「英国政府はもっと早く低炭素化に取り組むべきだった」と専門家は語る

2021/11/15 Fiona Harvey environment correspondent

「英国政府はもっと早く低炭素化に取り組むべきだった」と専門家は語る

Toshiba Clip編集部からのコメント

英国における天然ガスの価格が上昇していて、化石燃料の高騰は世界的な問題となりつつあります。英国の一部の専門家は、背景には再生可能エネルギーなどを利用した脱炭素経済への移行の遅れがあると指摘しています。脱炭素化の必要性、流れを捉えられる記事です。

 

再生可能エネルギーやCO₂排出量の少ない暖房は、将来のガス供給問題の緩和に大いに役立ちそうだまた、政府が英国のエネルギー市場を変革するためにもっと早くから尽力していれば、再生可能エネルギーやCO₂排出量の少ない暖房は、冬のガス価格高騰の影響を大いに減らすことができただろうと、業界の専門家は語っている。

 

ガス供給の逼迫を受けて、業界と政府との会合が急増している。英国のKwasi Kwartengビジネス相は月曜日の議会で、「灯りが消えてしまう問題はない」、「英国は非常に回復力がある」と安心感を与える発言をしている。

 

しかし、英国のガス供給問題によって明らかになっているのが、化石燃料は価格の乱高下の影響を受けやすいということだ。London School of EconomicsのRoger Fouquet氏によると、価格変動は10年に1回以上は起こっているという。「価格変動は化石燃料エネルギーシステムにとって避けられない要素だ。再生可能エネルギーはこういった市場関連の問題に悩まされることはない」とFouquet氏は言う。

 

再生可能エネルギーに切り替えることで化石燃料の価格変動による影響は減るが、University College LondonのRob Gross氏によると、英国は依然として国際的なガス価格の影響を特に受けやすいという。「(英国では)ガス需要が高く再生可能エネルギー生産量が少ない場合には特に、ガス火力発電所が価格の決め手となる。電源構成に占めるガスの割合が低い国では価格の変動が少なく、我が国でも当然それを期待してしまう」とGross氏は言う。

 

風力エネルギー会社のリーディングカンパニー、RenewableUKの最高経営責任者であるDan McGrail氏は、政府は将来に向けて学ぶべきだと言う。「政府や管轄部門が最優先で行うべきは、当然のことながら、昨今の価格高騰に対応することで消費者を保護することだ。消費者を長期的に保護する唯一の方法は、エネルギーシステムの動力源を安価な再生可能エネルギーにすることであり、柔軟な貯蔵や水素などの低炭素技術をシステムに備えることで、最低限のコストで需要を満たすことができる」

 

McGrail氏の指摘では、ガス価格の高騰前でさえ、既存のガス火力発電所を運転するよりも、風力発電所を新たに建設して発電する方がすでにコストが低かったという。再生可能エネルギーの成長により、英国での化石燃料による発電量の割合は、この数年間で60%から40%未満に減少している。

 

McGrail氏は次のように述べる。「業界は政府と連携して再生可能エネルギーへの投資を加速している。この動きは、住宅の暖房や重工業におけるガス依存に終止符を打つための鍵となる。再生可能エネルギーへの巨額の投資と並行して、最低限のコストでCO₂排出量ネットゼロを達成するために、英国は電化やグリーン水素生産へと舵を切る必要がある」

 

また、太陽光発電は政府からの支援がないにもかかわらず、近年コストが急激に下がっており、数年以内に陸上の風力発電所をも上回る最も安価な発電形態になると予測されている。業界団体Solar Energy UKの最高経営責任者であるChris Hewett氏は、太陽光発電は冬の間も引き続き電力を供給できると言う。太陽光発電は現在、英国の電力の約4.5%を供給しているが、政府が規制の問題を撤廃して道を切り開けば、消費者の負担なしで2030年までに供給量を3倍にすることが可能であると同氏は言う。

 

「家庭用ヒートポンプは電気を動力源としているため、その普及によって英国のガス依存度を減らすこともできるかもしれないが、英国の発電自体が一部ガスに頼っている」と付け加えるのはRegulatory Assistance Projectの欧州地域ディレクターであるJan Rosenow氏だ。「しかし、ヒートポンプで使用される電力がすべてガス火力発電でまかなわれたとしても、ヒートポンプの効率がはるかに高ければ、ガスの使用量は削減される」

 

ただし、Fouquet氏も指摘する通り、「風力や太陽光は断続性の問題に悩まされている。そのため、再生可能エネルギー源への移行を加速することは環境上の理由からは歓迎されるが、この間欠性に柔軟に対応できるエネルギーシステムを開発することが重要である」

 

この方法として、大規模な蓄電池貯蔵技術(英国はことごとく失敗している)やバックアップ発電への投資などが挙げられるだろう。原子炉は賛否が分かれるものの、電力を安定的に送電網に供給することができ、一部の再生可能エネルギーの間欠性を相殺できる。しかし、英国では老朽化した原子力発電所に代わる新しい原子力発電所を建設するという計画が20年以上にわたって歴代の政府によって策定されているが、現在その計画は困難に直面している。

 

労働組合のProspectは、原子力への取り組みを強化するよう政府に求めている。同組合の副事務総長であるSue Ferns氏は次のように述べる。「今回の要請は政府への警鐘であり、政府が直ちに介入して短期的な供給安全保障を確保しなければならない。現在の危機は、輸入と天候に左右される再生可能エネルギーに過度に依存し、世界の天然ガス市場の価格変動に影響を受けるという危険な状態に陥った結果起きたものである。英国は、安全で回復力のある低炭素エネルギーの未来を確保するために、国内生産による堅固な電力源、特に原子力を優先しなければならない」

 

もう1つの重要な対策は、無駄になるエネルギーの量を減らすことだ。英国の住宅は通気性の高さと暖房効率の悪さがヨーロッパの中でも顕著だが、それを改善する取り組みはほとんど行われていない。政府は昨年、断熱性を高める構想として環境に優しい住宅への助成金を導入した。これは、パンデミックから「よりグリーンな環境を取り戻す(build back greener)」という、大いに誇張された活動の一環として導入されたものである。しかし6ヵ月たたないうちに、行政の十分とはいえない対応により機能している状態とはいえなくなり、2021年3月に国家財政委員会によって廃案となり、その代替政策は今のところ登場していない。

 

現在の危機が過ぎ去った後、正常な状態に戻ることが各大臣にとって望ましいことだろう。しかし、ガーディアンが取材した専門家たちは、現在の危機は英国のガス供給を保護して低炭素基盤の経済に移行するために必要な一連の対策を導入するための、政府に向けた警鐘となるべきだ、として注意を促している。Gross氏は次のように結論付けている。「再生可能資源を最大限に活用し、ガス価格と電力価格との関連性を断ち切れるかは、最終的には貯蔵、相互接続、需要管理がどのレベルにあるかによって左右されるだろう」

 

この記事はThe Guardianの環境特派員Fiona Harveyが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願い致します。

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