SDGsの取り組みがもたらす、 新たな世界の姿とは
2017/12/06 Toshiba Clip編集部
この記事の要点は...
- 2030年、さまざまな課題を乗り越えて人類は社会を存続できているのか?
- 世界が一丸となって取り組む共通の目標がSDGs
- 自社の強みを生かした社会貢献に向け、日本企業にも大きな期待が寄せられている
「我々は、地球を救う機会を持つ最後の世代になるかもしれない」
これは、2015年9月に国連の「持続可能な開発サミット」で宣言されたメッセージだ。このサミットで注目を集めたのが「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals、エスディージーズ)」。貧困や格差をなくし、持続可能な社会を実現するため、国連に加盟する193カ国が全会一致で採択している。SDGs は単なるキーワードではない。2030年までに世界が一丸となって取り組むためのアクションプランだ。
地球に生きる者として共通の取り組み――SDGsの背景
「貧困をなくそう」「気候変動に具体的な対策を」「平和と公正をすべての人に」などといった17の目標が掲げられ、その下に169ものターゲットが記載された。そこには、「1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」「小売り、消費段階での食料の廃棄を半減させる」といった、具体的な行動目標が定められているのだ。
現代社会は大量生産・大量消費のサイクルを経て豊かさを追い続けてきた。その先に浮上したのが、未来社会の危機だ。化石燃料を大量に使って温室効果ガスを排出したため、温暖化が進行。スーパー台風や巨大なハリケーン、集中豪雨が多発し、海面上昇も懸念されている。地球は人類、そして動植物が多様性を保ちながら住める環境であり続けられるのか。
さらに、グローバル化がもたらした経済格差、社会の分断も深刻な問題に。国際的なテロ、難民の大量発生も見過ごせない。インターネットユーザーが約30億人に及び、ネットワークによってつながりを増す一方、世界はますます流動化し、不安定化している。2030年に向け、私たちが「持続可能な」社会を維持するために必要なものとは? 諸問題への回答の一つがSDGsなのだ。
もともと、国連は2001年に貧困の削減などを目指す開発指針「ミレニアム開発目標」(MDGs)を策定していたが、国連の一部専門家が主導したもので、先進国と新興国が足並みを揃えた取り組みではなかった。SDGsはその反省を生かし、「地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)」メッセージがうたわれている。
我が国でも安倍晋三首相を本部長とする「SDGs推進本部」が2016年から始動。ジェンダーの平等、経済格差の是正、安全で働きがいのある仕事の提供など、日本で取り組みがあまり進んでいない課題が実施指針の具体的施策には盛り込まれている。目標の達成に向けて産業界、企業にかかる期待は大きい。それは裏を返せば、さまざまな企業にとっての大きなビジネスチャンスでもある――。
2030年に向け、SDGsを考える企業に求められる役割とは
現在、さまざまな企業がSDGsと事業の関係を見直し、社会にいかに貢献できるかを模索している。その取り組みには実はチャンスもひそんでいる。例えば、世界が共通して抱える課題の解決、求められるサービス像を探ることは新事業のヒントに直結するかもしれないし、あらゆるステークホルダーとの間に対話が生まれ、連携が強まるというメリットも期待できるだろう。市場開拓や深耕に加えて企業価値の向上、ブランディング、従業員のモチベーション向上など、企業がSDGsに取り組むべき理由には事欠かない。
また、SDGs達成を目指す中で生じる問題、そしてソリューションは社会・環境・経済とさまざまな分野にまたがって互いに関連し合っており、一組織だけで解決するのは困難だ。行政や業界団体、NPO、そして企業が役割を担い、それぞれの強みを生かした取り組みが求められる。
東芝もビジネスと教育においてSDGsの取り組みを活発化させてきた。事業の強みを生かした課題解決のアプローチとして、代表的な取り組みを紹介しよう。
●アフリカにおける地熱発電事業
東芝は、2013年にケニア最大の地熱発電所であるオルカリア1号、4号地熱発電所に蒸気タービンと発電機を納入した。
地熱発電はマグマの熱を利用するためにCO2排出量が比較的少なく、持続的で安定したクリーンエネルギー源として期待されている。
エチオピア、タンザニア、ジブチ、ウガンダにおける地熱発電事業の協業に関する覚書を締結して地熱事業開発や人材育成を共同で進めるなど、地球温暖化の抑制と、アフリカの人々の豊かな暮らしの実現に向けて貢献していく。
<貢献する開発目標>
7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
9:産業と技術革新の基盤をつくろう
17:パートナーシップで目標を達成しよう
ケニア オルカリア4号地熱発電所
●ゲリラ豪雨・竜巻の発生を予測する気象レーダ
大阪大学、大阪府との共同研究でゲリラ豪雨や竜巻などの発生を検知するシステムを構築。雨の立体的な分布を短時間で観測できるので、流域の避難誘導、下水道の安全に大きな役割が期待されている。
<貢献する開発目標>
13:気候変動に具体的な対策を
17:パートナーシップで目標を達成しよう
11:住み続けられるまちづくりを
フェーズドアレイ気象レーダ
安価で信頼できるエネルギーの提供を目指し、グローバルパートナーシップを組んで「住み続けられる街づくり」に貢献。国内でもゲリラ豪雨対策を産学連携によって推し進めてきた。社会インフラ領域、エネルギー領域など、東芝の注力事業とSDGsとの親和性は高い。
●教育
東芝の注力事業は、SDGsに貢献できるチャンスも多いことから、新人技術者向け研修やe-LearningにSDGsを盛り込んでいる。また、社員を対象にお嬢様芸人のたかまつななさんによるSDGsお笑い講演会を開催するなど、意識の醸成をさまざまなアプローチで進めている。
目標を達成し、社会との関わりへの意識を高めていくこと。それこそが世界的・社会的なニーズに基づいた社会貢献に直結する。17の目標を目指して世界が動き始める中、未来の変革に向けて東芝の挑戦も始まったばかりだ。