上りと下りは音で分かる!? 知られざるエレベーターのトリビア

2017/08/09 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • エレベーターの上りと下りは到着音で判別できる!?
  • かご側面の操作盤は扉横の操作盤とちょっと違う
  • 日本初を東芝が導入。稼働エレベーターの7割を占めるその構造とは?
上りと下りは音で分かる!? 知られざるエレベーターのトリビア

マンションやオフィス、駅や公共機関などで、毎日のように利用されているエレベーター/エスカレーター。その裏には安心・安全な移動を支える最先端の技術、そして開発陣の取り組みがあった。まずは、知っているようで知らないエレベーター/エスカレーターのトリビアに迫り、何気なく利用している移動手段の裏側をのぞいてみよう。

意外に知らない!? エレベーター&エスカレーターのトリビア

★エレベーター編★

 

【トリビア1:エレベーターの上り/下りは到着音で分かる】

 

エレベーターが上昇するのか、下降するのかは、矢印の点灯と階数表示以外にも判別できる。それは、現在いるフロアにエレベーターがやって来た時の「到着音」。到着音は「ピン」と「ポン」という2音で構成されているが、2音目が1音目よりも高い場合「ポン・ピン」は上り、低い場合「ピン・ポン」は下りとなる。「到着音」が設定されているエレベーターを利用する際には、耳を傾けてみてほしい。

 

※東芝のエレベーターは基本的に上記のように設定されていますが、エレベーターによっては異なる場合もあります。

 

この動画は2017年8月9日に公開されたものです。

【トリビア2:閉じかけたエレベーターに乗ろうとすると開くドア。一体何を感知している?】

 

ドアに挟まれる事故を防ぐために取り付ける安全装置「ドアセフティ」。機械式と電気式の2種類があり、機械式は閉じつつあるドアに人体などが接触するとドアが反転し、電気式はドア先端部に組み込まれた赤外線センサーが人体などを感知する仕組み。電気式は非接触で感知し、ドアに衝突する前にドアを反転させられる。最新機種では機械式だけでなく、電気式も基本仕様としており、より安全に快適に利用できるようになっている。

 

東芝エレベータ標準形マシンルームレスエレベーター「SPACEL-GRⅡ」(スペーセルGRⅡ)向けの機能「スマートドア」は、ドアに向かってくる人がいたら乗客と判断してドアを開けたまま待機し、ドアの前を通過する人は通行人と判断してドアを閉める新技術。最新の画像解析技術により、エレベーターに乗りたい人なのか、通り過ぎる人なのかを判断する仕組みだ。ドアへの挟まれも検出でき、効率的なエレベーターサービスと安全性を両立させている。

スマートドア

【トリビア3:エレベーターのかご内側面に設置されている操作盤は通常の操作盤と違う】

 

かご内側面の操作盤は、車いす利用者が使用することを想定して設置されている。車いす利用者の移動に配慮し、この操作盤から目的階を登録すると通常の操作盤から登録するよりもドアが開いている時間が長めになる。操作盤の高さも使い勝手を考慮して、通常の操作盤より設置位置を低くしており、ユニバーサルデザインに沿った配慮をしている。

 

【トリビア4:定員は1人あたり65kgで計算される】

 

ご存じの通り、定められた積載量の上限を超えてエレベーターに乗ると、警告のブザーが鳴る。これは、エレベーターには、かごに乗った積載量を計測するセンサーが組み込まれているため。日本では定員1人あたり65㎏と見なして積載量の上限を定めているが、海外では平均体重の違いから定員1人あたり75kgと定めることが多い。

 

★エスカレーター編★

 

【トリビア:エスカレーターのスピードは分速30mがスタンダード】

 

エスカレーターの速度は国土交通省告示に定められており、勾配が8~30度以下の場合で分速45m以下と定義されているが、一般的なエスカレーターは分速30mに設定されていることが多い。急ぐ人が多い駅のエスカレーターは高速に設定されていることがある一方、商業施設では高齢者も安全に利用できるよう低速に設定されることもある。さまざまな利用シーンに応じた気配りが込められているのだ。

 

エレベーター/エスカレーターをめぐるさまざまなトリビア。こうした意外な側面はなぜ一般的に知られていないのか。その理由は人間とエレベーター/エスカレーターとの関係性にあると、東芝エレベータの佐野浩司氏は言う。

 

「エレベーターでは、「行先階取消機能」も、トリビアとしてメディアが取り上げてすっかり話題になりましたね。それから、以前の記事で、かごと乗り場のすき間をなくした「しきい間すきまレス」という最新機能も取り上げていただきました。エレベーターはボタンを押したら当然のように来る、もはや「乗っている」感覚すらないほど当たり前のインフラになっています。そのため皆さん、あまり細部まで観察しようと思わないのです。しかし思いのほかに知らないことは、まだまだたくさんあるのですよ」(東芝エレベータ株式会社 技術本部商品企画部 部長 佐野浩司氏)

東芝エレベータ社 技術本部商品企画部 部長 佐野浩司氏

東芝エレベータ 技術本部商品企画部 部長 佐野浩司氏

安心・安全を担保しつつ、さらに快適な乗り心地を目指して

さらにエレベーターの裏側に迫るべく、構造面からエレベーターをクローズアップしてみよう。エレベーターには、かごを上下に動かすための駆動用品が必要であり、90年代後半までは、主な駆動用品である巻上機(モータ)や制御装置を、かごが移動する昇降路の上部に機械室を設けて設置していた。だが現在の主流は巻上機や制御装置をコンパクトにして昇降路内へ設置するマシンルームレスタイプだ。

 

マシンルームレスエレベーターは、1998年に東芝エレベータが日本で初めて導入しました。高層ビルでは高速エレベーターが求められるため、用品サイズの制約から機械室を設けるタイプのエレベーターが採用されますが、現在はエレベーターの7~8割をマシンルームレスエレベーターが占めるようになっています。機械室を設けない分、建物としてスペースを有効活用でき、レイアウトの自由度も高まることがメリットになります」(東芝エレベータ株式会社 技術本部商品企画部 商品戦略担当 グループ長 熊谷将一氏)

東京エレベータ 技術本部商品企画部 商品戦略担当 グループ長 熊谷将一氏

東芝エレベータ 技術本部商品企画部 商品戦略担当 グループ長 熊谷将一氏

マシンルームレスエレベーターのラインアップは分速45mから分速105mまで。分速105mのエレベーターは高さ約50m程度の建物に設置されており、最上階まで1分で行けるスピードが目安になるそうだ。

 

東芝エレベータのエレベーターの最新機種は、マシンルームレスタイプの「SPACEL-GRⅡ」。先述の「しきい間すきまレス」や「スマートドア」などで安全性・安心感の向上を図っているほか、乗り心地を快適にするための工夫も随所にこらされている

 

「高速エレベーターに適用していた「ローラーガイド」(※注1)を中低速エレベーターの主力機種にも取り入れ、滑らかで快適な乗り心地とともに、オイルレスによる環境配慮も追求しています。その他、かご背面に設置するミラーの中から映像が浮かび上がるミラーサイネージ、4カ国語でアナウンス・表示をするユニバーサルガイドなどのオプション機能もあります。利用者に対する安心・安全を最優先にしつつ、さまざまな付加価値をお客さまへご提案したいと考えています」(佐野氏)

 

※これらのユニークで快適な新機能は後編でもご紹介(8月23日公開予定)

エレベーター

東芝マシンルームレスエレベーターSPACEL-GRⅡ。 PRM-IS(左)とDLX-6L(右)

人々の移動手段として「安全・安心」を第一義に置き、見えないところで快適性の向上を目指し続ける。日々利用し、身を委ねるインフラ設備として、エレベーターはますます頼れる存在になっているのだ。

 

■脚注
※注1 ローラーガイド:ローラーを使って、かごをガイドレールに沿って上下させる装置。ローラーを用いるため、振動や音が軽減できる。

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