エネルギー関連課題を、共創で解決する! ~TOSHIBA SPINEX for Energyとは?

2024/02/01 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • カーボンニュートラルへ、エネルギー関連課題が複雑に?!
  • 共創により課題を解決するデジタルサービスTOSHIBA SPINEX for Energyとは?
  • デジタル活用が人材を育て、サービスを高度化
エネルギー関連課題を、共創で解決する! ~TOSHIBA SPINEX for Energyとは?

従来インターネットに接続されていなかったモノが、インターネットに接続され情報交換する仕組み、IoT(Internet of Things)が注目されて久しい。実際IoTと聞いて、どんなものを思い浮かべるだろうか?例えば家電のIoTだと、外出先からエアコンをつけたり、風呂の追い炊きができたりと便利だ。

 

今、工場や発電所などでも、遠隔で管理するIoTサービスが期待されている。しかし、そこには課題がある。総務省の調査※1によると、「リアルデータ保護などのセキュリティ」「IoTを先導する組織・人材の不足」が浮き彫りになった。こうした課題も乗り越えるべく、東芝はエネルギー分野でIoTサービスを提供する。それが「TOSHIBA SPINEX for Energy」だ。一体どんな試みなのだろうか?

※1 総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(2018年)

エネルギー関連課題が、年々複雑化している!

「以前は、火力発電がエネルギーを支える柱でした。火力発電所を建設し、効率的に運転するのが普通でした。しかし、エネルギーを取り巻く環境は大きく変化しています」

 

そう語るのは、東芝エネルギーシステムズで、カーボンニュートラルやデジタルに関わる技術を統括する武田保氏だ。

 

東芝エネルギーシステムズ株式会社 デジタリゼーション技師長 武田 保氏

東芝エネルギーシステムズ株式会社 デジタリゼーション技師長 武田 保氏

エネルギー業界の変化は、激動と言っていい。デジタル化の進展と、カーボンニュートラルの必要性により、データにもとづく省エネやCO2削減が重要視されている。

 

「世界中のエネルギー関連企業が、カーボンニュートラルへの貢献を考えています。しかし、抱えている課題は複雑で、具体的に何をすべきかつかみ切れていないことが多い。そこで現在地を把握し、次の一手を考えるために必要なのが、『データ』です。東芝が注力してきたデータ収集、分析による改善などのソリューションが、カーボンニュートラル実現というニーズに合致したのです」(武田氏)

 

どういうことだろうか?発電の最適化を例に挙げてみよう。下図のように、いくつかの発電ユニットや燃料基地などの状況をIoTデータとして取り込み、求められている需要などの制約条件に合わせて発電計画を立てる。このときの目的は「燃料費と排出CO2の最小化」とされ、これに合わせて最適化計算をすることでCO2を削減し、発電所の経済性も向上できる。このように、現実世界において収集したIoTデータを、クラウド上で分析し、現実世界の発電ユニットの効率運営などに貢献するのがTOSHIBA SPINEX for Energyであり、東芝が注力するサービスである。

 

データ活用により、最適な発電計画をたてられるTOSHIBA SPINEX for Energy

データ活用により、最適な発電計画をたてられるTOSHIBA SPINEX for Energy

しかしこれは一例にすぎない。TOSHIBA SPINEX for Energyはカーボンニュートラルや省エネに貢献するための「仕組み」であるため、固定化されたサービスではなく、様々な顧客・環境において柔軟に適応できることが強みだ。TOSHIBA SPINEX for Energyが必要とされた背景について、武田氏は言う。

 

「元来、私たちの主要なお客様は、一定数の電力会社でした。今後、カーボンニュートラル実現に向けて発電設備のある工場などもお客様に加わり、その数は何百社とあります。これまでの決まったお客様のご要望に合わせたサービス提供から、『多様なニーズや課題に応えるサービスを、自由に簡単に組み合わせられる』ことへ変革が必要です。それを実現するのがTOSHIBA SPINEX for Energyです」(武田氏)

TOSHIBA SPINEX for Energyは、共創により課題を解決するデジタルサービス!

武田氏が強調するサービスの自由な組み合わせには、ユーザーの使い勝手が織り込まれている。具体的には、エネルギー業界に必要とされる標準サービスを、感覚的に扱えるソフトウェア部品が支えている。サービスが整っていることはもちろん、ソフトウェアの知見がなくても顧客やエンジニアが使いやすいように設定されている。そして重要なのは、皆で課題を解決していく「共創」の概念だ。

 

例えば、これまで人間が行っていた保守・保全をデジタル化して、省人化や設備稼働の長期化を狙うとする。デジタル化から始める際は、「巡視点検」、さらにそのデータを使った分析には「点検画像AI分析」といったサービスを活用。もっと自動化を進めたい場合は「ドローン・ロボット自動巡視点検」などを活用といったように、顧客の課題に応じて、適切なサービスを選択・サービスとして仕上げていく。

 

エネルギー関連課題を解決するTOSHIBA SPINEX for Energyには、最新の開発成果が随時反映されていく

エネルギー関連課題を解決するTOSHIBA SPINEX for Energyには、最新の開発成果が随時反映されていく

「カーボンニュートラルは、1社では実現できません。火力や原子力、水力などを手がける従来の発電事業者に加えて、再生可能エネルギーや蓄電システムの事業者などと連携して初めて効果が出せます。その連携を手助けし、多岐に渡る課題を解決するデジタル・プラットフォームがTOSHIBA SPINEX for Energyです」(久保氏)

 

そう語るのは、デジタルサービスの責任者を務め、TOSHIBA SPINEX for Energyの開発にも携わる久保洋二氏だ。

 

東芝エネルギーシステムズ株式会社 DX統括部 デジタルサービスオペレーションセンターシニアマネジャー 久保 洋二氏

東芝エネルギーシステムズ株式会社 DX統括部 デジタルサービスオペレーションセンター シニアマネジャー 久保 洋二氏

TOSHIBA SPINEX for Energyの仕組みを平たくいえば、標準サービスとソフトウェア部品を、解きたい課題に合わせて組み合わせることでソリューションをクラウド上で構築するもの。そのソリューションは、現場のエンジニアが使いやすいやすく、管理しやすいような形で提供される。

 

「東芝としての強みは2点。1点目は、サービスもソフトウェアも、東芝のエンジニア、研究者の知見、熟練技術を汎用化して実装していること。長年エネルギー業界で培ってきた知見を活かし、発電所や変電所、工場などでの機器の状態監視・故障予知・最適化運転などの支援を行うことができます。ある意味、東芝が積み重ねてきた経験とスキルをパッケージ化し、提供しています。

 

もう1点は、最終的にサービスを活用する機械系、電気系、フィールド系のエンジニアが使いやすいUI(ユーザーインターフェース)に仕上げることです。ソフトウェアのエンジニアではなく、現場で課題を解決するエンジニア目線で作る。これは、デジタルソリューションを現実世界で有効活用するのに欠かせません。お客様と東芝ともに現場エンジニアが、共創で課題解決できることが差別化の肝です」(久保氏)

クラウドでもオンプレミスでも!

今回TOSHIBA SPINEX for Energyを開発した理由は、複雑化するエネルギー業界の課題に合わせて、デジタルやクラウドでのサービス拡大が必要だったからだ。サービス自体は2019年から主に大手電力会社向けに提供していたが、重要な社会インフラとしてエネルギーを扱っておりセキュリティには厳しい。したがって、データをクラウドで共有することを前提にはできない顧客もいる。

 

そこで今回のTOSHIBA SPINEX for Energyは、クラウドに加えてオンプレミスでもサービスを提供できるようにした。オンプレミスは、顧客の現場において、システム稼働やインフラ構築に必要なサーバー、ネットワーク機器、ソフトウェア等を保有して運用する形態だ。東芝と同様のサービスを提供する他社がクラウドに舵を切る中、どちらもやるといった決断は非常に特徴的だ。

 

技術を統括する立場から武田氏は、「クラウドとオンプレミス、これで両輪がそろいました。ものづくりの歴史を持つ、東芝の矜持があるからこその判断です」と胸を張る。大手電力会社に対しては課題によってクラウドとオンプレミスの使い分けを提案し、その他事業者には基本的にはクラウドを提案する予定だという。

 

東芝の知見をいかしたサービス、ソフトウェアを、クラウドでもオンプレミスでも提供

東芝の知見をいかしたサービス、ソフトウェアを、クラウドでもオンプレミスでも提供

具体例を挙げれば、北海道電力と共創した「設備の不具合・性能低下の早期検知を目的とした、発電所のDX」がその1つだ。他案件で実績があるプラント監視ソフトウェア「EtaPROTM」と連携したクラウドサービスを提供。発電所の各設備に設置されているIoTセンサーから得られる運転データをもとに、本来あるべき運転状態(期待値)と現在の運転状態(実測値)を算出する。この数字を比較することで、設備の不具合や性能低下の兆候を検知するという。

 

久保氏は、TOSHIBA SPINEX for Energyが選ばれた経緯について、「東芝には、以前からEtaPROTMを使った監視業務に携わり、プラント稼働について知見がありました。お客様とのつながりが我々の強みであり、任せていただけた理由だと思います」と語る。

TOSHIBA SPINEX for Energyが人材を育て、デジタルサービスとしても発展!

TOSHIBA SPINEX for Energyは、東芝のあり方も変えつつある。1つはデジタル人材を育てる姿勢だ。デジタルサービス責任者の立場から、久保氏は次のように期待をにじませる。

 

「TOSHIBA SPINEX for Energyは、標準サービスとソフトウェア部品を組み合わせて、お客様に提供する仕組みです。そのため、現場でお客様に接する機械系、電気系、フィールド系のエンジニアがそれらを理解して、『お客様の課題なら、このサービスで解決できます』などと適切に働きかける必要があります。そのため、TOSHIBA SPINEX for Energyを操作しながら理解する取り組みを進めており、デジタル人材の育成につなげていきたいと思います」(久保氏)

 

もう1つは、エンジニアや研究者が培ってきたノウハウを、TOSHIBA SPINEX for Energyに組み込むことによるデジタル化の加速、ソリューションの高度化だ。技術を統括する立場から、武田氏がTOSHIBA SPINEX for Energyの発展の道筋を示した。

 

「一例ですが、火力発電所の蒸気タービンに使われている羽根の物理的劣化を予測する仕組みを研究者が開発し、TOSHIBA SPINEX for Energyの標準サービス『発電機器診断サービス』に組み込みました。この仕組みは現在国内外のお客様に提案中です。

 

お客様の課題を解決するには、『Smart:顧客価値を生む技術力』『Sustainable:持続可能な発展を生む社会への貢献』『Profitable:収益を生む健全な経営』の観点が大切です。(詳細はこちら

 

Smartでは、標準サービスとソフトウェア部品、快適なUIを組み合わせて、すばやく気のきいた課題解決を実現します。Sustainableでは、サーキュラーエコノミー、カーボンニュートラルを実現するために、共創を加速するデジタルサービスとして社内外に位置づけます。Profitableでは、プラントや設備監視、点検、延命化を行い、継続して収益の得られるビジネスモデルへと転換していきます」(武田氏)

 

武田氏は実際に共創を加速するため段階的に参加者の幅を広げながら、TOSHIBA SPINEX for Energyを活用するハッカソンを企画・実行している。サーキュラーエコノミー、カーボンニュートラルの実現は社会全体としての目標だ。だからこそ、エネルギー業界でも優先的に取り組み、変革を進めている。武田氏は「エネルギー業界での課題解決は、様々な業界に染み出しています」と指摘する。そして、「だからこそ発展の機会がいくつもある」と締めくくった。

 

TOSHIBA SPINEX for Energy page

 

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