新しい半導体ビジネスが 日本の製造業の未来を拓く

2016/12/07 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 産業機器や自動車向け半導体のファウンダリの需要が増加
  • 株式会社ジャパンセミコンダクター誕生
  • 日本の高い品質の半導体を世界に発信する
新しい半導体ビジネスが 日本の製造業の未来を拓く

半導体業界は応用分野の広がりとともに自ら業界構造を変化させながら、社会の発展を支えている。
かつて大手半導体メーカー各社は、半導体製品の設計から製造、販売まで一貫して行い拡大する一方の需要に対応してきた。

 

しかし、技術の高度化が進むにつれてより得意とする技術に特化するプレーヤーが台頭し分業化が進んだ。
製品開発に特化し、製造を社外にアウトソースする工場(Fab)を持たない(Less)、「ファブレス」と呼ばれる企業形態が増加し、また、そうしたファブレス企業からの発注を受け、半導体の製造に特化する「ファウンダリ」と呼ばれる企業形態も増えている

 

特に設計技術と製造技術が共に高度な先端SoC(System on Chip)でこの「ファブレス・ファウンダリモデル」による分業が拡がっていった。

 

近年、このファウンダリの需要が増加し、世界の半導体市場に占めるファウンダリの割合は、10%を超えて拡大。産業機器や自動車に使われる半導体でも、今後さらに拡大する可能性が高くなっている

半導体分野全体と車載向け市場における市場規模とファウンダリ売上比率の推移

半導体分野全体と車載向け市場における市場規模とファウンダリ売上比率の推移
出典:IHS Technology, Japan

日本の品質を世界に発信する、ジャパンセミコンダクター誕生

そうしたトレンドに沿うように、今春、東芝はファウンダリ事業も手掛ける新会社として、株式会社ジャパンセミコンダクターを設立した

東芝はファウンダリ事業も手掛ける新会社として、株式会社ジャパンセミコンダクターを設立した

ジャパンセミコンダクターは、旧「東芝大分工場」と旧「岩手東芝エレクトロニクス」を統合して2016年4月に発足したばかりの新会社だ。
両拠点での40年以上にわたる車載アナログ製品の製造経験(通算20億個以上)とノウハウを強みとし、ファウンダリ市場に食い込もうとしている。

ジャパンセミコンダクターの沿革

ジャパンセミコンダクターが得意とするのは、主に車載や産業向けのアナログ半導体の生産だ。
自社内で設計から製造までを完結する場合と異なり、ファウンダリの場合は、顧客のニーズを細やかにくみ取った提案が今まで以上に必要とされる。
例えば、少量多品種に応じた生産対応と、迅速な試作開発サポート。ビジネスの動きが早いベンチャー企業や、製品の試作を次々行いたい客先のニーズに応えるため、24時間稼働する解析センターなどを活用し、リードタイムを競合他社の約半分に縮める。

 

ただ、海外の顧客から見た時に、日本の技術力は魅力だが、地震が多いというイメージが二の足を踏ませそうになる。
だが、同社は岩手県と大分県の2拠点にFabを保有。大規模災害などに備えて、両拠点で並行生産可能な体制(Dual-Fab)構築を進めている。

 

「さらに、地震の初動波であるP波を検知すると、直ちに装置への薬品・ガス供給を自動で遮断し、装置が安定した状態で安全に停止する仕組みも導入。さまざまな工夫で、大地震後も短時間に生産を再開できる体制としています」
そう自信を持って語るのは、同社の森重哉社長。
東芝の確固たる技術力をバックボーンに、小ロットでの迅速な生産を実現するジャパンセミコンダクターへの視線は熱い。

半導体産業をけん引するリーディング・カンパニーを目指して

BCP対策に加え、ジャパンセミコンダクターが大切にしているのは「お客様のニーズに応える」ビジネスモデルだ。
ジャパンセミコンダクターでは、顧客のニーズに合わせて、プロセスチューニングやポーティングと呼ばれる対応を行っている。
今まで、受託側が保有する設計プロセスに従って、顧客側が新たな設計図を作り直したり、受託製造の一連の流れに沿って設計を指示する必要があったが、長年の製造経験を継承したジャパンセミコンダクターでは、顧客の設計仕様に製造プロセスを合わせて製造することができる。
顧客により早く、より簡単な開発・設計を可能にさせる同社は、市場のニーズに沿った半導体マーケットの広がりを助け、半導体ベンチャー企業などの勢いをさらに加速させるだろう。

 

今後、新興国の中間所得層拡大と、IoTの世界的な普及に合わせて、同社が強みを持つ車載・産業分野の活性化が見込まれている。

電子機器生産金額および生産シェア

出典:IHS Technology, Japan

グローバル展開を視野に、今後いっそう多様化、細分化していくであろうニーズに応えていくことは、日本の製造業のクオリティを、あらためて世界に発信することにもつながるだろう。
ジャパンセミコンダクターが、社名に「ジャパン」と冠しているのは、日本から世界の半導体産業をけん引しようという意気込みの表れである。

製品ポートフォリオ

製品ポートフォリオ

現状、ファウンダリ企業の多くは台湾や米国にあるが、お客様のニーズに最大限にお応えするきめ細かな小回りの利くサービスと信頼性、試作開発体制を強みとしたジャパンセミコンダクターの躍進が期待される。

関連サイト

※ 関連サイトには、(株)東芝以外の企業・団体が運営するウェブサイトへのリンクが含まれています。

株式会社ジャパンセミコンダクター

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