照明工場をまるごとショールームに! 「KANUMAあかり館」設立プロジェクト

2020/05/07 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 東芝ライテック・鹿沼工場内に「KANUMAあかり館」がオープン
  • 「魅せる工場」を実現するために、働く一人ひとりのモチベーションを重視
  • 鹿沼工場から日本のモノづくりの地位向上を目指す
照明工場をまるごとショールームに! 「KANUMAあかり館」設立プロジェクト

東芝ライテック・鹿沼工場の敷地内に昨年9月、『KANUMAあかり館』がオープンした。これは半世紀の歴史を持つ照明器具の生産拠点を、「魅せる工場」に一新しようというプロジェクトの一環だ。そこに込められた思い、そして狙いは何か?今回のプロジェクトに携わった3人の関係者に、苦労点や今後の展望について話を聞いた。

 

『KANUMAあかり館』が担うべき役割

 

最初にあったコンセプトは、鹿沼工場をまるごとショールームにしようというものでした。それに合わせて、展示スペースとしても機能する『KANUMAあかり館』の構想が生まれ、東芝創業者の一人、藤岡市助 氏の時代から現在に至るまでの照明の変遷や、東芝ライテックの歴史、そして最新の照明商品をまとめた展示スペースの設置など、次第に計画は具体化していきました」

 

そう語るのは、東芝ライテック株式会社 照明電材事業部の佐藤勇介氏だ。プロジェクトの立ち上がりは2019年の6月。それ以前から部門を超えて「魅せる工場」の構想や下準備が進んではいたが、 3カ月後には「KANUMAあかり館」のオープンに漕ぎ着けているのだから、並大抵のスピード感ではない。

 

東芝ライテック株式会社 照明電材事業部 事業企画部 事業企画担当 佐藤勇介氏

 

東芝ライテック株式会社 照明電材事業部 事業企画部 事業企画担当 佐藤勇介氏

 

「今回のプロジェクトでは、目的の一つに鹿沼工場で働くスタッフへのモチベーションの喚起があります。そのためには、ただ環境をきれいにするだけでなく、東芝が照明事業を通して社会に貢献してきた歴史をあらためて知ってもらうことが重要だと考えました。ただし、私自身こうした設備や展示関係のプロジェクトに携わるのが初めての経験だったので、まずは関連知識の習得と、社内でキーマンを探すことから始めなければなりませんでした」(佐藤氏)

 

限られたリソース、限られた時間の中で、デザインや施工のプランを具体的に詰め、さらに膨大な歴史資料を展示物にまとめる作業は、一筋縄ではいかなかったはずだ。それでも、佐藤氏自身が今回のプロジェクトに強く共感していたことが、大きな原動力になったという。

 

「『KANUMAあかり館』のエントランスに展示スペースを設けることは、対外的なアピールはもちろん、工場で働く皆さんが自社の製品に誇りを持ってもらうために必要なものでした。こうして歴史を“見える化”することで、初めて知る情報もきっと多いのではないでしょうか」

 

KANUMAあかり館の展示スペース

 

KANUMAあかり館の展示スペース

 

 

 

「魅せる工場」の条件は、工場で働く一人ひとりが輝いていること

 

「モチベーションの向上は、そのまま工場全体の生産性の向上に直結します。では、鹿沼工場で働く人材のモチベーションを上げるにはどうすればいいかと考えたところ、体制や労働環境の面での働き方改革はもちろん、働いている人が“自分の子どももここで働かせたい”と思えるかどうかが重要だと考えました」

 

そう語るのは、鹿沼工場 総務部の福島則男氏。福島氏は総務担当の立場で、以前から鹿沼工場で働く従業員の意識向上や、職場環境の改善に積極的に取り組んできた。

 

東芝ライテック株式会社 総務部 鹿沼総務担当 参与 福島則男氏

 

東芝ライテック株式会社 総務部 鹿沼総務担当 参与 福島則男氏

 

「魅せる工場」実現のために、福島氏は、思い描く理想の工場の姿を自らイラストに描き起こすなど、イメージを具体化していった。そこには建屋の外観から食堂で提供されるメニューまで、鹿沼工場のすべての人々が快適に働ける環境づくりを考えた跡が見て取れる。

 

福島氏の描いたKANUMAあかり館のラフイメージ

 

福島氏の描いたKANUMAあかり館のラフイメージ

 

そうした福島氏の熱い想いを実際に具体化させる役割を担ったのは、株式会社東芝 戦略デザイン部の若澤亮氏だ。若澤氏は完成した「KANUMAあかり館」の姿を目にした際、「正直、ここまで実現できるとは思っていなかった」と驚いたという。

 

「デザインの現場は、カラーリングや展示物などの装飾だけでなく、働く人の想いを実現するためのコンセプト作りが重要となります。働く人それぞれが望むプランやイメージをすべて実現するのは簡単なことではありません。それでも、私が提案したデザインのほぼすべてをこうして形にすることができたのは、工場の皆さんが一丸となって協力してくれたからだと思っています」

 

株式会社東芝 CPS×デザイン部 戦略デザイン部 カスタマータッチポイント担当 若澤 亮氏

 

株式会社東芝 CPS×デザイン部 戦略デザイン部
カスタマータッチポイント担当 若澤 亮氏

 

福島氏の「魅せる工場」をヒントに、若澤氏と鹿沼工場のメンバーが共同で、「あかりを魅せる、工場まるごとショールーム」のコンセプトを考案。その後、建屋の外観や展示物のデザイン、さらには工場内の表示パネルに至るまで、若澤氏がデザイナーとして多岐に渡り采配を振るった。そのどれもが、「あかりを魅せる、工場まるごとショールーム」というコンセプトに基づくアイデアだが、そこに至るまで、若澤氏は入念な現場へのヒアリングを実施したという。

 

「実際に鹿沼工場で働いている人々に対し、現状の不満点や今後望むこと、工場内でアピールしたいポイント、そしてそれぞれが今の仕事のどこに情熱を感じているのかなど、つぶさにアンケート調査を行うことから始めました」(若澤氏)

 

なぜ、そうした事前リサーチが必要だったのか。それは、「魅せる工場」を実現するために、何よりもそこで働くスタッフの一人ひとりに輝いてもらわなければならないからだと若澤氏は語る。

 

「こちらでイメージできるものだけでなく、働く人の思いや希望を明確にし、それをデザインして見せたいと考えました。視察にやって来るお客様にとっては、そこで人々がどう働いているかというのも関心のポイントであるはず。そのため、きれいに整頓され、安心と安全が守られた環境であることに加えて、意欲的に働く人々の姿を見せたいと考えました」

 

一方で、生産拠点の統合によって沼津工場からやってきたスタッフによって、鹿沼工場にどのような変化が起きるかは、現場にとって懸念材料でもあった。福島氏は次のように語る。

 

「やはりムードを作るのは人ですから、工場内の人的交流は大切です。しかし、他の工場から別の文化や知見を持つ人々がやってくることに、どのような影響があるのかは、まるで予想できません。鹿沼工場にはこのほか、パートや派遣のスタッフさん、さらには海外からの実習生も大勢います。そのため、働く人々が早く打ち解けられるよう手立てを考えるのは、総務の重要なミッションであると考えました。昨年、5年ぶりに秋祭りを再開したのも、そのための施策の一つです」

 

これも、現場の人々をより輝かせるアイデアの一環であり、「魅せる工場」を実現する上で欠かせない視点だった。

 

最新技術をアピールし、鹿沼からモノづくりの地位向上を

 

実際に鹿沼工場を訪ねてみると、ゲートをくぐり抜けてすぐに、『KANUMAあかり館』の建屋が見えてくる。真新しい館内のエントランスには、東芝の歴史や過去の照明製品などの資料が展示され、「あかり」で過去から未来を繋いできた様子がうかがえる。

 

「このプロジェクトで最も苦労したポイントの一つは、年表などの展示資料づくりです。ただ、私自身この作業を通して東芝の照明事業における長い歴史を知り、『良い会社に良い歴史あり』と、東芝の魅力を再認識することができました。また、ヒアリングによって、関係者それぞれがどんな職場にしたいのかというイメージを具体的に持っていることがわかったのも良かったです。鹿沼工場の方々を中心に、資料探しからヒアリングまで、積極的に協力してくれました」(若澤氏)

 

工場入口では、周囲に新たに人工芝を設置した藤岡市助氏の銅像が、従業員や見学者が暖かく迎えてくれる。また、わかりやすくカラーリングされた歩道が、見学者の安全確保を担い、照明工場らしい大規模なLEDパネルやライトアップされた木々が、日没後の工場を彩っている。

 

鹿沼工場敷地内の様子

 

鹿沼工場敷地内の様子

 

LED商品などの製造を行う建屋では、工場や商業施設の重要なインフラとなりそうな、「ViewLED」のデモンストレーションも行われていた。これは照明にカメラを搭載したスマート製品で、目的とする範囲の映像を記録するもの。将来的にはAIとの連携で、蓄積した録画データの画像解析から、工場内の動線(生産における人やモノの動き)の効率化にも貢献するはずだ。

 

現実世界のデータをサイバー空間で分析し、活用しやすい情報や知識として現実世界にフィードバックすることで価値を創造する、CPS(サイバーフィジカルシステム)において、「ViewLED」は、重要なカギを握る製品と言える。また、従来の防犯カメラのような圧迫感を与えない点も、そこで働く人々にとっては大切なポイントだろう。

 

「ただ見た目がきれいなだけでなく、東芝ライテックが誇る最新技術を体験できるのが、現在の鹿沼工場の特長です。訪れた人々がその技術に驚き、関心を寄せることが、鹿沼工場全体のモチベーションに繋がるはずですし、それは必ず生産性の向上にも結びつくでしょう」(福島氏)

 

福島氏によれば、リニューアル後の見学者の反応は上々で、実際の輝度(明るさの度合い)でも雰囲気でも「以前より明るくなりましたね」と声をかけられることがしばしばあるという。

 

しかし、これで終わりではない。前出の佐藤氏は鹿沼工場へのさらなる期待を、次のように表現する。

 

「東芝が誇る技術を効果的にアピールすることで、あらためて日本のモノづくりの地位向上に繋げられるのではないかと思っています。そのために、デザインや演出の面だけでなく、工程のさらなる自動化など、まだまだやれることはたくさんあると思っています。東芝グループが掲げる価値観には、『ともに生み出す』という言葉がありますが、今回のプロジェクトはまさに、立ち上げから多くのキーマンの力を借りて実現したもの。今後も照明事業を通して、新しい価値を生み出す拠点にしていくために、ともに努力していきたいです」

 

世界有数のCPSテクノロジー企業を目指す東芝グループ全体において、鹿沼工場は今後も、いっそうの存在感を発揮していくに違いない。

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