応援する心はきっと届く! 東芝野球部を46年間見守った笑顔
2019/09/25 Toshiba Clip編集部
この記事の要点は...
- 東芝野球部を陰から支え続けた社員
- 選手と応援団の双方に慕われる人柄
- 東芝に息づくスポーツ文化への想い
令和元年7月30日付の毎日新聞に、ある東芝社員が取り上げられた。その社員は山田清美氏。実は、山田氏は9月末日をもって定年退職する。そんな彼女が新聞に取り上げられた訳とは。
東芝野球部を陰から支え続けた一社員
山田氏の所属は、スポーツ推進室。ここは、東芝の野球部とラグビー部の活動をサポートする部署である。
東芝ヒューマンアセットサービス株式会社 スポーツ推進室 山田清美氏
「入社後の最初の配属先は本社総務でした。その当時は野球部の監督もマネージャーも本社総務部の所属でしたので、野球の試合の度に手伝いに行ってました」(山田氏)
「野球部に入部するとマネージャーに最初に言われます。わからないことは、俺か山田さんに聞けって」
そう語るのは、東芝野球部採用担当兼アナライザーの大河原正人氏だ。大河原氏は今年からスポーツ推進室所属となり、山田氏とともに野球部の活動を支えている。
東芝野球部採用担当兼アナライザーの大河原正人氏
もともと本社総務部で福利厚生を担当していた山田氏は、野球部員の福利厚生関係の手続きのほとんどを担当してきた。
「入社したばかりだと思っていた子が、結婚しました、子どもができましたって、手続きをかねて報告に来るのが楽しみでした。そして、毎年試合当日に奥さんとお子さんが東芝野球部のテントに来て顔を見せてくれる。まるで、親戚や家族と会うような気持ちでした」
試合中、山田氏は常に入場受付のテントにいる。受付のテントなので、スタジアムの外にある。そこから試合を見ることはできない。
「私たち野球部員は、受付テントとは違う選手用の入り口を使いますので、入場時に山田さんに会うことはありません。だから、山田さんが試合を全然見ていないなんて思ってもいませんでした」(大河原氏)
山田氏は、都市対抗野球大会での7度に及ぶ東芝の優勝のすべてを陰から支えながら、一度も試合を見たことがないのだ。もちろん、胴上げも表彰式も見ていない。
「今年は最後だから、優勝したら表彰式を見に行こうって思っていました」(山田氏)
だが、それはかなわなかった。
東芝は、準決勝で惜しくも敗れてしまった。
選手と応援団が一つになれるのが、スポーツの魅力
都市対抗野球大会での試合当日、山田氏のいるテントには、様々な人々が訪れるという。応援に来てくれる方はもちろん、選手の家族、東芝OB、野球部OBやその家族までいろいろな人が来る。
「みんな、山田さんに声をかけていくんですよ。『山田さんは?』って探し回る人もいます。そして、みんなひとしきり話をしてからスタンドに入っていく。野球を見に来たのか、山田さんに会いに来たのか、どっちなんでしょうかね」大河原氏は笑いながら言った。
試合の後、テントには大勢の東芝応援団が訪れる。勝った試合のときには、「勝ったよ!」「よかったね!」と、みんな山田氏に報告していく。山田氏は、大勢の観客とハイタッチで挨拶をして、次戦また応援に来てくれることを心の中で願うのだ。
来年の都市対抗野球大会は、例年とは異なる11月に開催されることが決まっている。立場が変わることになる山田氏は、どこで応援するのだろうか。
「まだ決めていないですが、観客席で応援して、表彰式を見たいと思っています。でも、球場に来なくても、どこにいても、応援する心があれば、それが力になるんだって思っています」(山田氏)
そして山田氏は、会社が不正会計問題や経営危機に直面していたころの話を始めた。
「当時は、会社がどうなるかもわからない状況で、野球どころじゃないっていう話もありました」
ある試合で、相手のチームの応援団は15,000人以上に対して、東芝側応援席には4,000人ほどしかいなかったという。その試合には、綱川社長も応援に来た。
「応援に来てくれる人が少ないことを心配していたのが私の顔に出ていたんでしょうか、みんなテントにいる私に『がんばって、会社で応援している人もいるから』って言ってくれたんです」(山田氏)
その試合は、9回までリードを許していた東芝が、大河原氏のタイムリーヒットで同点に追いつき、延長の末逆転勝利を収めた。
「どの試合でも勝ってくれたらうれしいんですが、その日は特にうれしかったのを覚えています。会社が大変なときでも、野球部はいつものようにがんばってくれている。きっとこの活躍に元気づけられている人もいるんだと思いました」
最後に山田氏は、優しげな笑みを浮かべながら言った。
「野球部とラグビー部には、これからもがんばって欲しいですね。選手と社員、そして応援してくれる大勢の人たちの心が一つになる、そんなスポーツ文化がいつまでも東芝の中で生き続けてくれればうれしいですね」
46年間にわたり東芝野球部を陰から支えてきた山田氏は9月で東芝を去る。山田氏は自分が去った後の東芝を見守ることを楽しみにしているという。それは、後輩たちが、東芝と東芝のスポーツの新しい未来を始動させる意欲に満ちあふれているからだそうだ。