マンホールアプリ「Manhoo!」が 生み出す新たな情報の姿とは?

2017/11/29 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • マンホーラー待望のアプリ「Manhoo!」の実証実験が行われた!
  • 「Manhoo!」の画像データ・位置データの意外な活用方法とは?
  • 「Manhoo!」がもたらすのは「モノと情報のシンプルな関係」。
マンホールアプリ「Manhoo!」が 生み出す新たな情報の姿とは?

普段、何気なく踏んでしまっているマンホール蓋。一度、立ち止まって、注目してほしい。街中で見られる極上のアート作品をこれまで見過ごしていたことに気付く読者も多いはずだ。

 

実は、マンホール蓋には地域ごとにデザインが違う「ご当地モノ」がある。横浜市はベイブリッジ、富士市は富士山、岡山市は桃太郎と、マンホール蓋にはその土地にゆかりのあるデザインが施されている。それらの多くは全国共通で直径60cmのフレームに描かれ、サイズの統一感も魅力の一つだ。約40年の歳月をかけ、路上に点在するキャンパスで生み出されたアートは、近年、世界各国から自国にはない文化として注目を集めている。

 

そのような中、マンホール愛好者“マンホーラー”待望のスマートフォンアプリ「Manhoo!(マンホー)」が従業員を対象とした社内のベンチャー支援制度から誕生し、この秋、実証実験が行われた。その模様をレポートしよう。

10月21、22日に東京湾大感謝祭にてManhoo!の実証実験が行われた

10月21、22日に東京湾大感謝祭にてManhoo!の実証実験が行われた

実証実験が始まった!

Manhoo!とは、マンホール蓋を探して、撮影し、それを地図上に投稿してシェアするスマートフォンアプリ(マンホールの蓋を探して、撮って集めて、街を楽しむアプリ)。これまで覚えておくのが難しかった撮影時間や撮影場所をスマートフォンで記録してくれる点がマンホーラーとしては魅力の一つだという。

 

今回の実証実験では、プロトタイプのManhoo!を来訪者に実際に使用してもらい、感想などを集計した。この実験で確かめた点は大きく分けて3つあった。

 

「Manhoo!の機能は写真を撮影してシェアすることだけではありません。いくつかの特殊なマンホール蓋を見つけると、アプリ上でデザインカードがもらえますが、その裏面にはマンホール蓋周辺の商店などのクーポン情報が記載されています。この機能が地域の活性化にどれだけ役立つかを調査することがこの実験のポイントの一つです」

 

そう語るのは、Manhoo!を考案した東芝デザインセンターの魏彤舲(ギ・トウレイ)氏。実は魏氏は今年入社2年目の社員だ。若手の豊かな発想力がManhoo!というアプリを生み出した。

Manhoo!で特殊なマンホールを見つけると周辺の施設やお店の情報とクーポンがもらえる(カード表が左、カード裏(クーポン)が右)

Manhoo!で特殊なマンホールを見つけると周辺の施設やお店の情報とクーポンがもらえる(カード表が左、カード裏(クーポン)が右)

これまでにもマンホーラーの心をくすぐるアイテムとして、各地域でもらえる紙の「マンホールカード」(※)が作られているが、このカードを取りに来る人の6割以上が県外からだという。そしてカード獲得後は、そのカードに記載されたマンホールの場所を実際に訪れるケースが多い。この回遊性が観光に寄与できるとして、地方自治体もデザインに優れたマンホール蓋を観光地や商業施設に意識的に設置するようになっている。

 

※下水道広報プラットホーム(GKP)が自治体と共同で制作しているアイテム。その自治体を訪れれば、無料でもらうことができ、「各地域がマンホールを紹介するパンフレット」として、多くのファンを虜にしている。

このマンホールカードの生みの親・下水道広報プラットホーム(GKP)の山田秀人氏もManhoo!の開発段階から関わっているメンバーの一人だ。

 

「マンホールカードは、IT化が進む社会の中で、『地方に足を運び、その土地で楽しむ』という流れを生み出しました。しかし訪れた地での楽しみ方の提供はまだまだ不十分です。ここからはITのチカラも重要です。Manhoo!には、これまでなかった、マンホール蓋を使った土地訪問後の楽しみ方を提供できるのではないかと期待しています」(下水道広報プラットホーム 山田秀人氏)

Manhoo!の打ち合わせを重ねる魏氏(左)と山田氏(右)、GKPの高橋瑠花子氏(中央)

Manhoo!の打ち合わせを重ねる魏氏(左)と山田氏(右)、GKPの高橋瑠花子氏(中央)

実証実験の目的の2つ目は下水道のイメージアップだ。

 

「下水道は私たちにとって非常に大切なライフラインですが、『臭い、汚い、不衛生』というイメージを持たれています。当然、国民の興味関心度も低いです。下水道を優良なイメージに変えること。このとてつもなく困難なテーマが下水道広報の最大の課題です」(山田氏)

 

ITとは無縁にも見えるマンホール蓋だが、実はスマートフォンとの相性は抜群。各地を訪れて、ご当地モノであるマンホール蓋を訪問記念としてスマートフォンで撮影し、SNSに投稿。Manhoo!は、この流れを整理して楽しみやすくしたアプリだともいえよう。

 

「Manhoo!を使って遊んだユーザーは、いっそうマンホールの“楽しさ”に気づくはずです。そんな素敵なマンホールに欠かせないのが下水道関係者。Manhoo!が一般の方々と下水道関係の方々をつなぐ一助になればと思っています」(魏氏)

景品のデザインTシャツは、横浜市と中土木事務所の担当者と一緒にベイブリッジの蓋を使ってプリントした

景品のデザインTシャツは、横浜市と中土木事務所の担当者と一緒にベイブリッジの蓋を使ってプリントした

これら2つの目的達成のためには、何よりもユーザーに面白いアプリだと認識してもらうことが重要だ。これが実証実験の3つ目のポイント。

 

「山田さんには特に『何を最優先に実現しなければいけないか』という点についてアドバイスをいただきました。当初、やりたいことがたくさんあったんです。ユーザーには周辺の商店にも行ってほしいし、土地の文化も知ってもらいたいし・・・。でも、「デジタルのカードにはデジタルのカードの価値がある」という山田さんのアドバイスによって、まずはユーザーにManhoo!を楽しんでもらうことが一番だと思い、Manhoo!独自のデザインカードを作ることにしました」(魏氏)

実証実験でもスタンプなどを使い、“楽しむ”ことを意識

実証実験でもスタンプなどを使い、“楽しむ”ことを意識

今回の実証実験の天気はあいにくの雨。しかし、そのおかげで発見できた課題もあったという。

 

「今回の実証実験では、ユーザーが傘をさしながらマンホール蓋を撮影したためにGPS機能がうまく働かず、マッピングされた位置が実際のマンホール蓋の位置とずれてしまいました。こうした機能面での改善もこれからの課題です」(魏氏)

傘をさしてマンホール蓋を撮影する実験参加者

傘をさしてマンホール蓋を撮影する実験参加者

探して集めて街を楽しむアプリManhoo!。私たちが楽しく遊ぶ裏で、非常に貴重なデータが収集されていることにお気づきだろうか。このデータ活用の側面にフォーカスし、Manhoo!のさらなる魅力に迫ってみよう。

公共財に情報を与えるプラットホームへ

「日本にはマンホール蓋が約1,500万枚ありますが、その耐用年数は車道で15年、歩道で30年と設定されており、維持・更新は自治体が行います。しかし各自治体とも予算は非常に厳しく、現在は耐用年数の長い30年で見ても、少なくとも300万枚程度は耐用年数を超えてしまっている状態にあるといわれています」(山田氏)

マンホールについて熱く語る山田氏と高橋氏

マンホールについて熱く語る山田氏と高橋氏

そのような中、現在、マンホール蓋は優先順位をつけて計画的な交換が進められているが、大都市以外の自治体では、マンホールがどこに何カ所あって、いつその蓋が設置されたかを記録している管理台帳の情報が不十分だったり、データ化されていなかったりする場合も多い。

 

そこで生かせるのがManhoo!に蓄積された写真の画像データと位置データだ。現在では、マンホール蓋の表面写真で設置した時期などの算出が可能であるため、Manhoo!で収集されたデータは管理台帳データとして非常に大きな価値を持つ。

 

「Manhoo!のカメラ機能に円形のガイド線を設けてもよいかもしれませんね。ユーザーはよりきれいにマンホール蓋を撮影できますし、同時に自治体はより確実に近づいて撮影された詳細な画像データを収集することができますから」(魏氏)

 

魏氏のアイディアは次々と生まれ、とどまるところを知らない。

魏氏は「ITを活用してマンホールを社会貢献に結び付けたい」と語る

魏氏は「ITを活用してマンホールを社会貢献に結び付けたい」と語る

クーポン情報に、マンホール蓋写真のシェア。デジタル上のデザインカードに、マンホール蓋の画像データ・位置データ。「IT×マンホール」が生み出す力には目を見張るものがある。

Manhoo!で撮影したマンホール写真(左)と、マンホール撮影で獲得できるデザインカード(右)

Manhoo!で撮影したマンホール写真(左)と、マンホール撮影で獲得できるデザインカード(右)

「もともとManhoo!の出発点には、モノに対していかにして情報を付与していくべきかという思いがありました。現在、一つのサイネージや一つのウェブサイト上で、雑多な情報があふれかえり、個々人にとって本当に欲しい情報が見えにくくなっています。その点、Manhoo!はモノと情報との関係がシンプルに設計されているため、ユーザーは撮影するマンホール蓋とその場所に直接関係のある情報しか引き出すことができません。Manhoo!を通じて、マンホールという公共財に情報を与えるプラットホームとしていきたいと思っています」(魏氏)

 

今後、改善していかねばならない課題が山積みだという魏氏。日本のマンホール蓋は、長い年月をかけて作りこまれてきた分、幅広い楽しみ方ができる奥深さがある。これは先人たちが残してくれた宝なのかもしれない。この宝を楽しみ、結果として「日本独自の文化物」として育むためのツールとして、これからも進化を遂げていくであろうManhoo!を温かく見守っていってほしい。

Manhoo!のロゴマーク

Manhoo!のロゴマーク

関連サイト

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‎「Manhoo!」をApp Storeで

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