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“20cmの挙動”を解析せよ! エレクトロスピニング技術の魅力


“20cmの挙動”を解析せよ! エレクトロスピニング技術の魅力

この記事の要点は…

どうやって、あれほどの極細なナノファイバーが形成されているのか?

ナノファイバー形成技術の一つ「エレクトロスピニング技術」の課題とは?

たった20cmの空間でナノファイバー化する溶液の動きに迫る!

10億分の1mのスケールで素材を制御するナノテクノロジー――サイズは極小でありながら、無限の可能性を秘める分野だ。中でも「ナノファイバー」は今、新聞などで目にする機会も多い言葉の一つである。だが、注目度に比してナノファイバーの世界は意外と知られていないのではないだろうか。

あれほどの極細な繊維をどのように作り出すのか――今回、東芝でナノファイバー形成技術の一つである「エレクトロスピニング技術(ES技術)」の開発を担当する植松育生氏に、自身の経験も交えつつ、ナノファイバーとES技術の基礎と魅力を教えてもらおう。

株式会社東芝 研究開発本部 生産技術センター 材料・デバイスプロセス技術研究部 植松育生氏

株式会社東芝 研究開発本部 生産技術センター 材料・デバイスプロセス技術研究部 植松育生氏

エレクトロスピニング技術とは?

ナノファイバーとは、一般的に太さが1nm~100nmの間で、長さが太さの100倍以上ある繊維状の物質を指す。繊維状にする材料はナイロンやセルロースなど様々だ。極細という特性が私たちの生活を根底で支えている。

ナノファイバー

ナノファイバー

分かりやすい使用例は空気清浄機や水処理施設などのフィルター。ナノレベルの繊維は空気や水の抵抗を受けにくいためフィルターに最適といえます。

それから二次電池も挙げられます。そもそも、私が正面からナノファイバーと向き合うようになったのは、SCiB™と呼ばれる東芝の二次電池事業の立上げに関わったことがきっかけ。そのときにナノファイバーをSCiB™に使用できないかと考えたのです。二次電池にはセパレータ(※)という材料が不可欠。セパレータを極薄のナノファイバー膜に置き換えられれば、容量などを高められるのです」(植松氏)
※セパレータとは、短絡を防ぐべく2つの電極間を絶縁する材料のこと。

セパレータを極薄のナノファイバー膜に置き換えることで、SCiB™の容量が高められる

セパレータを極薄のナノファイバー膜に置き換えることで、SCiB™の容量が高められる

そこで植松氏が目を付けたのがES技術だった。この技術の原理を植松氏に解説してもらおう。

「まず、ナノファイバー化したい材料を溶かした溶液が入った針状のノズルに高電圧を加えます。すると、ノズル中の溶液と塗布したい基材の間に電位差ができ、ノズルから基材へと力が働くため、溶液がノズルから基材に向かって引き出されます。放電の間に溶媒(※)が蒸発していくので、重量が減少し、次第に裾が広がって、ナノファイバーが基材上に形成されていくのです」(植松氏)
※物質を溶かして溶液を作る際に使う液体のこと。

高電圧をかけたノズルから溶液が引き出されてナノファイバーが形成される

高電圧をかけたノズルから溶液が引き出されてナノファイバーが形成される

従来のES技術の開発では、より均一でより細い繊維膜を作ろうとするのが主流。しかし、それらを必要以上に求めすぎるために生産コストがはね上がり、研究レベルでのES技術の開発は多くあれど、量産への適用例は少なかった。

そこで植松氏は発想を転換する。

「SCiB™への応用に向け、細さ、均一性を過度に追求しすぎず、量産に特化した高速形成技術を手に入れられないかと考えました。それは新たな研究領域であり、開発は生半可ではありません。しかし、成功するか分からない開発に上司は積極的に協力してくれましたし、SCiB™事業立ち上げで得た多くの仲間もいました。彼らはその後の開発において、苦楽を共にするチームに、そして開発を後押しする味方となっていったのです」(植松氏)

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