東芝の若き技術者たち ~現場だから磨かれるインフラを支える力~

2021/10/13 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 震災によって実感したインフラの大切さと、それを支える矜持
  • 巨大なダム建設に魅せられ、現場からの価値創造に憧れる
  • 急速成長中!どんなことにも臨機応変に対応できる技術者へ
東芝の若き技術者たち ~現場だから磨かれるインフラを支える力~

シャワーから出る温かいお湯は、一日の汚れや疲れとともに排水口へと流れ落ちていく。シャワーと排水口。とても近い場所にある二つだが、それぞれどこから来て、どこへ行くのか。それがとても長い旅路であることは、誰もが知りながら、ことさら意識することはない。しかし、そんなインフラの壮大な物語に魅せられた若き技術者が東芝にいる。

自ら被災者となったことでわかったこと

「大学4年の時に、北海道胆振東部地震が起きました。それまでは別のテーマの卒業研究を準備していたのですが、急遽テーマを変更しました」

東芝プラントシステム株式会社で、上下水道プラントの施工管理を担当する氏家可南子氏は、学生時代の経験について語った。大学で土木工学を専攻していた氏家氏は、2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震で自らも被災しながら約5,000人の室蘭市民にアンケートを行い、巨大地震が人々の生活に与えた影響をインフラの面から調査した。

東芝プラントシステム株式会社 氏家(うじけ)可南子氏

東芝プラントシステム株式会社 氏家(うじけ)可南子氏

「地震によって発生した大規模な停電は、水道などのインフラにも影響を与えていました。そして、こうしたインフラの停止が、どれほど私たちの生活の質を低下させるのか、調査とともに自分自身の経験でも知りました」

幼い頃から絵を描くことが好きだった氏家氏は、建築の道に進むために工学部へと進学した。大学の一年時は、建築コースと土木コースで同じカリキュラムを学んでいたため、土木工学についても多くの知識を得ていった。その中に、氏家氏の将来を変える出来事があった。

「授業で、ダムの建設現場を見学しました。小学生の頃にもダムを見に来たことはありましたが、工学部に入って、少なからず土木建築の知識を得ていた私には、以前と違う景色に写りました。技術の粋が巨大なダムにつながり、私たちの生活を支えていると」

ダムイメージ

氏家氏は、ダム建設という社会インフラのプロジェクトの大きさに心が震わされたという。さらに、ダムという巨大な建造物が、普段意識せずに使っている水道インフラを巡る水の壮大な物語の一端を構成するということを考え、インフラ構築・管理の世界に強く惹かれていった。

「インフラにかかわる仕事をしてみたい。それも、できれば現場で。実際にインフラ維持にかかわる仕事がしたいと、自分の進む道を定めました」

そこから土木工学を専攻して知識を磨いた氏家氏は、現場に出られること、そこで長く働き続けられることなどの条件に合う就職先を探し始める。そして見つけたいくつかの企業のインターンシップに参加する。

現場仕事を長く続けていける会社という基準が、入社の決め手だったという

現場仕事を長く続けていける会社という基準が、入社の決め手だったという

「東芝プラントシステムへの決め手は、充実した福利厚生や産休育休制度くるみん認定を取得しているということもありましたが、なによりもインターンシップで出会った年齢の近い先輩社員の皆さんから感じた強い自信でした。『うちの会社はいいよ』の力強い言葉に、説得力と能力を伸ばせる期待を感じました」

※くるみん認定:「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣により認定される企業の証し

入社した氏家氏に対し会社は、ソフトウェア設計への配属を考えていたという。それは、現場で長く働きたいという氏家氏の願いに対しての、会社側の配慮だったのかも知れないと氏家氏は考えている。

氏家氏

経験をいかに成長へつなげるか、それが現場の仕事

氏家氏が現在担当するのは、下水処理場の施工管理だ。東芝プラントシステムが請け負う下水処理場における、受変電設備の更新作業や管理に携わっている。氏家氏が担当する業務の範囲は、プロジェクトに必要なEPC(Engineering:設計/Procurement:調達/Construction:工事)のすべての段階にかかわるという。

「私の現場では、設計や資材の発注に、そしてお客様との打ち合わせから試験まで、なんでもかんでもやっています。だから、とにかくたくさんの知識と経験を積み重ねていくことが必要だと思っています」

現場作業では、常に安全が最優先される

現場作業では、常に安全が最優先される

若手技術者は、経験豊かな主任技術者について仕事を学んでいくのが東芝プラントシステムのスタイルだ。たくさんの先輩技術者が自分に仕事を任せてくれ、それを陰から支えながら育ててくれていることを、氏家氏はわかっているという。

「私は、ここでデビューできて本当にラッキーでした」と語るように、氏家氏は着任早々大きな仕事を任せられる。思い返せば、経験がモノを言う職場で生き抜く力を与えるための先輩技術者からの贈り物に他ならなかったと本人は語る。そして、入社後3年目には現場代理人にまでなった。このスピードはかなり稀で、まさに急速成長といえる。

しかし、けっして平坦な道のりではなかった。象徴的なのが、通常の10倍にも及ぶ100頁を超える要領書の作成であった。通常は2~3回に分けて作成するところを1回で仕上げるため、駆け出しの技術者にとっては非常に大きな挑戦だが、氏家氏は任せられたことを楽しんでいたと先輩技術者は語る。

氏家氏は、先輩と現場を回って機械ごとのケーブル配置などすべてを把握したうえで、膨大な書類を内容ごとに細分化しながら作成したという。それは、少ない経験ゆえに感じた「自分だったら、この方がわかりやすい」という違和感を反映させた結果なのだ。熟練の技術者ならば、気づかなかったかも知れない。実際、「顧客から、『わかりやすい書類でした』と褒められたのが、地味にうれしかったです」と氏家氏が語るように、出来上がった書類の高評価へとつながった。

まだ歩き始めたばかりの「現場から価値を生む技術者」への道だが、氏家氏は「早く先輩たちの様な、トラブルや工期延長などに臨機応変に、冷静沈着に対応できる技術者になりたい」と真剣なまなざしで語った。未来を思い描く技術者の成長は、これからも続く。

氏家氏

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