アイデア創出でつながる若手 パッションが生み出す技術コラボ

2018/10/17 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 東芝の人材育成・交流活動の新しい取り組み「技術コラボ」とは?
  • 技術のコラボレーションでアイデア製品を創出
  • 部門を越えてやる気と熱量を持った若手が全力で楽しむ
アイデア創出でつながる若手 パッションが生み出す技術コラボ

ビジネスモデルや働く環境の変化に伴い重要性が増し、各企業が力を入れる人材育成。
新人教育に始まり、職種で分かれた専門教育、事業部や年次ごとの教育、社外研修など、育成のプログラムは多岐にわたる。

 

若手の人材育成のひとつの取り組みとして、東芝に今までになかった新しい活動が広がっている。小向事業所(神奈川県川崎市)独自で行われている「技術コラボ」だ。社内を横断して若手を中心とした従業員がチームを組み、多様な視点と技術のコラボレーションからアイデア製品を考え、発表する。2015年の「技術コラボ」で出たアイデア製品のひとつのコンセプトがもととなり、2016年には東芝初のクラウドファンディング製品の学習型アルコールガジェット「Tispy(ティスピー)」が生まれている。

 

一体どんな活動なのか、詳しく見ていこう。

あえて事業化を第一目的にしない

「技術コラボ」とは、2012年から始まった東芝の小向事業所における若手の活動で、目的は人材育成と人材交流。部門の垣根を越えてチームをつくり、毎年6月から12月までの約半年間でアイデアを練り、成果発表会を行う。2018年は40名6チームで活動をスタートした。

 

さまざまな技術を組み合わせて、チームで近未来的な製品やサービスを考えるが、事業化を最優先にはしない。参加メンバーが「やってよかった」、「楽しかった」と言ってもらえることをゴールにしており、アイデア創出はあくまで手段。成果発表会でも、事業採算性は採点対象にされておらず、想像力の豊かさ、おもしろさ、社会貢献度といったポイントで評価される。経営幹部が選ぶ「最優秀賞」、「ユニーク賞」以外にも、見学者の投票で「ワクワクした賞」、「買いたい賞」などが決まる。

きっかけは大企業であるがゆえの悩み

この活動が生まれたのは、「せっかく大企業にいるのに他の部門の技術を知る機会が少ないのはもったいない」という若手技術者の想いがはじまりだった。

 

当時の企画者で現在も事務局を務める東芝インフラシステムズ株式会社 小向事業所 技術管理部の緒方 勝氏はこう語る。

 

「当時の小向工場では、社会インフラ系の二つの事業部が在籍していましたが、交流はほとんどありませんでした。工場設立75周年記念の時に、若手で新しい企画を考えることになり、お互いの技術を重ね合わせたらおもしろいのではないかと思い、話し合って生まれたのが、『技術コラボ』です」(緒方氏)

東芝インフラシステムズ株式会社 小向事業所 緒方 勝氏

東芝インフラシステムズ株式会社 小向事業所 緒方 勝氏

その年は若手が数回集まってディスカッションし、技術のアイデアを出しあっただけだったが、「おもしろかったから来年もやろう」という工場長の後押しもあり、翌年も活動することになる。そして、ちょうど同じタイミングで、組織改正に伴い小向事業所として統合し、工場部門だけでなく、研究開発センターや、異なる事業部門、同じ地域の関連会社などにも参加対象を広げていった。

 

「工場の技術者だけで始まったのが、他部門の研究者、事業部の営業、デザインセンターのデザイナーなど多様な参加者が増えたことにより、さらにいろいろな技術を組み合わせて、新しいアイデアが生まれるようになりました。また、アイデアを出すにも、手助けとなる思考法や発想法が重要だということになり、3年目くらいからUXD(ユーザーエクスペリエンスデザイン)などを学ぶ時間もプログラムに組み込みました。活動内容は参加メンバーの声をもとに、毎年バージョンアップしています」(緒方氏)

 

最初はただ集まってディスカッションを行うだけの活動が、次第に人材交流に加えて、スキルセットを含んだ人材育成の要素が強まっていく。最近では、UXDや発想法と併せて、未来のシナリオ予測やSDGsといった観点も取り入れている。

自由な発想、だから楽しい

アイデア発想を通して、交流する若手たちは、どんな想いで活動に取り組んでいるのだろうか。実際に活動するメンバーの声を聞いてみよう。

 

「普段関わる人は同じ職場、同じ事業に関連した人ばかりなので、見ているポイントが似てしまいがちです。でも、技術コラボに参加するメンバーは、バックグラウンドが違うので、見ている方向は同じでも、着眼点が全然違います。思いもよらないことをポンっと言ってくれるので刺激があります

 

そう語るのは、株式会社東芝 生産技術センター 実装技術研究部の平塚 大祐氏。
東芝インフラシステムズ株式会社 社会システム事業部 通信システムソリューション営業部の江本 沙綾氏もうなずく。

 

技術コラボは、今まで関わってきたことがない人たちと真剣に議論して、ひとつのものを作り上げていく楽しさがあります。また、採算性や収益性が出発点となる議論ではない分、全力で楽しめる。純粋に新しいアイデアを考えて、こんな世の中になったら楽しそうとみんなで考えられる場は、ワクワクします」(江本氏)

 

事業の制約がない分、自由に考えられる。突飛なアイデアが歓迎される。大企業の中で、こうあるべきという既成概念から離れて、柔軟に意見を交わすことができるのは、それだけで貴重な経験になる。

 

アイデアは雑談から生まれる。いろんな人とのたわいもない会話からひらめきが出てくると感じました」(江本氏)

左から株式会社東芝 生産技術センター 平塚 大祐氏、東芝インフラシステムズ株式会社 江本 沙綾氏

左から株式会社東芝 生産技術センター 平塚 大祐氏、東芝インフラシステムズ株式会社 江本 沙綾氏

ネットワークが広がる強み

「技術コラボ」で得られるのは、一時的なものではなく、今後にも役立つものばかりだ。

 

「今まで出会えなかった人と出会えて、社内のネットワークが格段に広がりました人脈を得られたのは今後の会社生活で大きな財産になると思います」(平塚氏)

 

「私は普段、営業をしているのですが、お客様のニーズとわれわれの技術がうまくマッチしないと商売は成り立たないので、自部門だけではどうしても実現できない課題があったときに、今回つながりを得たメンバーに頼ることができるのは、とても心強いです」(江本氏)

 

解決のカギを握る人を知っているかどうかが強みになる気軽に相談できる人がいることは、モチベーションを上げることにもつながるのだ。

若手が輝ける場をつくりたい

若手が交流して自由にアイデアを生み出す、「技術コラボ」の裏側には、若手の活躍を願う事務局の存在がある。

 

「東芝にはたくさんの素晴らしい技術がある。そして若手がびっくりするくらい優秀なんです。ここでアイデアの発想方法を学んで横のつながりを得た若手がもっと活躍してほしいという想いが、活動運営の原動力になっています。また、若手向けの活動としつつも年齢制限は設けておらず、エネルギッシュな40、50代の方も参加し、若手に刺激を与えてくれています」(緒方氏)

真剣な眼差しで議論に参加する参加メンバー

真剣な眼差しで議論に参加する参加メンバー

事務局の運営メンバーも、参加者が楽しく活動できるよう、コミュニケーションや空気感を意識しながら場づくりを行っている。運営担当者でつながる拠点は14にのぼる。

 

「事務局同士がひとつのチームとしてつながっていることも、大きな成果だと思っています。参加メンバーにはこの14拠点の事務局を上手く使ってほしいですね。そのためにも、楽しかったと言ってもらえるように、まずは自分たちが楽しむことを目標にしています」(緒方氏)

 

課題がないわけではない。抱えている業務を優先せざるをえない参加メンバーは「技術コラボ」とのバランスをとるのが難しく、安心して楽しめなくなることもある。

 

「出口の課題もあります。事業化をゴールとはしていないものの、せっかくできたアイデアを見せる場が、成果発表会のみに限られるのはもったいないと感じています。他にもアピールできる場や、アイデアを具現化できる共創の場ができるといいですね」(緒方氏)

 

会社の経営状況から、一時は活動の継続に危機を感じることもあったという。しかし、事業所の経営層は活動の意義を認め、「続けてほしい」と言ってくれた。
小向事業所から生まれた「技術コラボ」が始まって6年。今年度からは、他の事業所でも活動が始まり、コラボの輪が広がりつつある。さらなる若手の活躍に期待したい。

検討会の様子

検討会の様子

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