メキシコのエネルギー産業を牽引する!東芝の使命と貢献
2023/09/11 Toshiba Clip編集部
この記事の要点は...
- 人口と電力需要が急増するメキシコにおいて、エネルギー産業が社会的課題を解決する。
- マルシアル氏が率いる東芝メキシコ社は、火力・水力・地熱発電のソリューションを提供!
- より多くの人に電気を。国境を越えたチーム力でメキシコのエネルギー産業の未来に変革を起こす。
メキシコは極めて重要な場面におり、差し迫る社会課題に対応するために、エネルギー産業が重要な鍵を握っている。メキシコは着実な成長を遂げており、約1.27億人※1の人口は、世界で10番目に多い国である。この急速な人口増加に伴って電力需要も著しく増加し、毎年約4%※2の勢いで増え続けている。こうした成長への対応策として、メキシコには、発電容量の拡充だけでなくインフラの近代化が必要である。
※1 The World Bank: DataBank; https://data.worldbank.org/country/MX
※2 IEA: Electricity Market Report 2023; https://iea.blob.core.windows.net/assets/255e9cba-da84-4681-8c1f-458ca1a3d9ca/ElectricityMarketReport2023.pdf
メキシコの発展のためにエネルギー産業は重要であることから、東芝メキシコ社(Toshiba de Mexico:TDM)は火力、水力、地熱の発電ソリューションを提供し、メキシコのエネルギー分野で役割を果たしている。最高経営責任者のマルシアル・フリゴレット・ぺルラ氏は、情熱、経験を持って献身的にメキシコのエネルギー産業の課題と未来への可能性に注力しており。40年以上の業界でのエンジニアリングとセールスの経験を活かして、現在のTDMにおいて重要な役割を担っている。
2023年7月、マルシアル氏は、TDMの経営を通じた業績への貢献と、現地での東芝の存在感の確立が認められ、東芝の社内表彰である「海外功労者」を受賞した。東京本社を訪れたマルシアル氏が、40年以上にわたるメキシコのエネルギー業界での経験、TDMが達成してきた実績と貢献に基づく示唆、そしてメキシコの未来への展望について語った。
メキシコ、チャンスとチャレンジが共存する国
「今、メキシコにはいくつものチャンスが訪れています」と、マルシアル氏は語り始めた。「メキシコの米国との国境沿いは、ニアショアリング※3という地理的な利点をもち、そのため、新しい製造拠点を建設しようとするグローバル企業にとって、魅力的な場所となっています。昨今の国際社会における地政学的な不確実性を考慮し、多くのグローバル企業が次の製造のハブ拠点としてメキシコを検討しているのです」と続けた。しかし同時に、メキシコが直面している最大の課題の一つは、こうした新規進出する企業が必要とする電力を十分に供給することだという。
※3 近隣国へアウトソーシングをすること。例えば米国企業にとってのメキシコやカナダなど、国内よりコストが安く地理的に近い国に業務を移転すること。
メキシコのエネルギー課題は他にもある。それは、増加する電力需要を賄うだけでなく、国内に電力を届けるインフラ(電力)系統の更新遅延と不足だ。電力が国の隅々にまで供給されるためには、送電と配電のシステムに大規模な投資が必要となる。また、発電量が天候によって変動する太陽光や風力などの再生可能エネルギーを電力系統に導入するためにも、現状より堅牢なグリッド(電力系統)システムが不可欠となる。
さらに、メキシコでは貧困が依然として重要な社会課題として存在している。この課題に対して、サービスやインフラ、経済成長の機会を改善することで、社会の発展を促進する必要がある。エネルギー産業は経済成長の鍵であり、電力を地域に安定的に提供することによって経済が成長し、人々の生活の質が総合的に向上することが期待されている。
Toshiba de Mexico:半世紀以上にわたる実績と信頼
半世紀以上、TDMは火力、水力、地熱発電の機器等の供給を通じ、メキシコの発電能力を増強し、エネルギー供給を支えてきた。1957年にメキシコに設立されて以来、政府の電力公社であり、発電、配電を担っているComisión Federal de Electricidad(CFE)の信頼できる技術パートナーとして、メキシコの発電に貢献してきた。
マルシアル氏がTDMに入社した2013年以来、数多くの入札に参加し、合計1,100MWになる7つの蒸気タービンを納めてきた。またTDMは、顧客満足を重視し、機器販売後の要求に対応するために、機器サービスとメンテナンスを提供できるチームを組織している。その結果、顧客は高い満足を実感している。これについて、マルシアル氏は次のように振り返る。
「66年間、東芝がCFEを技術パートナーとして支えてきたことが誇りです。高品質な製品とサービスを提供するTDMは、長い年月の実績を通じて評価されています」と矜持をにじませた。また、次のように強調している。それは、TDMの存在感、そして長きにわたってメキシコに信頼できる製品を提供し続けるコミットメントが、『革新的』、『高い成果』と『信頼』という評価を構築していることだ。これが、まさにTDMの強みと価値となっている。
強靭さと成功の旅:マルシアル氏のリーダーシップ
マルシアル氏のキャリアは1981年に始まり、当初はCFEにバルブやパイプを販売する製造会社に入社した。その後、メキシコに投資するスペインの電力事業者Unión Fenosaに移籍し、合計容量2,000MWの4つのコンバインドサイクル発電所の建設に関わった。
2009年、Unión Fenosaはスペインのガス事業者Gas Naturalに買収され、その後、Gas Naturalは5つのコンバインドサイクル発電所をMitsui Power Americasに売却。マルシアル氏と同僚たちは、Gas NaturalからMitsui Power Americasに移籍した。当時、マルシアル氏はメキシコエネルギー協会に積極的に参加しており、そこで出会った元TDM社長であるカルロス・カナレ氏の目に留まったのだった。メキシコのエネルギー事業に大きな可能性を感じていたカルロス氏は、マルシアル氏の専門知識と業界における長年の経験に注目し、TDMのエネルギー事業の拡大という重要な任務を任せることにした。
Topolobampo発電所にて東芝製ローターのリハビリに訪れたマルシアル氏
2013年にTDMに入社して以来、マルシアル氏は2018年の政府のエネルギー政策の転換や、COVID-19の影響にもかかわらず、数々の実績を重ねてきた。彼の指揮の下、TDMは契約の再獲得や、主要なコンバインドサイクル発電所への蒸気タービン納入など、重要なプロジェクトを達成してきた。コロナ禍の2021年においても、過去に納めた蒸気タービンのメンテナンス向けの予備部品の販売により利益を増加させた。
マルシアル氏は、自身が最も誇りに思う成果の一つとして、CFEのNorte IIIプロジェクトへのTDM参加を挙げた。このプロジェクトは、コンバインドサイクル発電所の建設と、2つの蒸気タービン納入の契約だった。「最初は、この入札に落選してしまいました。私たちが提携していたEPC※4会社が、CFEによって不適格とされたからです」と述懐する。しかしプロジェクトは再入札となり、、CFE側との粘り強い交渉と東芝の東京本社とのチームワークの結果、最終的にはプロジェクトの契約を獲得することができた。
※4 Engineering(設計)、Procurement(調達)、Construction(建設)の略称
Norte III コンバインドサイクル発電所サイト
Centro Morelosコンバインドサイクル発電所サイト
その忍耐と努力は実を結んだものの、それで終わりではなかった。EPC会社の倒産という別の障害が現れたのだ。しかし、この困難な状況でも、マルシアル氏とチームは顧客への変わらぬサポートを提供し、プロジェクトを完了まで進めるというコミットメントを貫いた。その結果、様々な困難を克服し、最終的にはプロジェクトを成功と導き、CFEとのさらなる関係強化をもたらした。
マルシアル氏は、東芝が大切にしている価値観の中で、「誠実であり続ける」と「変革への情熱を抱く」に強く共感していると話す。誠実であることと、変革することに対するコミットメントは、彼の意思決定の指針となり、TDMが困難な状況に直面しても適切な解決策を導き、誠実さを維持する原動力になっているという。
マルシアル氏の、強固な顧客関係を構築する秘訣
TDMでの役割を超えて、マルシアル氏は、メキシコのエネルギー産業に関連する様々な業界団体に積極的に参加し、理事会や委員会で貢献している。こうした職業上のコミットメントに加えて、マルシアル氏はValley of Mexico Golf Associationの会長も務め、Mexican Golf Federationとの提携を続けている。これらの活動も通じて、メキシコのエネルギー産業の主要な幹部や意思決定者と価値あるつながりを築いたのだという。
マルシアル氏は、40年以上のキャリアで築いてきた強力な顧客関係を構築する秘訣は、特にメキシコにおいては、人々との緊密なつながりを築くことだと強調する。将来のビジネスチャンスを獲得するためには、重要な情報を得たり、キーパーソンとのアポイントメントを確保したりが不可欠である。このために、人間関係の構築は欠かせない要素だと、マルシアル氏は次のように補足する。
「たとえば、もしお客様のオフィスが10階建てなら、私は朝から最上階に伺います。そこにいる担当者とコーヒーを飲みながら話をし、次に9階に移動します。このプロセスを午前11:30頃まで繰り返し、その後自分のオフィスに戻ります。これは、私が何年も実践してきたルーティンです」
マルシアル氏は、TDMの若手エンジニアに対して、電子メールだけに頼らずに顧客と直接関わるよう推奨している。自身の経験から、対面でのやり取りは効果的で、持続的なビジネス関係を築く上で重要だと認識しているからだ。
マルシアル氏は、10年間にわたる東芝での経験を通じて、TDMの献身的なメンバーの存在なしにはこれまでの多くの実績や功績を達成できなかったと確信している。そして、今回の海外功労賞の受賞が、個人の貢献だけでなく、チーム全体の努力と成果の証であると強調した。
2023年6月にワシントンで行われたToshiba America President’s Meetingの参加者たち
さらに、マルシアル氏は、東芝では経営陣と距離が近く、密なコミュニケーションを推奨する文化があると加えた。その環境が、効果的なチームワークを促進し、会社全体の実績を向上させる要因だと感じている。
TDMは、「誠実さ」と「変革」を軸にメキシコのエネルギー産業に明るい未来をもたらし、社会的な幸福、経済的な繁栄、持続可能な成長を支援している。東芝の高度な技術力と顧客志向のアプローチを通じて、メキシコの持続可能な発展の礎を築き、今後も進化し続けるエネルギー産業の将来像において重要な役割を果たしいく。