インドから世界へ、電力インフラを支えるインド送変電事業の挑戦!

2026/02/12 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 再生可能エネルギーの導入拡大やデータセンターの新設で高まる電力需要
  • 需要に応えるため、送変電事業では増産投資を進めている
  • インドの新規事業に挑む駐在員の奮闘
インドから世界へ、電力インフラを支えるインド送変電事業の挑戦!

エネルギーの脱炭素化への取り組みやAIの普及、デジタル化などにより、世界は今、かつてないほどの電力需要の高まりに沸いている。こういった背景を受けて東芝では、送変電機器の製造に注力している。その最前線に立つのが、インド ハイデラバードに拠点を置く東芝電力流通システム・インド社(以下、TTDI)だ。TTDIでは、電気を送るのに不可欠な送電用・配電用変圧器、開閉装置といった送変電機器の製造やEPC(設計・調達・建設)事業を行っており、急増する需要に応えるため、日々新たな挑戦が続いている。本稿では、インドで奮闘するキーパーソンに、生産体制を強化するインド送変電事業の「今」と「これから」を聞いた。

成長する送変電市場、設備投資を進める東芝電力流通システム・インド社

インド・ハイデラバード市内から車で約1時間半走らせたところにTTDIの工場はある。東京ドーム約13個分という広大な敷地では、発電所でつくられた電気を制御し、需要者へ届ける「変圧器」、「開閉装置」などの送変電機器を日々製造している。

東芝電力流通システム・インド社
東芝電力流通システム・インド社

「近年、再生可能エネルギーの導入・拡大やデータセンターの新設により、送変電機器の需要が急激に高まっています。市場規模は2025年に約3,980億USドル、2032年には約5,260億USドルに達する※1との予測もあり、今後10年間で飛躍的な成長が見込まれています」と、TTDIの送電用変圧器部門の責任者であるサンタヌ・ラヒリ氏は語る。

※1出典元:Fortune Business Insights

東芝電力流通システム・インド社 送電用変圧器部門長 サンタヌ・ラヒリ氏
東芝電力流通システム・インド社 送電用変圧器部門長 サンタヌ・ラヒリ氏

そうした旺盛な電力需要に応えるため、TTDIでは生産体制の強化を進めている。現在、TTDIではほぼフル稼働で送変電機器の生産を続けているが、一方でサプライチェーンの課題にも直面している。

「競合メーカーも増産している状況で、部材の供給業者も増産を進めていますが、需要が供給を上回っているため、部材調達のリードタイムが大幅に延びています。このままでは納期遅延のリスクが高まるため、設備投資を行い、一部工程を内製化するなど効率的に製生産できる体制を強化しています。具体的には、配電用変圧器の自動加工ラインの新設、送電用変圧器の工場拡張、避雷器の工場新設などを計画しており、今後1〜2年で生産能力を約1.4倍に拡大させる予定です」(ラヒリ氏)

製造する配電用変圧器
製造する配電用変圧器

2025年4月には、TTDIの拠点のあるテランガナ州政府と、この設備投資による雇用創出と人材育成に関する覚書を締結した。

「TTDIの強みは、東芝グループの高い信頼性、日本式の安全・品質基準やカイゼン活動の導入、さらに小型~大型の変圧器、開閉装置、避雷器など幅広い製品群を同一拠点で製造している点です。これらにより、競争力のある価格、短納期、高品質な製品・ソリューションを実現し、インド国内の他に北米、欧州など50か国以上のお客様に提供しています。今後も世界各地で高まる電力インフラの需要に対して、TTDIの強みを武器に製品を提供していきます」(ラヒリ氏)

TTDIの主要メンバーと、左から5番目がラヒリ氏
TTDIの主要メンバーと、左から5番目がラヒリ氏

インドで新規事業が始動

2025年8月、TTDIで新たな事業が始動した。技術者の小林 純氏は、「避雷器」のインド事業の立ち上げを託され、インドに赴任した。
インドで働き始めた当初は日本との働き方の違いに驚いたという。

インドでの働き方は、人と人のつながりが非常に強く、困りごとがあればすぐに関係者に連絡を取ってくれます。実際に働いてみて、その濃い人間関係やスピード感に驚きました。一方で、仕事の進め方には独特のリズムがあります。動き出しは早いのですが、フォローしないと最後まで走りきってくれないこともあります。だからこそ、進捗確認や連絡を密に取ることが欠かせません」(小林氏)

東芝電力流通システム・インド社 避雷器部門 小林純氏
東芝電力流通システム・インド社 避雷器部門 小林純氏

避雷器は、過電圧発生時に電気を地面に流して電圧を抑制することで、雷などの高電圧からインフラ機器を守る役割を果たす。東芝の強みは、その心臓部の酸化亜鉛素子にある。

「避雷器はインフラ機器に雷などの過電圧が侵入し、機器が故障しないように発生電圧を低く抑える必要があります。当社の酸化亜鉛素子はこの発生電圧を、他社製品より低く抑えることができ、また熱エネルギーへの耐性は世界トップクラスです※2。この酸化亜鉛素子を避雷器に使用することで、コンパクトで耐久性に優れ、さらにコストを抑えた製品を提供できるのが強みです」と小林氏は胸を張る。

※2 当社調べ

製造する避雷器と小林氏。避雷器には、東芝の強みである酸化亜鉛素子が使用されている
製造する避雷器と小林氏。避雷器には、東芝の強みである酸化亜鉛素子が使用されている

ゼロからの立ち上げと初受注

この新規事業の立ち上げには、もう一人のキーパーソンがいる。部門長の深野氏だ。遡ること8年前、日本で避雷器事業に携わっていた深野氏は海外拠点の必要性を痛感していた。

「当時、日本と中国の製造拠点で、日本は国内と東南アジア向け、中国は中国国内向けに販売していましたが、北米や欧州などの販路は弱く、特に高圧機器向け製品はコスト重視な市場のため、競争力が課題で長期的には厳しい状況になると感じていました。さまざまなデータを持ち寄って海外製造の必要性を社内で繰り返し説明した結果、好調な国内製造やインドの事業環境の改善という追い風を受け、ようやくインドでの新規事業のGOサインが下りました」(深野氏)

東芝電力流通システム・インド社 避雷器部門長 深野孝人氏
東芝電力流通システム・インド社 避雷器部門長 深野孝人氏

昨年8月には製造ラインが立ち上がり、製品の出荷も始まった。第一号の受注はフィジーの電力会社で、雷被害に苦慮しているとの問い合わせがあり、技術的な共有を経て受注に至った。現場では納期までに仕上げるため、TTDIと日本で避雷器の製造を行う浜川崎工場のスタッフが一丸となって取り組み、困難を乗り越えた。

「現地の仲間たちも笑顔で前向きに取り組んでくれました。ラインの立ち上げと同時に受注から製造、出荷までこぎつけ、現場の雰囲気は今非常に盛り上がっています。今後も日本で培ったノウハウや知見をインドに移管して生産体制を構築し、将来的には世界シェアでナンバー1を目指したいです」(小林氏)

世界各地でこれからも増え続ける電力需要。その裏側には、電気を「あたりまえ」に使えるようにするためにインフラを支える人たちの努力と挑戦があった。インドから世界へ、送変電機器の提供を通じて電気を届けていくため、TTDIの挑戦はこれからも続いていく。

避雷器部門メンバーと
避雷器部門メンバーと

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