要な局面で人をサポートして、より良い結果をもたらすことができる。

 

Ikonnikov: 例えば、欧州連合(EU: The European Union)が、AIの使用を管理する初めての指針となる厳格な提言を発表したように、最近、AIの規制に関連して大きな変化があった。AIをより適切に規制する必要があると考えているか。

 

Feast: 我々には、誰にとっても効果的で公平なテクノロジーを創造する義務がある。人間の基本的な権利に関して言えば、何も制限や制約なしに構築できるわけではない。つまり、我々はAIを規制する責任を負わなければならない。

 

AI規制を成功させる第一段階は、データを規制することである。データはAIの創造と展開を定義する極めて重要なリソースとなる。我々は既に、規制されていないAIによる意図されていない結果を目の当たりにしている。例えば、AIの導入に関して言えば、それぞれの企業で保持しているデータの量や質に歴然とした差があるため、企業間で公平な競争が行われているわけではない。この不均衡は、テクノロジーの開発や経済などに影響を与える。リーダーとして、またブランドとして、我々は規制機関と積極的に協力して、競争の場を平準化しAIへの信頼を高めるために、共通のパラメータを作成しなければならない。

 

Ikonnikov: その信頼を得るには、AIテクノロジーのクリエーターはどうすればよいのか。

 

Feast: テクノロジーに透明性をもたらし、すべてのユーザーに明確なメリットを伝えることで、倫理的なAIの導入に注力しなければならない。これは、教育やスキルアップの機会を提供することにもつながる。また、導入されたモデルやシステムの根本的な偏りを積極的に減らしていかなければならない。AIのリーダーやクリエーターは、例えば、性や人種に対する偏見を検証するために、偏りを解消する取り組みについて幅広く研究する必要がある。これはAIへの信頼を高め、組織や集団全体で責任をもってテクノロジーを導入するための道筋として、重要な一歩となる。

 

また、多様な個人の属性、在留資格、生い立ちや経歴を持つAIクリエーターにも機会を与えなければならない。AIでどのような問題を対処するのかを決めるのはクリエーターであり、彼らの多様性が高まれば、AIはより幅広い問題に対応するようになる。

 

これらのパラメータ、つまり信頼関係がなければ、AIのメリットを十分に享受することはできない。逆に言えば、もし我々がこの点を正しく理解し、AIのクリエーターや関連する組織のリーダーとして、信頼を獲得し、AIを慎重に形成することができれば、結果として、本当の意味で共生できる責任あるAIが、仕事の未来を切り開いていくのをより効果的にサポートすることができるようになる。

 

この記事はVentureBeatのIgor Ikonnikovが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願い致します。

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