2021年から2022年にかけての主要ビジネステクノロジーのトレンド

2022/01/14 Sai Kit Chu

2021年から2022年にかけての主要ビジネステクノロジーのトレンド

Toshiba Clip編集部からのコメント

2020年と2021年の2年間は、コロナ禍によって大きく変わったことがいくつもありました。リモートワークの可能性は大きく広がり、今後当たり前の働き方になっていくのかも知れません。そして、2022年はどんな新しい波がビジネスの形を変えていくのでしょうか。本格的に普及期を迎えるだろうブロックチェーンや5G、AIの活用、そしてプライバシー保護、データ規制、サイバーセキュリティなど、ビジネスに関わる注目のテクノロジーとそのトレンドを紹介します。最新状況の把握は、企業活動について考える上で参考になると思います。 

 

年越しが迫る今、ビジネスの世界は大きな変化を遂げようとしている。5GやIoT、あるいはブロックチェーンといった新しいテクノロジーのトレンドにより、企業では世界レベルでデジタル革命が起こっている。この記事では、2022年以降に注目すべきテクノロジーの最新トレンドについて説明する。

2022年、企業向けの主要テクノロジートレンド
2022年に情報セキュリティマネジメントシステムのISO27002が改正予定

ISO 27001 Compliance: What you need to know

2022年に、ISO 27002補足規格(ISO 27002:2022)が改正予定だ。ISO 27002は、ISO 27001の附属書Aに記載されている随意的セキュリティ管理策を実践するためのリファレンスガイドである。ここに記載されている管理策をもとに、企業は規格に準拠する情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS: information security management system)を構築できる。

 

変更案の例

 

今回の改正内容はISO 27001:2013の枠組みにすぐに影響するものではないが、特にクラウドセキュリティなどの最新のデータセキュリティ慣行に関連する新たな内容も追加される予定であり、2022年にISO/IEC 27001認証取得を目指す企業にとって、分かりやすい内容となるだろう。

5GおよびIoT

The impact of IoT on security in the workplace

 

ソフトウェア定義ネットワーク(SDN: software-defined networking)の主なコンセプトは、無線ネットワークのインフラを高価で閉鎖的なハードウェアから切り離し、汎用ハードウェアで実行されるインテリジェントなソフトウェアレイヤーに移行することであるが、5Gの将来はこのSDNにかかっている。

Tom Canning、NetworkComputing.com

次世代のモバイル通信を具現化しているのが5Gネットワークだ。その速度の向上だけでも革命と言える。5Gは入力などのコマンドへの応答時間が約1ミリ秒であるが、4Gでは最大で200ミリ秒かかる。

 

5Gネットワークがもたらす効率の向上は、IoT(インターネット接続しているモノ)に依存する企業にとってメリットとなる。たとえば、自動運転車両での道順の案内や交通状況の把握にはIoTデバイスが欠かせない。不動産管理会社やリース会社はIoTデバイスを使用して、インターネット接続された空調インフラや、自動ドアロック、自動温度調節、煙探知器などを利用する、さらにスマートな建物を構築、保守している。

 

5Gネットワークへの投資やビジネスでのIoT利用の拡大は、企業のCO2排出量の削減にもつながる。ビジネスが環境や気候に与える悪影響を減らす目的で実施している慣行や技術が、現在では、かつてないほどに企業の評判を左右している。

 

Jens Malmodin氏とPernilla Bergmark氏がAtlantis Pressに発表した記事によると、5GやIoTなどのデジタルテクノロジーを使用することで、企業は2030年までにCO2排出量を最大15%削減できると記されている。

人工知能(AI)

AIがスマートフォンや、AppleのSiriおよびGoogleアシスタントといった様々なアプリに搭載されるようになり、今では私たちの日常生活に欠かせないものとなっている。McKinseyは、2024年までに人とコンピュータとの対話の50%以上が、AIが生成する音声になると予測している。

 

AIがあることで、スマートフォンで距離を測定し、家具を居間のどこに配置するか、またその家具がどう見えるのかをシミュレートできる。音声認識と物体認識はどちらもAIの持つ機能だが、今やタブレットやスマートフォンには当たり前に搭載されており、これらが消費者の関心を誘い、売り上げに貢献している。

 

また、AIが企業に採用されることで、効率向上やコスト削減につながり、プロセス自動化の助けとなる。AI採用の増加が見込まれる業界を以下に挙げる。

 

マーケティング

AIは、広告主がオンライン広告のターゲットを分類し、製品を購入する可能性が最も高いユーザー層のターゲティングに利用される。検索や閲覧の履歴など、ユーザーのオンライン上の行動を捕捉することで、AIはマーケティング会社のターゲットに対して最も関連性が高く効果的なオンライン広告を設定できる。

 

eコマース

eコマースとオンラインショッピングでは、オンラインチャットボット、最適な製品の推薦、高度な在庫管理など、様々な形のAI活用が考えられる。

 

営業

営業は人柄に頼るところが大きく、今後も人間にしか担えない職種であり続けるのは確かだが、営業チームはAIによって予測を改善し、市場動向を読み、顧客とのコミュニケーションを改善することができる。高度なCRM(Customer Relationship Management)ソフトウェアを使用すれば、フォローアップすべき顧客のリマインドを営業担当者に送ったり、成約できる可能性が最も高い見込み顧客を特定したりできる。

 

研究開発

AIがデータや情報を収集、並べ替え、分析する方法は、人間の能力を超えている。強力な処理能力を備えたAIは、ヘルスケア、自動車、ウェブ開発、および金融業界の研究開発で多用されている。

 

製造

機械の果たす役割が高い状態が長く続いてきた製造会社が、人工知能を大歓迎するのは当然のことだ。AIによって需要増加の予測や、ロボットのプロセス自動化で生産量増加が可能になるため、AIは効率向上のために製造サイクルのすべての段階で広く利用されている。

 

総体的に見て、ビジネスでのAIが果たす役割は拡大し続けている。Harvard Business Reviewが2020年に実施した調査によると、調査対象52社のうち86%が、2021年以降にAIが自社の「主流のテクノロジー」になっていくだろうと答えている。

広告主のためのプライバシーとデータ規制

Lawyer hand pointing at paper on a desk

多くの技術的進歩がビジネスの改善につながるのとは裏腹に、広告主に課せられるプライバシーとデータの規制は、オンライン広告を配信する方法を制限するため、顧客のデータに大きく依存している広告主にとっては問題となる。

 

具体的には、現地のプライバシー法を拡大解釈したアドテックの規格により、ユーザーをターゲティングする際の第三者データの使用方法が制限されている。

 

アドテックに流入するデータの量と種類を制限することを目的とした政策の策定が、米国や他の国々で進められている。つまり、広告主が広告キャンペーンを開発、実施する際に使用できるデータが少なくなる。2023年1月1日に発効するカリフォルニア州のプライバシー権法(The California Privacy Rights Act)は、州レベルでのデータ制限を公式に実施した初の法律となる。

 

2021年春、Appleはユーザーのプライバシーを保護するリーダーとしての地位を業界で確立した。iOS 14.5のリリースから、アプリ開発者はユーザーに対し、アプリによるユーザーの行動やデータの追跡を可能にする前に、同意するか拒否するか選択できるようにしなければならなくなった。データを追跡する前に同意を求めることで、ユーザーはデータの収集とその使用方法をより細かく制御できるようになる。

 

2020年1月、Googleは広く利用されているウェブブラウザであるGoogle Chromeに対するCookieのサポートを2022年までに完全終了すると発表した。Cookieとは、ウェブサイトにアクセスした際の情報を収集、保持するために利用するものである。Cookieを利用することで、たとえばログイン情報が記憶されてユーザーのアクセスがよりシームレスになる。

 

ただしCookieは、ユーザーが直接操作したウェブサイト以外のウェブサイトによって構成される。広告主はCookieを利用して、ウェブサイトでのユーザーの行動を追跡することでユーザーの興味を知ることができる。たとえば、ユーザーが靴の洗い方に関するサイトにアクセスした場合に、他のウェブサイトで新しい靴の広告が表示される、といったことが考えられる。

ハイブリッド型勤務が新しい規範に

新型コロナウイルス感染症が大流行していた中、従業員は自宅で勤務し、居間に仕事用スペースを確保し、自分のノートPCからオンライン会議に参加することに慣れてきた。在宅勤務に利点があることは明らかである。従業員は通勤にかかる時間を節約でき、企業は従来のオフィススペースにかかる諸経費を節約できる。

 

従業員や企業がそれぞれパンデミックで享受した多くのメリットを考えると、企業からすれば、パンデミックが落ち着いたとしても従来のオフィス環境に戻るのは難しいことは一目瞭然だ。

 

とはいえ、私たち全員が完全リモートワークに移行する準備ができているわけではない。

 

対面でのやり取り、共同作業や会議を行いたいという要望は高まっているが、従業員はまだリモートワークをあきらめる心構えができているわけではない。リモートワーカーのほぼ3分の1(30%)が、自分の会社が現在のリモートワークの方針を撤廃した場合、他の仕事を探すことを検討すると答えている。

 

そこで登場するのがハイブリッド型勤務。2022年以降、在宅勤務がより柔軟にできるようになるとともに、オフィス内作業の時間にインセンティブを設けて共同作業を促進するような企業の形を期待できる。

 

共同作業およびコミュニケーションアプリ

ZoomやMicrosoft Teamsなどのアプリは、企業の在宅勤務の採用が増えるに従って日常的に利用されることが大幅に増え、Zoomについては利用量が前年比で151%増加している。企業はこうしたアプリを利用して、共同作業用のオフィス環境のシミュレーションや、リモートワーカーのコラボレーションの能率向上を図っている。

 

これらの新しいテクノロジーを取り入れることで、在宅勤務の従業員は業務効率を向上できるようになってきている。

 

在宅勤務におけるサイバーセキュリティのリスク

リモートワーカーが都市、州、さらには国をまたいで点在するようになる中、ITプロフェッショナルは、顧客に対して適切にサービスを提供するため、サービスやテクノロジーを調整しなければならない。IT業界がリモートワークチームを管理する際に直面する課題として、デバイスを最新の状態に維持すること、デバイスの安全性を確保すること、および問題を迅速に解決することが難しいことが挙げられる。これらの課題が目前にあるため、IT業界では、VPNサービスの採用や、機器のトラブルシューティングのためのリモートサービスとリアルタイム監視に大きく舵を切っている。

 

プロダクティビティ ソフトウェア

How to Know if Remote Employees are Working

従業員の在宅勤務の許可を検討する上での最大の抑止力であると企業が長い間考えてきたことの1つに、生産性の低下が挙げられる。家事からテレビやビデオゲームなど、家にいると業務の妨げになるものがたくさんある。また、業務をしっかりと監督する目がなければ、在宅勤務中に効率よく業務している従業員は誰なのかを判断することは難しい。

 

現在、プロダクティビティソフトウェアやコンピュータ追跡ソフトウェアを新たに導入する事業主が増えてきており、在宅勤務の特権とばかりに業務以外のことばかりしている従業員を特定すると同時に、責任以上の業務を果たしている従業員についても認識できるようになってきている。このテクノロジーを導入することで、企業は生産性の高い従業員とそうでない者を判別できる。

サイバーセキュリティ

security

マルウェアやフィッシング、DoS(Denial of Service attack)攻撃がますます一般的になり、世界中で種々のランサムウェア攻撃が2秒に1回発生している。サイバーセキュリティに対する脅威が増大する中、企業はネットワークや企業データの保護に多額の投資をしている。こうした攻撃の被害にあった企業が受ける影響は大きく、データ侵害によって企業が被る損害額は平均424万米ドルにもなる。サイバー攻撃を防ぐために、企業は経済的な大損失や評価の急落を回避する革新的なテクノロジーを模索している。

 

2022年はパスワード終焉の年となるのか

サイバー攻撃を防ぐ手段として、多要素認証(MFA: Multi-Factor Authentication)がテクノロジー業界全体に広まっている。MFA技術の有効性を唱える論文は多く、SMS MFAシステムはあらゆる自動攻撃を100%、フィッシング詐欺を96%、標的型攻撃を75%阻止できるとGoogleは主張している。また、MFAは簡単に利用できるため、従業員もすぐに適応できる。

 

とはいえ、SMSベースのMFAは減少傾向にある。残念ながら、SMSは実際にはセキュリティと認証を念頭に置いて設計されたものではなかった。携帯電話に送信されるメッセージは、SIMカードの交換やテキストメッセージの再ルーティングの際に傍受される可能性があり、攻撃者はこうしたMFA対策によって通常提供される追加のセキュリティ層を回避できてしまうのだ。

 

認証セキュリティが進化し続けるにつれて、パスワードによる認証が減少し、MFAの代替形式の導入が広まると予想される。YubiKeysなどの認証デバイスやFIDO2などの将来期待されるパスワードレス規格は、SMSベースのMFAやユーザーが生成するパスワードよりもセキュリティに優れているため、セキュリティを重視する先進的な企業は、パスワードでの認証セキュリティに頼らなくなっていくと考えられる。

 

企業が新たな多要素認証手段の発表を続ける中、MFAの市場規模は2021年の111億米ドルから、2026年までに236億米ドルに成長するだろうとReportLinkerは予測している。

ブロックチェーンテクノロジーと暗号通貨

Picture of a token representing a Bitcoin

暗号通貨やその管理に使われるブロックチェーンテクノロジーは、ビジネスの世界に大きな影響を与えることが期待されている。これらの言葉を聞いたことがある人は多いが、その意味や、これらの新しいテクノロジーの可能性を理解している人はほとんどいないだろう。主要企業でさえ、この新しいテクノロジーが自社のビジネスモデルやシステムに今後何年にもわたりどう適合していくのか、模索段階なのだ。

 

ブロックチェーンテクノロジーを至極単純な形で理解するならば、ピア・ツー・ピアネットワーク全体を管理する分散型元帳ということになる。この新しいテクノロジーシステムは、資金の移動、株取引の決済、投票のほか、プロセスを進展させる必要のある多くの問題に対して使用するアプリの開発に用いられる。

 

ブロックチェーンや暗号化テクノロジーが、グローバルなサプライチェーンシステム、金融機関、および一般的なビジネスに関連する企業にどのように影響するかを説明する。

 

ブロックチェーンの高い透明性を考えると、Deloitte社はサプライチェーン内にいる企業に対し、材料のトレーサビリティ、偽造品やグレーマーケット商品による損失の削減、外部委託製造に対する可視性とコンプライアンスの向上に対する見通しを高めることができると考えている。つまり、ブロックチェーンテクノロジーによってサプライチェーンビジネスは責任ある製造を率いる存在としての位置を確立することができ、ビジネスの効率向上につながるということだ。

 

ブロックチェーンの利用法の幅広さを踏まえて、金融業界の企業もこのテクノロジーの可能性を熱心に追求している。実際、米国やヨーロッパの銀行の90%はこの新しいテクノロジーの可能性を模索し始め、このテクノロジーが業務や顧客体験にプラスになる方法を追求している。ブロックチェーンテクノロジーが銀行などの金融機関に与えるメリットとしては、即時決済、取引先リスクの軽減、透明性の向上などがある。

 

暗号通貨はブロックチェーン上に構築されたプロトコルであり、暗号化により保護された仮想通貨の形をとるように開発されているため、偽造はほぼ不可能だ。世界初の暗号通貨であるとされるビットコインは、今でも世界で最も価値が高く、最も有名な仮想通貨である。実際、2021年9月にエルサルバドルはビットコインを公式通貨として認めることを決め、世界で初めて暗号通貨を法定通貨として採用した国となった。同国の企業は現在、支払い方法の1つとしてビットコインを許可することが法律で義務付けられている。

 

ビットコインの採用は、送金手数料で収益を得ているWestern Unionなどの企業にとっては悪影響となっている。エルサルバドルの国内総生産の23%が送金によるものであるため、Western Unionや同様のビジネスモデルを用いる企業は、送金手数料による収益を年間で推定4億ドル失うことになる。ビットコインを使う際は第三者への手数料は発生せず、取引あたりの平均コストはWestern Unionやその競合他社と比較してはるかに低く抑えられる。

 

エルサルバドル以外では、OverstockやPayPalといった主要企業や、さらにはDallas Mavericksといったプロスポーツチームまでが、商品やサービスの支払い方法としてビットコインを受け入れている。Dallas Mavericksは現在、ビットコインをチケットやチームグッズなどの支払い方法として認めており、スポーツビジネス全体での暗号通貨の利用は今後さらに普及するだろう。2021年9月、NFL(National Football League)は非代替性トークン(NFT: non-fungible token)によるDapper Labs社との提携を発表し、暗号通貨で購入できる専用のデジタルビデオハイライトを制作する。

ビジネスに影響するテクノロジートレンドは業界によって様々

Cloud storage server

事業主や企業の経営陣は、組織の効率向上と収益の最大化を実現する革新的なテクノロジーに常に目を光らせている。会社が身を置く業界によって違いはあるものの、新しいテクノロジーの開発と採用は、最先端のビジネスを維持するために欠かせない重要なステップである。

 

オンラインショップで暗号通貨を決済方法として導入を検討している場合でも、会計事務所で高度なサイバーセキュリティシステムを必要としている場合でも、業務の最適化に必要なソリューションをもたらす新しいテクノロジートレンドが2022年に現れるだろう。新しいテクノロジーがすべて利用できるとなると、意思決定が困難になるかもしれない。だからといって、このパーティーに最後まで参加しないわけにはいかない。競合他社とともに参加しなければ、確実に出遅れてしまうだろう。

 

この記事の初掲載先はCurrentWareです。

 

この記事はBusiness2Community のSai Kit Chuが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願い致します。

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