手間を大幅軽減!東芝のAIチャットボット ~後発参入なのに支持を得た理由とは?

2023/11/28 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 東芝のAIチャットボット「コメンドリ」が、これまでの課題を大幅改善!
  • 自然言語処理から深層学習まで、東芝のAI技術を集約!
  • 顧客・営業技術・研究開発、3者の良好な関係性が東芝の価値創造を支える!
手間を大幅軽減!東芝のAIチャットボット ~後発参入なのに支持を得た理由とは?

私たちユーザーの問い合わせに、対話(チャット)で応対してくれるチャットボット。今や当たり前の存在になり、ユーザー体験や企業の業務効率を上げている。一方、ユーザーには「やり取りがちぐはぐで、いらいらする」といった不満があり、チャットボット導入企業からは「メンテナンス負担が大きい」といった悩みが聞こえてくる。

 

こうした課題を解決するため、東芝が2020年に社会に出したのがAIチャットボット「コメンドリ」である。コメンドリがどのようにユーザーや企業の不満を解消するのか、その技術的な特徴、開発経緯について、最前線で活躍する2人に聞いた。

コロナ禍で高まった、チャットボットへの期待と課題

チャットボットは、様々な問い合わせに自動対応する技術である。チャットボットの登場以前、企業は代表的な質問と回答をまとめたFAQをウェブサイトに掲載していた。ただ、ユーザーは期待する回答をなかなか見つけられず、電話やメールで問い合わせる手間が発生し、結局は企業の負担も減らないという問題があった。

 

そこで、ユーザーの問い合わせに対し、チャット形式で適切な回答を提示するサービスとして開発されたのがチャットボットである。人手不足が深刻化する昨今、問い合わせ対応業務が大幅に効率化・省力化できる意義は大きい。

 

さらに、コロナ禍はチャットボットの需要を拡大させた。感染防止のため非接触の対話が重視されたり、オンライン化が必要になったりが背景にある。「しかし、チャットボット導入企業が増える中で、新たな課題が浮上しています」と話すのは、東芝のAIチャットボット「コメンドリ」を顧客に提案する岩田麗氏だ。

 

東芝デジタルソリューションズ株式会社 ICTソリューション事業部 保険ソリューション技術部
フェロー 岩田 麗氏

岩田氏によれば、今までのチャットボットには「アンマッチ/トゥーマッチ問題」「メンテナンス問題」があるという。どういうことか、具体的に教えてもらった。

 

「チャットボットは、一問一答のFAQ集を用意すれば問い合わせに対応できますが、ユーザーが入力する『金利』『利息』『利率』など似た言葉に正しい回答を表示できるように、類義語をあらかじめ登録する必要があります。そうしないと質問しても回答が得られない(ヒット件数ゼロ=アンマッチ)状態になり、ユーザー満足度は下がります。逆に、ヒット件数が多すぎても(トゥーマッチ)、ユーザーの望む回答を見つけにくく、やはり企業イメージが低下します」(岩田氏)

 

それでは、「メンテナンス問題」はどうだろうか。シナリオ型といわれるチャットボットでは、質問対応のシナリオをあらかじめ用意しておく。以下の図のように「Q1:家電を選択してください」「Q2:製品を選択してください」など、ユーザーが順次選択することで適切な回答に導いていく。この場合だと、3つの選択肢の質問を3階層つくるだけでも、シナリオは27通りにもなる。

 

チャットボットのシナリオ例

チャットボットのシナリオ例

 

様々な質問を想定してシナリオを作るのは、かなりの手間と時間を要します。しかも、サービス名や仕様にちょっとした変更があっただけで、チャットボットのシナリオもその都度メンテナンスする必要があります。これは、企業の大きな負担になっていました。また、ユーザーも希望する質問が選択肢になければフリーワードで検索することになり二度手間になります」(岩田氏)

 

ユーザーと企業を不満にするチャットボットの問題

ユーザーと企業を不満にするチャットボットの問題

自然言語処理など、東芝のAI技術を集約して

これらの問題を解決するため、東芝はAIチャットボット「コメンドリ」を開発した。「一言で表すと、シナリオを作らなくても、FAQに沿って自動的に対話してくれるチャットボットです。類義語の登録も不要なので、手軽に導入できます

 

コメンドリを開発した吉田尚水氏は、このように説明する。

 

「まずコメンドリにFAQを解析させてキーワードを抽出し、それらをFAQにある各質問と紐付けて検索用データベースを構築します。事前準備はこれで完了です。

 

コメンドリが問い合わせを受けると、ユーザーの質問からキーワードを確認し、先程のデータベースと照合。関連性や優先度の高いキーワードをユーザーに提示(サジェスト)して、所望の回答に誘導していく仕組みです。FAQが更新されても、それを再度読み込ませれば自動で検索用データベースを作り直しますので、メンテナンスなしで利用できます」(吉田氏)

 

株式会社 東芝 研究開発センター 知能化システム研究所 メディアAIラボラトリー スペシャリスト 吉田 尚水氏

株式会社東芝 研究開発センター 知能化システム研究所 メディアAIラボラトリー
スペシャリスト 吉田 尚水氏

コメンドリには、東芝が蓄積してきた3つのAI技術が活用されている。1つめが、日常会話で使われる言葉や文章の意味を解析する「自然言語処理」だ。

 

「文章の構造や意味を解析するには、文章を単語に分け、品詞を特定する必要があります。東芝の自然言語処理は、FAQを基にしてチャットボット用のデータベースを構築するうえで大いに役立ちます」(吉田氏)

 

2つめは、言葉の類似性を推定し、言い換え表現への対応を可能にする「深層学習」だ。前述のように、通常のチャットボットでは、FAQに沿って「金利・利息・利率」といった類義語を登録しておく必要がある。

 

「コメンドリでは言葉の類似性を判定するために、単語に特定のベクトル(数値のリスト)をつけています。大量のテキストデータを読み込ませておき、ある単語の前後には、どんな単語が続くことが多いか学習させます。このベクトルが近いほど、意味や使われ方が似ているわけです。この仕組みを用いることで、FAQを読み込むだけで類義語を抽出し、ユーザーとのやり取りに反映するのです」(吉田氏)

 

3つめは、吉田氏の専門分野である「統計対話」だ。

 

「以前から、コンピュータが人間と自然に対話する技術を研究してきました。例えば飲食店を探す場合、『◯◯駅近くの中華料理店』などと入力すると候補がたくさん表示されます。そこで『高級店ですか、大衆店ですか』『利用目的は何ですか』などと問いかければ、ユーザーは期待する店を見つけられます。問いかけでユーザーの意図を絞り込む技術をFAQと連動させ、回答の精度を上げます」(吉田氏)

 

東芝のAI技術が、ユーザーの満足度を上げる

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顧客との対話から生まれたチャットボットが、さらなる進化を追求

日本では2016年ごろから、複数の企業がチャットボットを提供しており、東芝のコメンドリは明らかに後発だった。では、なぜ市場参入したのだろうか?

 

「吉田さんたち研究者と私たち事業部は、3年以上週1回の定例会議を続けています。息がぴったりで、お客様を一緒に訪問したり、お客様を東芝の研究所に招いたりと、新しい価値につながる種を播き続けてきました」(岩田氏)

 

ある時、顧客企業の役員が吉田氏のAI技術を大変気に入り、「まさに自社の課題を解決する技術だ」となった。吉田氏は当時を振り返り、あのような直接対話は貴重だったとしみじみ語る。

 

「コメンドリに搭載している自然言語処理などは、ChatGPTなどに比べれば古い技術です。しかし、大切なのは新しいか古いかではなく、顧客課題を解決する最適な方法を導くことです。東芝のAI研究には歴史と実積があり、多分野の専門家がいます。その視点を組み合わせれば、チャットボットという新領域でも意味のある価値を生める、これが大きな強みだと改めて感じました」(吉田氏)

 

従来のチャットボットの課題を解決するコメンドリは多くの導入企業から好評を得ており、これまでは十分対応できなかった問い合わせニーズにも応えられていることがわかってきた。岩田氏は、とても嬉しそうに言葉を続けた。

 

「何よりも多いのは、『これまで大変だったシナリオ作成が要らなくなった』という声です。さらに、対話を通じた回答によりユーザー満足度が上がるのも、私たちが狙ったとおりです。ここが最も大事なのですが、コメンドリに問い合わせを任せることで、人間が取り組むべき創造的な業務に集中できることが嬉しいですね。様々なお客様が、社会に対してさらに価値を創造する役に立ててわくわくします

 

東芝のAI技術が、ユーザーの満足度を上げる

東芝のAI技術が、コメンドリ活用企業の満足度を上げている

最後に2人に、今後のロードマップや将来的な展望を聞いた。吉田氏は、当面の目標は、機能の高度化だと話す。現状でも人手がかかる部分は残るからだ。たとえば、FAQ集をつくるのは相変わらず人間の役割である。コメンドリでも、FAQ集のメンテナンスは人間が行う。

 

「まずは、そこを簡単にしたいですね。今、FAQがなくても既存資料やウェブサイトの情報から回答する技術を開発しており、実用化に近づいています。

 

私の目標は、AIが得意なことはAIに任せて、人は本当にやりたい創造的な業務に専念できる環境を作ることです。それを実現するための技術開発に取り組んでいきます。(吉田氏)

 

一方、岩田氏が目指すのは、コメンドリを世の中に欠かせないインフラにまで成長させていくことだと語る。

 

「たとえばLINEは、単なる対話アプリを超えて、幅広い層のコミュニケーションや日常生活のあり方を変化させています。ITにはその力があるので、コメンドリも労働人口不足や高齢化という日本社会の深刻な課題を解決していきたい、と思っています。

 

今、専門性が高く後継者育成に悩んでおられる業務分野や介護ビジネスなど、複数分野にむけて協業を含めた新しいビジネスについて議論し始めたところです。こうした特定分野からでいいので、コメンドリが人々の日常を支え、なくてはならない存在になるよう、これからも挑戦を続けていきます」 

 

関連サイト

※ 関連サイトには、(株)東芝以外の企業・団体が運営するウェブサイトへのリンクが含まれています。

シナリオレス型AIチャットボットサービス コメンドリ® | 東芝デジタルソリューションズ

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