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半導体技術×新材料=課題解決!? 水素センサーで社会をより安全に


半導体技術×新材料=課題解決!? 水素センサーで社会をより安全に

この記事の要点は…

次世代型クリーンエネルギーとして期待される水素は可燃性を持つガス

安全な水素社会に必要な「水素ガス検知センサー」の課題は消費電力と検知速度

東芝の半導体技術と新材料の出会いが課題解決へ

近年、耳にする機会が増えている「水素社会」という言葉。経済産業省によれば、水素エネルギーは2050年までに8兆円規模の市場に成長すると予測され(※)、地球規模での温暖化対策はもちろん、資源に乏しい日本においてはエネルギーセキュリティの観点からも重要なテーマの一つになっている。

※水素・燃料電池戦略協議会「水素・燃料電池戦略ロードマップ」より

最近では、都市ガスから水素を生成して電気を起こす仕組みや、水素を使った燃料電池車などが注目を集め、水素エネルギー主体の次世代型の生活モデルが少しずつ具体化しつつあると感じる読者も多いだろう。

そんな水素だが、その可燃性から静電気で着火してしまうこともあり、安全に管理することが必要不可欠。加えて都市ガスのように臭いを付けると、それが不純物となってしまうため、そのまま使用することができないという特徴もある。つまり、水素普及におけるカギは安全性の確保なのだ。

そこで重要な役割を果たすのが水素センサー。火災報知器と同様に、水素が漏洩した際に素早く検知するセンサーが身の回りに普及することが必要である。この新たな製品の開発に取り組む二人の研究者の試行錯誤に迫ろう。

半導体技術で水素センサーを作る?

家庭用燃料電池や水素製造装置、インフラとなるパイプライン、燃料電池車の車体や補給のための水素ステーションなど、水素検知が必要になる場は枚挙に暇がない。しかし、だからこその課題も生じる。

「水素センサーは用途や設置個所が多い分、低コストで大量生産が可能なだけでなく、省電力であることが求められます。ところが、従来の水素センサーでは原理上、センシングの際にヒーターによる加熱が必要で、検知速度を上げるためには、より多くの電力を必要とするというトレードオフ問題がありました」

そう語るのは、株式会社東芝・研究開発センターの山崎宏明氏だ。東芝では、水素エネルギーの安全性を確保するために必要とされる水素センサーの二つの課題について、いち早く取り組んできた。

株式会社東芝 研究開発センター・山崎宏明氏

株式会社東芝 研究開発センター・山崎宏明氏

水素センサーに求められる省電力と高速検知の両立。この課題に対して東芝が着目したのがMEMS(※)技術だ。MEMSとは、半導体の加工技術を用いてシリコンなどの基板材料の上で可動する機械構造を形成する微小な電気機械システムをいう。

※MEMS:Micro Electro Mechanical Systemsの略

「通常の半導体は機械的には動きません。しかしMEMSは動く点がユニークです。この技術を用いれば、検知速度向上と省電力のトレードオフ問題を解決できるのではないかと思いました。ただ開発をスタートした頃、東芝はMEMSに関して約10年間の知見がありましたが、ガスセンサーに応用するという経験はほとんどありませんでした。それがこの研究における挑戦でした」(山崎氏)

開発した水素センサーチップ(矢印部分)

開発した水素センサーチップ(矢印部分)

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