希望を抱く理由:今できる気候問題の解決策

2021/12/15 Damian Carrington, Environment Editor, and and Guardian reporters

希望を抱く理由:今できる気候問題の解決策

Toshiba Clip編集部からのコメント

気候変動問題は、私たち人間がこれまでに経験したことの無い、深刻な状況となっています。一方、自らが作り出したこの問題に対して、多くの有効な解決策も出始めています。これらを一刻も早く展開することが大切になりますが、この記事で解決策について知ることは、気候変動問題を考えるよいきっかけになると思います。

 

気候に関する非常事態は、文明にとってこれまでで最大の脅威だ。しかし、この非常事態を打破する手段はすでに存在する。課題となるのは、解決策を特定することではなく、その解決策を一刻も早く展開することである。

 

電気自動車(EV)などの鍵を握るセクターの一部は、すでに急成長を遂げている。EVはすでに多くの国で所有して運転できるほどの手頃な価格で入手でき、今後数年間でガソリン車の価格と同等になり、電気自動車が爆発的に増加する転換点を迎えることになるだろう。

 

再生可能エネルギーからの電力は現在、ほとんどの国で最も安価に提供されている電力形態であり、既存の石炭火力発電所を継続して稼働させる以上に安価に提供できる場合もある。世界の膨大なエネルギー需要を満たすにはまだ長い道のりであるが、バッテリーなどのストレージ技術のコストが急落しているのは幸先の良い傾向である。

 

また、地球規模の温暖化の影響が経済を破綻させるため、投資に失敗すればその損失ははるかに大きいことを多くの大企業が認識している。環境汚染の最大の原因となるセメント鉄鋼といった業界でさえ、環境に優しくなろうという兆しが見られる。

 

ビルはCO2の大きな排出源となるが、問題解決(エネルギー効率の改善)の実現は簡単であり、特にヒートポンプなどのテクノロジーの導入コストが下がると予想されるため、使用者のコスト節約が可能になる。

 

森林破壊を止めるのにテクノロジーが必要だということはないが、政府の行動は必要だ。各国の進捗は芳しくなく、ボルソナーロ大統領政権下のブラジルでは後退しているものの、インドネシアなどの国々では規制措置が取られ、効果を発揮している。森林を保護して回復させる、特に先住民に権限を提供することは効果の高い方法である。

 

地球規模の温暖化が進む要因は食料と農業であるという認識は強く、代替肉リジェネラティブ農業といった解決策が拡大し始めている。化石燃料と同様に、ためにならない巨額な補助金を終わらせることも鍵となるが、ここにも一筋の希望が見える。

 

気候危機では解決に向けたあらゆる課程が重要であり、あらゆる行動が人々の苦しみを軽減する。あらゆる行動が、世界をよりクリーンでより住みやすい場所にする。年間数百万人もの命を奪う大気汚染を低減することも一例である。

 

グリーンへの移行(Green Transition)の真の原動力は、最も有益だが目に見えない価値でもある、政治的意志とスキルの組み合わせである。若者によるストライキが最高経営責任者に行動を働きかけることで企業からの支出は増加しているが、化石燃料、航空、畜産業などの強力な既得権益に立ち向かうためにこうした支出が使われるべきである。サステナブルな低炭素の未来をめぐる競争は始まっており、グラスゴーで開催されるCOP26気候変動会議では、どれだけ早く進めなければならないかが明らかになるだろう。

交通

世界の温室効果ガス排出量の14~28%を占めている交通関連では脱炭素化に時間がかかり、長距離飛行などの分野では特有の課題に直面している。

 

しかし、政治的意志や公共政策、それに伴う支出があれば、テクノロジーによる解決策が利用できる。EVを考えれば明らかだ。ガソリン車とディーゼル車は、10年以内にヨーロッパでほとんど生産されなくなるだろう。EVの販売はどの国でも拡大し、ノルウェーなどではすでに転換点を迎えており、中国製の手頃な価格のEVによってバスからの排ガスを軽減している。一方、内燃エンジン自動車の燃費もこれまで以上に良くなり、汚染が少なくなっている。

 

世界中の都市で電動マイクロモビリティの採用が進むにつれて、自転車やスクーターを導入する政策が急速に普及している。国際貨物用には、はるかにクリーンな船舶が稼働している。水素エンジン実現の可能性が高まっており、これ以上の電化が非現実的であり、これまで以上にクリーンな電車に船も追随し、将来的には飛行機さえも追随することになるだろう。メーカーは、短距離の電気航空機がもっと早く実現することを期待している。そして何よりも、必要以上に移動しなくても世界を動かすことが可能であることを、パンデミックが証明しており、多くの人々が通勤や移動の少ない生活を受け入れるか、もしくは歓迎さえしているのである。By Gwyn Topham

森林破壊

森林破壊と土地利用の変化は、人為的な温室効果ガス排出の2番目に大きな原因である。世界の森林破壊は、パンデミックの間も絶え間なく続いており、ブラジルのアマゾンでは土地の開墾により、数百万ヘクタールが失われている。

 

しかし、希望を持てる理由がある。イギリスは自然を中核に据える人物をCOP26議長に任命し、イギリス政府は舞台裏で、世界の残りの炭素バンクを守るために森林保有国からの資金調達と新たな取り組みを強く求めている。かつては世界的な森林破壊のホットスポットだったインドネシアとマレーシアは、パーム油のプランテーションに対する規制を強化した結果、森林破壊が近年大幅に減少している。しかし、ブラジルの2000年代の大豆モラトリアム(アマゾン地域の森林を切り開いた土地で生産された大豆の取引・貿易を行わないようにすること)を見ると、こうした傾向は後戻りする可能性があることがわかる。最後に、世界の森林と生物多様性を保護する上で先住民コミュニティの重要性に対する認識が高まっている。人種差別や暴力の標的となる先住民に関する研究や報告が増えており、それによると先住民は森の最高の守護者であることがわかる。こうしたコミュニティに権限を与えることは、森林破壊を終わらせるために不可欠だ。By Patrick Greenfield

テクノロジー

発電所による直接排出のほか、電力使用や、製造などの工場稼働による排出を含む、テクノロジー企業からのCO2排出は世界の排出量の0.3%を占めている。近年、暗号通貨業界によるCO2排出が新たに大きな問題となっている。

 

マイニング(複雑な一連のアルゴリズムを解決するコンピューターにビットコインが授与されるプロセス)はエネルギーを大量に消費するプロセスであり、アルゴリズムが複雑になるにつれてエネルギーの消費量も大量になる。しかし、新しいマイニング方法は環境的にも負担が少ない。「プルーフオブステーク(Proof of Stake)」というシステムは、CO2排出量が99%少なくなっている。

 

2019年には気候変動対策を求めるデモ行進にも参加した数百人のテックワーカーの主導により、この部門全体での監視が強化されている。企業側は行動を改善することを約束している。Amazonは、2040年までにカーボンネットゼロ、2025年までに100%再生可能エネルギーの利用を目指す。Facebookは2030年までにサプライチェーン全体のCO2排出量ネットゼロを目標としており、Microsoftは2030年までにカーボンネガティブの実現を約束している。Appleは2030年までにサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの実現を約束している。

 

まだ実現のレベルには達していないが、各企業の従業員たちは目下邁進中である。By Kari Paul

ビジネス

この数十年、Exxon Mobilという企業は間違いなく米国最大の気候変動否定論者だった。しかし今年、影響力の大きい株主の投資会社Engine No 1からExxon Mobilの取締役に3人就任した。同取締役会では、気候危機を認識して立ち向かうことをExxon Mobilに強く求める議事が提出されている。

 

米国の企業全体、さらには世界中で変化の兆しがある。世界で最も強力な中央銀行である連邦準備銀行は、気候変動対策チームを強化している。世界最大の投資会社であるBlackRockは、同社の環境のサステナビリティを中核となる目標に掲げている

 

これはもはやイデオロギーではなく、「常識」である。BlackRockによると、気候変動への取り組みの失敗は単純にビジネスに悪影響を及ぼす。同社の計算では、何もしなければ、米国企業の58%が2060年から2080年までに経済の衰退に苦しむとのことだ。

 

今以上に多くの取り組みを行う必要があるが、政府が行動しない中で米国企業がこの危機を本当に乗り越えられるのかという疑問の声もある。しかし、否定の時代は終わり、今重要なのは行動することなのだ。By Dom Rushe

電気

世界中のガス価格の急騰が世界経済を襲っている。閉鎖を余儀なくされる工場が増え、中国では停電に見舞われ、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)のパンデミックからの世界経済の回復を脅かしている。

 

しかし、ガス価格の急騰が同じく浮き彫りにしているのが、政府が自家発電による低炭素電力システムを開発するためにより一層努力を求められるという明確な経済的事例である。

 

幸いなことに、世界中の電力システムで再生可能エネルギーが増大してより大きな役割を果たす体制が整えられている。

 

風力エネルギーや太陽エネルギーの急激な価格下落が追い風となって、同じくコストが急落しているEVやバッテリーなどのエネルギー貯蔵技術への新たな投資を奨励しようという動きが進んでいる。まもなく、風力発電や太陽光発電はグリーン水素を生成できるようになるだろう。グリーン水素は長期間の保存が可能で、日照の少ない日や風の強くない日にも発電することができる。

 

こうした進歩はすべて、安価な再生可能エネルギーによって可能になり、各国の再生可能エネルギー使用への依存度を増すことにもつながるだろう。ガスの使用をやめてグリーンエネルギーに移行するのに、今より格好の時期はない。By Jillian Ambrose

建物

ビル街などの環境は最大級の汚染要因であり、世界のCO2排出量の約40%を占めている。

関連記事:The case for … never demolishing another building

 

この20年間で「稼働中」のビルのCO2排出量は、省エネ技術(断熱性の向上、三重ガラス、ソーラーパネルや地中熱ヒートポンプなどのオンサイト再生可能エネルギー)によって大幅に削減されている。ヒートポンプに関して、イギリスは大幅に遅れている。たとえばノルウェーでは、種々の助成金と高い電気料金が引き金となり、ヒートポンプの設置台数は1,000世帯中600台以上にのぼっている。

 

各国のエネルギーグリッドの脱炭素化が進むにつれて、ビルが使用されている間のCO2排出量の中で、最大4分の3を占める可能性がある建築資材の「建設に伴うエネルギー(Embodied Energy)」が、削減へとシフトしている。たとえば、木材を優先して使用しコンクリートと鉄鋼の使用量を減らすことなどが挙げられる。

 

最もサステナブルなビルは既存のビルであるという認識に後押しされて、解体ではなく改修や再利用を優先する動きも増えてきている。By Oliver Wainwright

食料、農業

世界の畜産業が占めるCO2排出は著しく、年間の温室効果ガス総排出量の約14%にもなる。各国政府はこの事実への認識を深め、対応する動きを見せている。

 

ニュージーランドは現在、農業で排出されるメタンの量を2030年までに10%削減するという法的責任を負っているが、デンマークでは、農業部門からの温室効果ガス排出量を2030年までに55%削減するという法的拘束力のある目標が法案通過している。

 

世界的に食肉の生産が増加している一方で、赤身肉よりもCO2排出量が比較的少ない魚や鶏肉へのシフトが進んでいる。また、食品業界では大豆やエンドウ豆などの植物由来のタンパク質、および昆虫や実験室で育てられた代替肉を使用して、様々な低炭素製品を開発している。By Tom Levitt

製造

現代経済に必要な製品の製造をすべて脱炭素化することは、様々なプロセスが必要となる途方もないタスクだ。部門によっては順調に進んでいるところもある。たとえば、世界第3位の携帯電話メーカーであるAppleは、2030年までにサプライチェーン全体でのカーボンネットゼロによる生産を約束している。

 

他の大多数の企業にとって、工場や自社製品の効率化向上は、まだ初期段階にある機械学習などの人工知能技術によって実現に近づいている。Volvoが自動車に使用する鋼材の加工に石炭ではなく水素を燃料として使う計画を立てるなど、脱炭素化が最も困難といわれる分野にも、希望を抱ける兆候が見られる。

 

楽観視できる最大の理由の一つに、メーカーがサーキュラーデザイン(廃棄物という概念をなくすような製品・サービスづくり)の原則に対する意識を高めていることがある。初めからリサイクルを考えて製造することで、新たな資源の採取によるCO2排出量を削減することができる。ただし、排出量を削減する最も明白な方法は消費量を削減することなのだが、豊かな社会が消費量を削減できるかどうかについては、大いに疑問に思うところである。By Jasper Jolly

 

この記事はThe Guardianの環境エディターDamian CarringtonおよびGuardianレポーターが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願い致します。

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