loading
TOP > 社会インフラ > 「ゲリラ豪雨」襲来の兆候をつかめ! 進化した気象レーダの今に迫る

「ゲリラ豪雨」襲来の兆候をつかめ! 進化した気象レーダの今に迫る


「ゲリラ豪雨」襲来の兆候をつかめ! 進化した気象レーダの今に迫る

この記事の要点は…

急発達する積乱雲の把握と正確な降雨量の観測を可能にした気象レーダとは

埼玉大学に設置した気象レーダが首都圏をカバー

進化した気象レーダが私たちの生活にもたらすものは

日本の夏は年々暑さを増しているように思える。そして、暑さとともに「ゲリラ豪雨」が、各地で猛威を振るう。もう珍しくないこの光景は、時に人命に関わる重大な事故につながるリスクをはらんでいる。日々、天気予報をつぶさにチェックしていても、このリスクを回避することは難しく、新たな防災・減災の術が急務となっている。

そのような中、当社はSIP(※1)「レジリエントな防災・減災機能の強化」の施策に、研究グループの一員としてプロジェクトに参画し、世界初(※2)となる実用型「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」を開発した。この気象レーダが、防災・減災の術として期待されている。

それは、従来の「マルチパラメータ気象レーダ」と「フェーズドアレイ気象レーダ」の各々の長所を兼ね備え、ゲリラ豪雨などの兆候をより迅速かつ正確に捉えることを可能にしたからだ。この進化した気象レーダが私たちの生活にどのような恩恵をもたらしてくれるのか。その性能と開発の背景に迫った。

埼玉大学内に設置された「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ」

埼玉大学内に設置された「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ」

※1:SIP
戦略的イノベーション創造プログラム。科学技術分野におけるイノベーションを実現するために、内閣府/総合科学技術・イノベーション会議が2014年に創設した施策。

※2:世界初
水平偏波と垂直偏波を同時に送受信する二重偏波機能を有し、10方向以上を同時に観測可能なDBF(デジタル・ビーム・フォーミング)のリアルタイム処理機能を搭載した気象観測専用のフェーズドアレイレーダとして

まず、従来の「マルチパラメータ気象レーダ」と「フェーズドアレイ気象レーダ」の主な特長を整理しよう。

マルチパラメータ気象レーダとフェーズドアレイ気象レーダの特長比較

マルチパラメータ気象レーダとフェーズドアレイ気象レーダの特長比較

「マルチパラメータ気象レーダ(MPレーダ)」は、水平と垂直偏波を同時に送受信する二重偏波機能により、雨の粒子の大きさまでも測定可能で、雨量の観測精度が高い。しかし、お椀型のパラボラアンテナは、アンテナが向いている方向にしか電波を送受信できないため、降雨観測は、水平面から上向き方向に角度を変えてペンシルビームを発射しながら、アンテナを水平に20回程度回転しなくてはならない。そのため、地上付近の降雨分布観測には1~5分、降水の3次元立体観測には5分以上かかってしまう。

一方、「フェーズドアレイ気象レーダ(PAWR)」は、平面型のアンテナにトンボの目のように小さな多数のアンテナを配置し、電波(ファンビーム)を出すタイミングがコントロールできる。そのため、アンテナを上下方向に移動することなく、瞬時に電波の方向を変えることができ、しかも受信した信号はデジタル化され複数の信号を同時に合成できるため、一瞬で全仰角の観測が可能となる。つまり、地上から上空までほぼ同時に電波を送受信でき、アンテナを水平に1回転することで雨雲の空間分布を短時間で観測できるので、ゲリラ豪雨などの早期検知に威力を発揮する。

> 次ページ 80キロ圏内をわずか1分で観測する新型レーダの威力とは

  • ↓ スクロールで続きを読む ↓