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レンズの中から未来を見る! 異なる知見が新技術をともに生み出す


レンズの中から未来を見る! 異なる知見が新技術をともに生み出す

この記事の要点は…

もっと現場で使える技術を開発したい技術者の思い

ディープラーニング×デバイス、2つの知見が融合し、独自の立体認識AIが誕生

短時間での学会準備、育児との両立、お互いの理解と協力が新たな力になる

もっと便利な仕組みを開発し、世の中のニーズに応えたい――。
東芝は市販のカメラを用いて、ステレオカメラ並みの距離測定を実現する立体認識AIを開発した。これはディープラーニングの活用により、高精度で省コスト、省スペースな距離測定を実現する画期的なテクノロジーだ。

立体認識AIを支える技術基盤は「1つのカメラがインフラ点検の救世主? 改良を重ねて完成した現場を支えるAIとは」で紹介したが、本編では、異なる知見を融合させ「ともに生み出す」新しい技術の誕生エピソードにフォーカスする。

株式会社東芝 研究開発本部 研究開発センター メディアAIラボラトリー 主任研究員 三島 直氏と研究主務 柏木正子氏

株式会社東芝 研究開発本部 研究開発センター メディアAIラボラトリー 主任研究員 三島 直氏
同  研究主務 柏木正子氏

ドローンの目になり、インフラ点検をバックアップするために

市販のカメラで撮影した画像から、距離画像を取得――AIによる画像処理を組み合わせ、ステレオカメラ並みの高精度な距離測定が実現した。本プロジェクトを進めたのは研究開発センター メディアAIラボラトリーの三島直氏、柏木正子氏だ。

私たちが手にするカメラで対象物の距離を測ることができる。これは、どのようなニーズに応えるものなのか。開発を主導した三島氏は、新たな仕組みが活用される現場のイメージを明解に語ってくれた。

「私たちが想定している活用先は、ドローンを活用したインフラ点検です。電力事業者や携帯電話、通信事業者などが多くの鉄塔を管理しており、その整備には大きなコストがかかっています。鉄塔や橋梁はサビ、腐食が進むと倒壊などの恐れがあるため、定期的な点検が欠かせないからです。

従来は作業員の方が鉄塔を一つひとつ目視でチェックし、色見本と照らし合わせてサビのレベルを判定していました。インフラ業界では人手不足が深刻ですし、老朽化が進む鉄塔の量も膨大です。そこで、手間とコストを削減するためにドローンやAIによる点検を取り入れる動きが活発です。

ただ、ドローンに載せられる小型カメラでは画像解析の精度に課題があります。例えば、鉄塔の背景に樹木が映り込むと、その茶色がサビなのか紅葉なのか判別できないこともあり得るのです。高精度に距離が測定できれば、画像から鉄塔だけを抽出して状態をチェックできます。そのニーズに応えたいという思いで開発に取り組みました」

株式会社東芝 研究開発本部 研究開発センター メディアAIラボラトリー 主任研究員 三島 直氏

株式会社東芝 研究開発本部 研究開発センター メディアAIラボラトリー 主任研究員 三島 直氏

ディープラーニング×デバイスの知見=新しい技術の誕生

三島氏は画像処理を専門にテレビ向けの高画質化技術、裸眼3Dテレビ向け信号処理技術、カラー開口撮像技術の研究を経て本技術に取り組む。プロジェクトが走り出した2018年10月に参画した柏木氏も、裸眼3Dテレビのチームでデバイス開発に取り組んだキャリアがあった。

数理をベースに距離推定アルゴリズムを駆使する三島氏と、デバイスに高度な専門性を持つ柏木氏。それぞれのエキスパートが培ってきた知見は、先端テクノロジーであるディープラーニングと融合し、画期的な立体認識AIとして結実する。

カラーフィルターを用いた撮像技術までは、アルゴリズムで距離を推定していました。今回のプロジェクトでは解析をディープラーニングに切り替え、画像ボケの形状から距離を測定しています。人手からAIへのシフトには複雑な思いもありましたが、画像ボケの形状はレンズ内の位置、光の波長によって非常に複雑に変化します。これを人手のアルゴリズムで解析するのは限界が見えていました。より良い仕組みを目指すためには、気持ちの上で乗り越えなければいけないこともあります」(三島氏)

「4年の育児休業から復帰し、デバイス設計で磨いてきた知見が生かせると思い、本プロジェクトに加入しました。休業中にAIは目覚ましい進化を遂げており、画像ボケの形状を精緻に解析することができるようになっていました。三島さんが構築したネットワーク基盤に私の知見が入れられた。プロジェクトの中にもダイバーシティが発揮されたと感じています」(柏木氏)

株式会社東芝 研究開発本部 研究開発センター メディアAIラボラトリー 研究主務 柏木 正子氏

株式会社東芝 研究開発本部 研究開発センター メディアAIラボラトリー 研究主務 柏木 正子氏

本技術では、カラー開口撮像技術で大きな役割を果たしたカラーフィルターをなくし、市販のカメラ+画像処理のシンプルな構成となった。特別な改造も不要だ。これは新メンバーの柏木氏の提案によるもの。固定観念にとらわれず、より良い仕組みのために様々な考え方を取り入れる。自由闊達なプロジェクトの気風が新しい技術を生み出している。

> お互いの理解と協力が、新しい技術を生み出す力となる

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