産業用ドローンの新時代 電力インフラ点検で異業種コラボ

2017/03/01 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • ドローンを活用した電力インフラ点検システムの開発現場に潜入
  • 2018年商用化を目指し共同開発中
  • 「自動飛行」と「自動検出」で高効率な作業を可能に
産業用ドローンの新時代 電力インフラ点検で異業種コラボ

空撮や測量、物流、農業にとさまざまな用途で活躍が始まっている産業用ドローン。2020年には1,138億円、現在の約10倍以上に市場規模が広がるという試算もあり、多くの企業が参入を狙っている。中には、異業種のエンジニアたちが協業し、新たな利用形態を模索する動きも。

 

その先頭集団に名乗りを上げたのが、東芝・アルパインが目指す電力インフラ向け巡視・点検システムだ。ドローン新時代を告げるコラボレーションを追うべく、福島県いわき市に飛んだ。

アルパイン株式会社のドライブアシスト評価センター

ここはアルパイン株式会社のドライブアシスト評価センター。
トンネルや悪路、坂道などを備えた走行路があり、総面積5万3,000㎡という広大なスペース。

 

本来は車載機器の開発で使われるテストコースだが、現在は東芝・アルパイン「共創」のドローンが試験飛行の真っ最中だ。

東芝・アルパイン「共創」のドローン 試験飛行

低い音を立て、軽快に飛び立っていくドローン。時速は70kmをマークしている。外周1kmのコースをあっという間に周回し、静かに着地した。開発陣が操作画面を見守る管制塔を回るコースや、電力会社から確保した電線に沿って飛ぶコースなど、多彩な飛行パターンが入念に繰り返されていた。

 

この動画は2017年3月1日に公開されたものです。

試験飛行を熱心に見守るプロジェクトスタッフに、「共創」の経緯を聞いた。

管制塔からドローンを制御し、入念にテスト

ドローン自動飛行のカギを握るのはプログラムとセンサーの連携にある。管制塔からドローンを制御し、入念にテストを繰り返している。

老朽インフラの点検――国家的な課題にドローンを活用する

東芝・アルパインは車載分野を中心に協業を進めているが、新たな事業領域での提携を模索。2015年5月に共同プロジェクトがスタートする。

 

「両社からメンバーが集まり、10人ほどで何度もミーティングを繰り返しました。当初は自由にテーマを出していき、58個ほど挙がった項目から、実現性の高いものを両社のリソースとすりあわせて絞り込みます。自動車向けのソリューションなど、いくつかの有力な候補から実地見分を進める中、ドローンが有力な候補に絞り込まれていきました」(アルパイン 小野貴浩氏)

 

「ドローンを駆使してどんなビジネスが考えられるのか? そんな基点からストーリーを組み立て始めました。現在、社会インフラの老朽化対策が国家レベルで急務とされています。そのインフラ点検にドローンを活用できないかと私たちは考えました。東芝は電力会社とビジネスでお付き合いがありますので、電力インフラの点検用途にフォーカスしていったという流れがあります」(東芝 松田光司氏)

東芝 松田光司氏、藤井朗氏、三田惠補氏

(左から)東芝 松田光司氏、藤井朗氏、三田惠補氏

現在、電力会社が実施する送電線や鉄塔の巡視・点検は、習熟した保全作業員による目視点検が主流になっている。しかし、山間部などでの点検は移動による点検時間の増大、危険対策などが課題になる。ドローンを活用することで高所の送電線や鉄塔上部を安全・スピーディーにチェックでき、作業時間の短縮や安全性の確保につながる。

 

「ビジネスの可能性は見つかりましたが、プロジェクトを進めるためには、事業として実際に成立するどうか、綿密な検証が不可欠です。私と三田が全国の電力会社を巡り、保全業務をどのように行っているのか、ドローンがあったらどのように活用できるのか。入念にヒアリングを重ねてまいりました」(東芝 藤井朗氏)

 

「電力インフラの点検サービスを事業化するには安全を担保する高度な信頼性が求められています。両社で密にコミュニケーションを取り、産業用向けドローンシステムを両社メンバーが一丸となって開発中です。
プロジェクト運営には企業文化の違い・壁を乗り越えなければならない課題があります。VoC(Voice of Customer:お客さまの声)を聴くことから始めています」(アルパイン 首藤秀行氏)

アルパイン 首藤秀行氏、青柳茂夫氏、小野貴浩氏

(左から)アルパイン 首藤秀行氏、青柳茂夫氏、小野貴浩氏

両社のストロングポイントがドローンサービスで結実する

2018年4月の商用化を目指し、試行錯誤を繰り返しながらプロジェクトを進めている。ドローンを安全・高効率に飛ばす「自動飛行」技術、破損などを迅速に見つける「自動検出」技術ともまだ開発の途上だが、いくつかのステップで設定された技術判断ゲートをクリアすべく、プロジェクトメンバーは奮闘を続けている。

 

「山中や海岸沿いなど、高所でのタフな使用が前提になりますから、安全・高効率な飛行を目指して課題はつきません。電線のたわみに沿って飛ぶプログラムや、安全に飛ばすためのフェールセーフ(※)の仕組みなど、このコースで入念にテスト。ドローンが撮影した鉄塔、送電線の画像を電力会社の方々に見ていただきながら、慎重に開発を進めているところです」(アルパイン 青柳茂夫氏)

※フェールセーフ:故障や誤作動が発生した時にも常に安全な方向に動作させる仕組み
この動画は2017年3月1日に公開されたものです。

「安定した自動飛行をアルパインさんに実現していただいたら、今度は東芝の画像認識・処理技術、そしてAIが強みを発揮します。鉄塔や送電線の破損などを迅速に自動検出するシステムです。この「自動飛行」と「自動検出」の両方があってこそ、本サービスは優位性を発揮できると考えています。保全作業の効率化では音声認識の活用も視野に入ってくるでしょう。保全作業全体の効率化を目指し、安心・安全なインフラ点検に貢献できればとの思いがあります」(東芝 三田惠補氏)

 

この動画は2017年3月1日に公開されたものです。

アルパインの技術が安定・高効率な自動飛行を担い、東芝の技術が精度の高い画像認識・自動検出を確保する。両社が長年のサービス開発で培ってきたリソースこそ、ドローンサービスを離陸させる揚力なのだ。

東芝とアルパインの担当者

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