loading
TOP > エネルギー > 北海道の電力系統を守れ! 新方式の直流送電システム

北海道の電力系統を守れ! 新方式の直流送電システム


北海道の電力系統を守れ! 新方式の直流送電システム

この記事の要点は…

「同時同量」需要と供給のバランスが電力安定供給の要

日本初の自励式変換器を採用した、直流送電システムの特長

若手技術者の交流と、北海道系統を守る想い

身近にあるコンセントに電源プラグを差し込む。今、こうして使っている電気は、たった今発電所で発電された電気だということをご存じだろうか。二次電池の普及によって、貯めておけるかのような印象に変わりつつある電気だが、実は貯めておくことは難しいのが現実だ。

電力需要が増えて、足りなくなると不都合が起こることは容易に想像できるが、実は不都合は需要が減って発電量が大幅に上回ってしまったときにも起こる。このため電力会社には、需要を見極めて今必要な電力を今必要な分だけ発電する同時同量が求められているのである。

また、不測の事態に備えて、近隣の電力系統と接続することで、互いに同時同量のバランスを保ち合う連系を行っている。なぜ、そこまで電力需給のバランスは必要なのだろうか?

北海道の電力系統を守れ!

日本国内には、いわゆる電力会社と呼ばれる「一般送配電事業者」が10事業者ある。それぞれが管轄するエリアの発電所や送配電設備を使い、周波数と電圧を一定の範囲に維持するための業務を行っている。この管轄エリア内の発電設備や送電・変電・配電設備といった発送電から、末端の電力消費者のための設備まで、すべてをまとめて電力系統(でんりょくけいとう)と呼んでいる。この電力系統では、沖縄を除き隣接する電力系統と接続する連系が行われている。

2019年3月、北海道と本州の系統を結ぶ連系設備である「北海道・本州間電力連系設備、以下、北本連系(きたほんれんけい)」に、新たに直流送電による30万kWの「新北海道本州間連系設備(以下、新北本連系)」が追加され、連系容量が60万kWから90万kWへと増強された。しかし、本州と電線を結んでまで守らなければならないものとはいったい何なのだろうか。

「電力の需給のバランスが崩れると、周波数が変わってしまうんです。我々は、この周波数を守るためにあらゆる努力をしています」

そう語るのは、北海道電力株式会社 送配電カンパニー 工務部 変電グループ グループリーダー 渡邊真琴氏だ。

北海道電力株式会社 送配電カンパニー 工務部 変電グループ グループリーダー 渡邊真琴氏

北海道電力株式会社 送配電カンパニー 工務部 変電グループ グループリーダー 渡邊真琴氏

周波数は、東日本で50Hz、西日本で60Hzが採用されている。これは、変わること無く自動的に一定に保たれていると考えている方も多いだろう。しかし実際には、規定の周波数の維持は、電力会社のたゆまぬ努力によって実現されているのだ。

電力系統は、沖縄を除き隣接する電力系統と接続する「連系」が行われている

電力系統は、沖縄を除き隣接する電力系統と接続する「連系」が行われている

使いすぎても、作りすぎてもだめ。周波数は、電力需給のバランスが保たれなければ乱れてしまう。周波数が乱れることにより、産業機械の動作が不安定になったり、最悪の場合は動作不能に陥ったりする。すなわち、周波数の安定は電力の品質そのものだという。

供給する電力は、多くても少なくても周波数を乱す原因となる

供給する電力は、多くても少なくても周波数を乱す原因となる

この電力の需給バランスを安定させるための一つの手段として、隣接する電力系統と接続することで、互いに電力の調整に役立てる「連系」を行っている。

「北海道電力エリアでも、隣接する東北電力エリアとの連系を行っています」

北海道電力株式会社 送配電カンパニー 函館支店 今別ネットワークセンター 変電課 佐藤森氏が、東北電力との連系について解説を付け加えた。

北海道電力株式会社 送配電カンパニー 函館支店 今別ネットワークセンター 変電課 佐藤森氏

北海道電力株式会社 送配電カンパニー 函館支店 今別ネットワークセンター 変電課 佐藤森氏

連系は、二つの電力系統を送電線で結んで行う。そのための送電には、二種類の方法がある。一つが交流電流をそのまま送電する「交流連系」もう一つは、直流に変換して送電する「直流連系」である。

「北海道電力と東北電力の間で行われている連系は、現在3系統ありますが、すべて直流による連系を行っています」(佐藤氏)

既設の二本の連系設備は、大間市と函館市を海底ケーブルで結んでいたが、新北本連系は青函トンネルを利用して敷設された

既設の二本の連系設備は、大間市と函館市を海底ケーブルで結んでいたが、新北本連系は青函トンネルを利用して敷設された

北海道の電力系統は、50Hzの交流を採用している。連系される本州側の系統も同じく50Hzの交流だが、接続する連系設備には、なぜ直流送電が採用されているのだろうか。

「連系に直流送電を利用することには、様々なメリットがあります。そのうちの一つが、交流と直流の変換を行うことにより、連系相手の系統事故の影響を受けないということがあります」(佐藤氏)

交流のままの連系では、接続される系統で起きた事故や、落雷などによる影響が、そのまま伝わってしまうのだという。これに対して、変換器を挟む直流による連系ならば、影響を受けることは小さいという。

「本州の電力系統に比べて、北海道の系統は規模が小さいため、本州の系統のわずかな変化でも、大きな影響として受けてしまう可能性があります。直流送電による連系ならば、こうした変化から北海道系統を守ることができます」(渡邊氏)

一旦、交流を直流に変換し、直流送電した後に再度交流に変換するため、変換前の交流電圧の影響(周波数変動,電圧変動)を受けない

一旦、交流を直流に変換し、直流送電した後に再度交流に変換するため、変換前の交流電圧の影響(周波数変動,電圧変動)を受けない

> プロジェクトチームが挑んだ、日本初の自励式直流送電システム

  • ↓ スクロールで続きを読む ↓