10年後を見据えたエネルギートランスフォーメーションとは

2021/09/27 Robert Walton

10年後を見据えたエネルギートランスフォーメーションとは

概要:

  • 北米電力信頼度協議会(NERC:North American Electric Reliability Corporation)理事会が8月に発表したレポートによると、電力系統事業者と電力安定供給の管理者は、基幹電力系統(BPS:Bulk Power System)のインバーターベースのリソースの相互接続と使用量を改善する必要がある。そうでないと、特に異常気象が起きたら電気の信頼度が崩壊するリスクがある。
  • 風力、太陽光、バッテリーといったリソースは、従来の同期発電と同じ慣性を備えていないため、電力系統の負荷が高くなるとシステムの安定性維持が困難になる場合がある。NERCのReliability Risk Priorities (RRP)レポートの草稿によれば、より的確なシステム予測と新たなインバーター技術がその問題の解消に役立つ可能性がある。
  • 新たな電力テクノロジーの統合には短期的な不便が伴うかもしれないが、今後10年で「社会のためのよりクリーンな電力系統に向けた素晴らしいトランスフォーメーションが実現することになると確信している」と、NextEra Energy Resourcesの再生可能エネルギー政策担当副社長のMark Ahlstrom氏が2021年6月に述べている。

インサイト:

新たなテクノロジーを取り込むのには常に困難が伴うので「短期的な視点では、長く辛い仕事のように感じることがある」と、Ahlstrom氏は規制ユーティリティ委員協会(NARUC: National Association of Regulatory Utility Commissioners)によって開催されたウェビナーで述べている。

 

Ahlstrom氏は、Energy Systems Integration Groupの社長でもあり、NERCの信頼性問題運営委員会(Reliability Issues Steering Committee)のメンバーである。彼は、RRPレポートの電力系統トランスフォーメーションに焦点を当てたセクションを執筆し、分散リソース、ストレージ、インバーターベースの技術を含め、膨大にある新たなテクノロジーの継続的な取り込みは、「電力の予想純需要の不正確な予測につながる可能性がある」と警告している。

 

「これらのテクノロジーの動的で一過性のパフォーマンスとレスポンスは、新たな課題ももたらす。テクノロジーを変えることは、制御および保護システムにも影響する」と、レポートで述べられている。

 

レポートによると、NERCと6つの地域信頼度協議会は「インバーターベースのリソースのBPS相互接続と運用を改善し、新しいインバーター技術に遅れずについていく」必要がある。Ahlstrom氏は、電力系統を構成するインバーターの研究を含め、事業者はインバーター技術の進歩を把握していなければならないと述べている。

 

「将来的に技術的なガイドラインと機器の標準を採用し、必要に応じて新たな電力系統を構成するインバーター技術を選択的に導入することで、インバーターベースのリソースは電力系統トランスフォーメーションにおいてBPSの信頼性に重要な貢献を果たすだろう」とレポートは予測している。

 

レポートは一般のコメントを得るために2021年6月23日まで公開される。コメントは次の改訂の後、NERCの理事会で検討され、8月には承認される予定だ、とAhlstrom氏は述べている。

 

レポートによるとテキサス州とカリフォルニア州の最近の停電の報告を受け、「電力系統トランスフォーメーションが実現しても、消費者のニーズを満たすことができる十分なエネルギーを確保するには、容量だけでは不十分である」とも述べられており、エネルギーのセキュリティに取り組むための新たな方法と基準を策定することが推奨されている。

 

Ahlstrom氏はまた、NERC会長兼CEOのJim Robb氏が5月に述べた「電力系統で見られる変化と信頼性への潜在的な影響への懸念が増加している」というコメントを取り上げている。カリフォルニア州とテキサス州はどちらも2021年の夏はより高いリスクに直面している。

 

Robb氏は「良い点を挙げている」と、Ahlstrom氏は述べ、天然ガスとの電力システムの共依存関係は、特に最近の出来事では問題であると認めている。

 

「多様性が良い」とAhlstrom氏は言う。これには、新たなクリーンエネルギーリソース間の多様性と、再生可能エネルギーと従来の発電との間の多様性が含まれる。「NERCは、私たちがすべてを連携動作させようとしている方法について、かなりバランスの取れた見方をしていると思います。」

 

よりクリーンな電力系統へのソリューションは、炭素非排出リソースの追加に留まらない、とGE Energy Consultingの脱炭素計画担当ディレクターのSheila Tandon Manz氏は言う。

 

「今後注目されるのは需要側です。一部では、再生可能エネルギーの普及が電力システムの限界を押し上げているからです」とManz氏は述べている。

 

現在一部の地域では、年間ベースで1時間当たりの配電量の約30%を再生可能エネルギーが占めている。それらは普及率が高い地域ではさらに高くなる可能性があるが、電力を供給するより多くの手段を追加することには複数のメリットがある、とManz氏は言う。

 

「電力供給によって、人々が使うすべてのものをクリーンにするだけでなく、別の手段も与えられました。今では、風力発電と太陽光発電のすべての余剰分を使用量と一致させることができるように、価格を追加することができます。これは簡単ではありませんが、私たちが進むべき道なのです」と、Manz氏は述べている。

 

テキサス電力信頼度協議会(ERCOT:Electric Reliability Council of Texas)の主任計画エンジニアである、Julia Matevosyan氏は「供給と需要のより的確な評価も必要です。その鍵の一つは、これらのリソースの動作の仕組みを理解することです。ERCOTでは、インバーターベースのリソースだけでなく、同期発電でも何が起きる可能性があるかについて様々なシナリオの作成に取り組んでいます。」と、述べている。

 

テキサス州の大半の電力系統を管理しているERCOTは、2021年の夏の最大負荷を満たす十分な発電量があると予測している。しかし、冬の停電の後、再度信頼を構築しようとして、電力系統事業者は、異常気象が停電につながる可能性があるという、発生確率の低いシナリオも発表した。それらのシナリオには、風力発電の予期せぬ低下や火力発電の供給停止が含まれている。

 

「全般的に、私たちはリソースの妥当性を確率的に評価していく意向です」と、Matevosyan氏は述べている。

 

この記事はUtility DiveのRobert Waltonが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願い致します。

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