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モノづくり現場の「技」の伝承 若きホープと匠の絆


モノづくり現場の「技」の伝承 若きホープと匠の絆

この記事の要点は…

若手技能者が技能レベルを競う「技能五輪全国大会」が開催された

「俺の背中を見て学べ」は通用しない? 「技能」継承の難しさと課題

若手技能者が見据える、モノづくりの未来とは?

日本経済をけん引してきたモノづくり産業。日本のモノづくりを支えてきた「柱」の一つは、高い品質と信頼性を確保してきた製造現場の高い「技能」だ。特に長期間の使用と耐久性が求められる重電分野において、技能のレベルは製品の品質を大きく左右する。

しかし、今、モノづくりの現場を取り巻く環境は激しく変化している。経済のグローバル化に伴う生産拠点の海外移転によって、国内のモノづくり人材の不足が大きな問題として顕在化。さらに、少子高齢化によって、生産年齢人口も減少の一途をたどっている。豊富なノウハウを有する熟練技能者の「技」を、いかに若い世代に継承していくかが、モノづくりの現場では喫緊の課題なのだ。

モノづくりの現場の様子

2017年11月に技能五輪全国大会が開催された。これは、23歳以下の青年技能者が技能レベルの日本一を競う、年に一度の大会。「電気溶接」や「機械組立て」などの金属・機械系、「ウェブデザイン」などの情報通信系から、「フラワー装飾」、「洋菓子」などのサービス・ファッション系など、幅広い職種にわたって競技が行われる。

技能五輪全国大会に出場する選手と指導員の間では、どのように技能継承が行われているのか。今年度の大会に東芝から出場する代表選手の一人、江頭雄大選手と、彼の指導員で、東芝の技能五輪統括指導員を務める東芝総合人材開発(株)の三重(みしげ)修二氏に話を聞いた。

「技能」伝承と「技術」伝承はどう違う?

江頭選手が出場したのは、工作機械の代表格といわれる「旋盤」を使った種目。
「『旋盤』という種目は、高速で回転する鉄製の丸棒に刃物を押し当て、鉄の不要な部分を薄く削り取り、形状が複雑できれいなものを作っていく競技です。リンゴの皮むきをイメージしていただくと分かりやすいかもしれません」(江頭選手)

旋盤

旋盤は機械加工で最もよく使われる工作機械の一つ。技能者の技術によって、円柱型の金属材料が、美しい光沢のある高精度の部品に生まれ変わるところがこの競技の魅力である。一つの鉄の塊から、多種多様な形状が加工でき、技能を磨けば0.01mm以下の精密加工も実現できるという。弱冠20歳、入社3年目の江頭選手が見せる作業のスピードと繊細さは、見ている者を圧倒するほど。

こうした場で痛感するのが「技能」継承の難しさ。これはモノづくりにおける「技術」伝承とは大きく異なる。「技術」は属人的なノウハウを文字や数式などで形式知化しやすく、標準化や自動化など全体作業レベルを底上げするものだ。主にノウハウをマニュアル化したり、集合教育が行われたりすることで、「技術」は伝承される。

一方、「技能」は、人間が行う動作などの主観的かつ感覚的なもので、人間を介在することのみで継承されるもの。このような暗黙知は標準化が難しいため、「技能」においては伝承者と継承者とのマンツーマンによるOJT(On the Job Training)を通じて、熟練ノウハウが伝承されていく。

東芝総合人材開発(株)の三重修二氏

東芝総合人材開発(株)の三重修二氏

「私たちの世代は、『俺たちを見て技能を盗め』と先輩方に言われながら育ちました」と語る三重氏。先輩を見ながら、必死に自分のものにする従来の方法は、時代に伴い改められつつある。しかし、教育法の変化の理由はそれだけではない。江頭選手によると、現在、技能大会の様相が変わってきたというのだ。

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