カーボンニュートラル社会実現への東芝の取り組み

2022/08/10 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 気候変動対策として、カーボンニュートラルへの取り組みが必須
  • エネルギーを「つくる」「おくる」「ためる」「かしこくつかう」のそれぞれの段階で東芝がカーボンニュートラルに貢献
  • カーボンニュートラルに貢献できるCO2排出削減のための、東芝の具体的な技術
カーボンニュートラル社会実現への東芝の取り組み

地球規模の課題である気候変動の解決へ向けて、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指す動きが欧州をはじめとした世界各国で主流となっている。さらに、エネルギー安全保障上のリスクが高まっている影響もあり、CO₂を排出せず、かつ自国で供給できる再生可能エネルギー(再エネ)への注目度合がますます高くなっている。

東芝は、カーボンニュートラルの実現のために

  • CO₂排出を低減する発電方法の開発(エネルギーをつくる)
  • 送配電、エネルギー需給調整・マッチング(エネルギーをおくる)
  • 貯蔵(エネルギーをためる)
  • エネルギーを無駄なく効率的に活用する(エネルギーをかしこくつかう)

という4つの工程においてカーボンニュートラルに貢献している。今回は、それぞれの東芝の取り組みについて紹介する。

「つくる」から「かしこくつかう」まで。幅広い領域でカーボンニュートラルに貢献

カーボンニュートラルとは、CO₂をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林などの吸収量を差し引いた数字の合計をゼロにするということだ。「CO₂排出を減らす」というと、私たち生活者にとってはガソリン車から電気自動車に変えることや、エアコンの頻繁な使用を避けるなどといった省エネが一番イメージしやすいだろう。東芝の事業範囲は、発電所などエネルギーをつくる段階から、交通機関など私たちが利用するところまでカバーしているため、エネルギーを「つくる」「おくる」「ためる」そして「かしこくつかう」まで、幅広い領域で排出量を軽減することができるのだ。

まず始めに「つくる」では、火力などCO₂を排出する発電においても、発電時に発生する排ガスからCO₂を分離回収したり、CO₂を排出しない火力発電を目指したり、CO₂を排出しない原子力発電システムの提供を行っている。

また、CO₂をほぼ排出しない風力、太陽光、水力、地熱といった再エネの事業展開を進めている。

カーボンニュートラルを達成するには再エネのさらなる推進が必要だが、今、日本の電源構成における再エネの割合はわずか2割程度だ。世界的に見て、国内ではまだ再エネの導入が進んでいるとは言えない。太陽光や風力などの再エネは天候によって発電量が左右されるため、常に安定した供給があるわけではないので、再エネから得た電力を利用者に安定的に届けるためには、再エネの発電量を増やすことに加えて、不安定な発電量を調整していく必要がある。

そのため、「つくる」段階では火力、原子力のような安定した電源による発電や、水力のような電力需要に合わせて出力調整が容易な発電が必要となり、東芝は発電設備の開発を行っている。

また、「おくる」とき、電気を必要としている利用者につなげる需給のマッチング技術や、電力ロスを減らす送電技術を開発している。

さらに、「ためる」段階でも、余った電力を短時間に「ためる」ソリューションとして、リチウムイオン二次電池(SCiB™)を提供しており、長時間ためるソリューションとして余剰電力を水素に換えてエネルギーの輸送・貯蔵を可能にしている(Power to Gas)。このような技術により、不安定な発電量の調整を担うことができるソリューションを開発している。

そして「かしこくつかう」では、CO₂を排出しない社会を実現するために、公共交通機関にSCiB™を搭載し電化を推進している。さらに、火力発電などの施設から排出されたCO₂をリサイクルして燃料として使用できる技術(Power to Chemicals)を開発。このように、様々な分野でカーボンニュートラルに貢献できることこそが、東芝の強みだ。これから、「つくる」「おくる」「ためる」「かしこくつかう」それぞれに適した具体的な東芝の技術を紹介していく。

「つくる」「おくる」「ためる」「かしこくつかう」でカーボンニュートラルに貢献

「つくる」:風力発電でカーボンニュートラルを実現

●洋上風力発電への取り組み①:GEとの戦略的提携契約

カーボンニュートラルに貢献する再エネの中で風力発電は、昼夜を問わず安定したエネルギー生産の期待できる発電方法だ。この風力発電装置を、より安定的に大きな風力の得られる海洋上に設置して発電を行うのが洋上風力発電である。

日本の洋上風力の発電容量は、今後大きく増加する見込みである。洋上風力市場の成長に貢献するため、東芝は、豊富な洋上風力タービンの稼働実績を有し、洋上風力プロジェクトのエンジニアリングおよびプロジェクト管理の経験をもつGEとの協力体制を築いた。東芝は、国内生産、高度なスキルを持つ技術者、エネルギー分野の高い専門知識、日本の洋上風力市場に関する深い見識で洋上風力市場へ貢献する。

 

お互いの強みを生かし洋上風力プロジェクト推進

洋上風力発電への取り組み②:陸上風力で培った風況解析技術とO&M

風力発電では、風車の設置場所や、複数台設置する際の並べ方などで、生産する電力に大きな差が生じる。東芝では、陸上の風力発電で培った知見と、最新のデジタル技術を融合することで最適な設置場所を見つけ出し、発電効率のより良い洋上風力発電の実現を目指している。具体的には、風車を通過した風の乱れが増加する現象「風車後流 (ウエイク)」や海面温度などによる影響を、独自の解析技術により正確に評価し、最適な立地・配置、運用条件の提案を可能にしている。

陸上風況解析で、最新のデジタル技術で解析し、風力発電の最適な設置場所を見つけ出す

洋上風力の発電機も、他の発電所と同様に、安定稼働のために日々の制御とメンテナンスが欠かせない。だが、洋上に設置された施設に技術者が常駐することも頻繁に行き来することも難しいため、リモートによる管理・運用が必要となる。東芝では、風車のデータをデジタル化し、可視化・分析することでO&M(Operation & Maintenance)業務の効率化を実現し、不具合などの異常検知を即時に可能にしている。

「おくる」:VPPの需給調整・マッチング技術

温室効果ガスの排出を抑える技術を用いて作られたエネルギーを、必要とされるところに効率よく届けるための「おくる」技術もカーボンニュートラル実現に欠かせない。「おくる」では、東芝が長年取り組んできた、発電と送電からなる電力系統の制御状況をデジタル化する技術や、電力を供給する設備と電力を必要とする設備の状況をデジタル空間上で再現することでカーボンニュートラルに貢献している。

具体的には、再エネが持つ「天候によって発電量が安定しない」という問題の解決のため、「VPP(バーチャルパワープラント:仮想発電所)」と呼ばれる新しい技術の実用化が進められている。このVPPは、「つくる」段階の再エネや「ためる」段階の蓄電池などの分散型電源と呼ばれる様々なエネルギー源をIoT機器によって遠隔制御し、一つの発電所のように機能させる。また、電力需要量と発電量を正確に予測し、制御することで、エネルギーの需給バランスを調整し、再エネ電力の安定使用を可能とする。再エネ大量導入の促進、カーボンニュートラルの実現に貢献する技術である。

VPPで、分散するたくさんの発電設備や蓄電設備を、刻々と変化する需給の状況に応じてリアルタイムに制御

「ためる」:電力を水素に転換するP2G (Power to Gas)

太陽光発電や風力発電といった再エネは、気象状況による発電量の変動が大きく、コントロールが困難であり、急激な出力変動により電力の需給バランスが不均衡となるなど系統安定化の面での課題もある。こうした課題を解決するために、変動する発電量に応じて需給のバランスを調整し、かつ電力エネルギーを無駄なく、必要な時、必要な場所、必要な目的で利用できるように水素に変換することで、大容量の貯蔵が難しい電力の貯蔵を可能とするP2G(Power to Gas)という技術を開発した。

このP2Gにより転換された再エネ由来の水素は、FCVの燃料や、工業プロセスなど様々な分野で使用され、CO₂排出量低減に貢献できる。

余った電力を水素に転換して貯蔵し、様々なエネルギー源へ

具体的な事例として、2020年3月に、福島県浪江町において、世界最大規模のP2Gシステム「福島水素エネルギー研究フィールド」を竣工し、現在NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)による技術開発事業として「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発」を岩谷産業株式会社、東北電力株式会社、東北電力ネットワーク株式会社、旭化成株式会社とともに行っている。ここでは、電力系統の需給バランス調整と水素需要予測に基づいた最適運用の実証実験も行っており、電力系統安定化と水素製造供給という2つの価値提供と水素製造コスト低減を両立させる各種技術開発を進めている。

福島水素エネルギー研究フィールド(Fukushima Hydrogen Energy Research Field (FH2R)

福島水素エネルギー研究フィールド(Fukushima Hydrogen Energy Research Field (FH2R)

新たにCO₂を排出しない技術:P2C(Power to Chemicals)によるカーボンリサイクルの実現

最後に、CO₂を増やさない方法の一例をご紹介しよう。火力発電所や工場などの産業設備からは、エネルギーを生み出す際にCO₂が発生する。そのCO₂を回収し、電気分解技術で一酸化炭素(CO)に転換する。その後COと水素から有機材料を合成し、それをもとにジェット燃料などを製造する。このようにして、CO₂を資源に転換して、新たにCO₂を出さない技術を開発している。それが、東芝のP2C(Power to Chemicals)だ。

そんなP2Cはどのようなメカニズムで機能しているのだろうか?まず、①火力発電所などから出たCO₂を回収し、②電気分解技術で一酸化炭素(CO)に転換する。その後、③COと水素から有機材料を合成し、④それをもとにジェット燃料などの最終製品が作られる。最終製品は、一部リサイクルされるものを除けば、燃料として燃焼、または、廃棄物として焼却され、最終的にCO₂として大気中に放散される。放散されたCO₂は大気中のCO₂を回収可能なDAC(Direct Air Capture大気からCO₂を直接回収する技術)やバイオマス燃焼排ガスからCO₂を回収するBECC(Bioenergy with Carbon Captureバイオエネルギーを使って炭素を回収する技術)で再び回収する。このようなCO₂リサイクルにより,カーボンニュートラルに向け貢献する。

P2Cによるカーボンリサイクル

今回、カーボンニュートラル社会実現に向けた、東芝の取り組みについて紹介した。カーボンニュートラルは、個人だけでも企業だけでも達成し得ない。エネルギーを使用する私たち全体が、本気で取り組まなければならない課題だ。立ちはだかる壁はまだまだあるが、一つひとつ解決して前に進めていくことが東芝の存在意義「新しい未来を始動させる。」ことにつながっていく。その手を休めることなく、安全で安心して使える技術・ソリューションの提供を目指して進んでいく。

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