『AI企業』50周年のその先へ ~東芝が目指すAIとは~

2017/03/13 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 実はAIの老舗、東芝
  • 50年前にもあった?AI技術
  • AIが実現する未来とは
『AI企業』50周年のその先へ ~東芝が目指すAIとは~

「東芝って実はAIの老舗なんです」

初の有人宇宙飛行が実現した1960年代。世界初の郵便区分機が東芝によって日本で開発されたのは、1967年のことだった。手書きの郵便番号を自動で読み取り、1秒間に6通もの郵便物を仕分けするこの機械は、当時の人手での郵便仕分け作業を大幅にスピードアップさせた。

 

それを可能にしたのは、高度なOCR(光学文字認識)技術だ。手書きの文字は印刷された文字のように整然としたものではない。つぶれているもの、かすれたものも含め、正確に文字を読み取る必要があった。
当時、東芝が研究を進めた文字認識技術は、現在、さまざまな場面で実用化されつつあるAI技術の草分けの一つともいえるもの。そういった意味で、東芝は今年、AI企業として50周年を迎えたのだ。

対話ロボットだけがAIなのか

映画にしばしば「人と対話して、質問や要求に応えてくれるロボット」の姿で登場するAIは、「AI=対話システム」という固定観念を生んだ。そもそもAIとは何なのか。

 

AIの定義は研究者によって異なっており、「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術(東京大学 松尾豊准教授)」「『知能を持つメカ』ないしは『心を持つメカ』(京都大学 西田豊明教授)」などと説明される。(※)しかし、この「知能」の定義はさまざまだ。

 

アメリカ心理学会では、「知能とは、学習する能力、学習によって得た知識や技能を新しい場面で利用する能力であり、その得た知識により選択的適応をすること」と定義している。

 

前述の定義に基づけば、文字や音声、画像などを認識するシステムも、対話ロボット同様、それぞれの世界の中で多くのパターンを学習して状況に適応した処理をしており、その意味でAIといえる。
すなわち、「人間の知能と同様のことを機械やコンピューターで実現すること」に必要な、音声認識や画像認識などの基礎技術もAIと呼ぶことができるだろう。

 

東芝が50年前に開発したOCR技術を用いて郵便物に書かれた手書きの文字が「3」か「5」かを判断し、郵便番号に応じて仕分けする技術は今で言うAI技術だった。

 

1950年代後半から開発が始まり、1960年代まで第一次ブーム、1980年代には第二次ブームが訪れたAI研究は、現在、第三次ブームの真っただ中である。

 

ビッグデータからAIが自ら知識を獲得する「機械学習」の実用化と、知識を定義する要素をAIが自ら習得する「ディープラーニング」という二つの革新的な技術によって飛躍的な進化を遂げたAI。

 

それぞれのブームの間には「AI冬の時代」と呼ばれる、AI研究が下火になった時期もあったが、東芝は文脈によって最適な変換候補を予測する、かな漢字変換日本語ワードプロセッサ(1978年)や音声合成エンジン搭載カーナビ(1998年)など、次々に成果を発表。

 

その創成期から現在まで、音声認識、画像認識、音声合成、翻訳、対話、意図理解などの分野で、AI技術を地道に醸成してきたのだ

 

東芝のAI研究開発の変遷

東芝のAI研究開発の変遷

AI技術を事業に適用することで、課題解決にドライブをかける

私たちの生きる社会は、複雑な問題とチャレンジに満ちている。挙げるときりがないが、「温室効果ガス増加への対応」、「情報爆発への対応」、「先進国における高齢化と地域社会の存立」、「異常気象・災害激甚化への対応」、「交通環境悪化への対応」などだ。
「人と、地球と、明日のために。」というスローガンを掲げ、事業を通じて社会的課題の解決に貢献しようとする東芝は、AI技術を東芝の事業に適用することで課題解決に向けてドライブをかけようとしている。

社会を取り巻く環境

社会を取り巻く環境
2016年10月18日 東芝 2016年度技術戦略説明会資料より

その応用は、さまざまな分野で活用されており、代表的な事例としては、AI技術を活用した工場の生産性向上NAND型フラッシュメモリを量産する自社の四日市工場にAIを導入しているほか、将来的には、電力プラントにおいても、発電設備や制御装置などを手掛ける東芝ならではのノウハウを生かしたプラント運用の最適化なども視野に入れている

 

他には、AI技術を組み込んだ自社製品の開発・提供。自動運転を支える技術分野では、高い画像認識力を持つ画像認識プロセッサとして「Visconti」を開発・生産している

 

さらに、ビッグデータ時代における情報処理の迅速化と有用情報の効率的な活用を目指し、音声認識・画像認識・言語処理技術を応用した東芝コミュニケーションAI「RECAIUS」」を展開し、ソリューションの一つとして音声同時通訳サービスなども提供している。

 

社会インフラソリューション領域において蓄積したさまざまなノウハウやデータと、継続的に醸成してきたAI技術の掛け合わせによるソリューションの提供を目指す東芝。今まで世界になかった価値をどのように提供していくのかが問われている。

 

■出典
(※)平成28年版 総務省 情報通信白書

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