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1つのカメラがインフラ点検の救世主? 改良を重ねて完成した現場を支えるAIとは


1つのカメラがインフラ点検の救世主? 改良を重ねて完成した現場を支えるAIとは

この記事の要点は…

東芝は市販のカメラで距離を測定する立体認識AIを開発した

従来のカラーフィルターを用いた技術の課題をクリアすべくメンバーが奮闘

様々な知見を取り入れ、より現場で使えるAIへ

道路やトンネル、鉄塔など社会インフラの老朽化と点検業務の人手不足が進む中、遠隔操作によるドローンやセンサーなどのテクノロジーを活用して老朽インフラの点検、補修を進める動きも活発だ。作業効率や安全面・コスト面でドローンを使った点検にかかる期待は特に大きい。

しかし、ドローンによるインフラ点検には課題もある。例えば、鉄塔をドローンで撮影したとしよう。ドローンに搭載されるカメラは鉄塔のサビと樹木の紅葉を正確に見分ける必要がある。人間が見ればどちらか見分けるのは簡単だが、カメラは似た色を認識すると、見たい部分だけをうまく切り取ることができない。切り分ける方法としては、カメラと物体の距離を測ることだ。カメラ自身が見たいもの(サビ)が手前、背景は奥、と認識することができれば、見たい部分を切り取ることができる。

現場で使える技術にするため、各社で開発が進む。

東芝は、小型カメラを使用する独自の距離測定技術を研究し、この問題に挑んでいる。それは市販のカメラで高精度に画像撮影と距離検出をこなすというものだ。従来距離測定で使用されていた大型のステレオカメラや高コストなミリ波レーダー、赤外線・超音波センサーと一線を画し、市販のカメラ1つで距離が測定できれば、インフラ点検の現場への大きな手助けになるだろう。

ディープラーニングなどのテクノロジーを使いこなし、これまで培った技術と知見で世界初の技術を目指す――研究開発センターでプロジェクトを進めるメンバーの試行錯誤を追う。

カメラを改造することなく距離が測れないか? 従来技術を越えて進め

2016年、東芝はカラーフィルターをカメラのレンズに挿し込むことで距離を測定する技術を開発した。このイノベーションに開発陣は大きな手応えを感じた。

自動運転、ドローンへの応用にも期待大 市販の1ショットで画像と距離を同時撮影!

これは、カメラレンズの開口部に2色のカラーフィルターを内挿し、被写体への距離に応じて発生する画像ボケに「色」を加え、ボケの「色」と「大きさ」を分析することで距離を検出するというものだ。SNS上で反響を呼んだだけではなく、様々な企業から問い合わせも受けた。しかし、研究開発センターで本技術の開発を主導したメディアAIラボラトリー主任研究員 三島直氏は社会実装に向けた課題に直面していた。

株式会社東芝 研究開発本部 研究開発センター メディアAIラボラトリー 主任研究員 三島 直氏

株式会社東芝 研究開発本部 研究開発センター メディアAIラボラトリー 主任研究員 三島 直氏

市販のカメラでステレオカメラ並みの高精度な距離測定を実現できたのは、カメラのレンズにカラーフィルターを内挿するからです。新技術への期待をひしひしと感じていましたが、インフラの現場などでの活用を考えると、このカラーフィルターの存在が課題にもなると思われました。レンズにフィルターを入れて改造するという手間とコストが発生するからです。また、フィルターを挿し込むことで一部の光が遮断され、画像が暗くなってしまうのもウィークポイントでした」

社会実装に向けた汎用化を目指す三島氏は、ひとまずディープラーニングの活用を模索した。カラーフィルターによる画像ボケは位置や色に応じて非常に複雑な変化をもたらす。人力で構築するアルゴリズムでは到底太刀打ちできない。

「画像のボケは光学的に非常に複雑な変化をしますから、人手によるチューニングでは限界があります。AIの力を借りなければ、これから先に進むことはできないと判断し、位置と色で複雑に変化する画像ボケをレンズごとに学習できるディープラーニングの活用に舵を切りました。
プロジェクトには新たなメンバーとして光学デバイス分野での実績と知見を豊富に持つ柏木さんを迎え、カメラとAIのシームレスな連携を目指しました」

> 新メンバーの気づきから見えたブレイクスルー

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