防犯カメラにAIを活用 迷子の捜索も簡単に?!

2018/01/10 Toshiba Clip編集部

この記事の要点は...

  • 複数カメラの映像から同一人物を把握できる技術を東芝が開発
  • AIの活用で人物の行動を広範囲に把握でき、キーワード検索も可能に
  • マーケティングへの活用も期待されており、2018年度に実用化の見込み
防犯カメラにAIを活用 迷子の捜索も簡単に?!

駅や空港などの公共交通機関から商店街、通学路に至るまで、さまざまな場所で設置が進む防犯カメラ。犯罪の抑止や事件の早期解決、未然防止に活用する動きは活発で、今後もさらに浸透していくのは確実だ。ネットワークでつながったIPカメラは2020年には国内で約2,600万台に及ぶとの予測もある(※注1)

 

そこで課題になるのが管理業務の省力化・効率化だ。すべての映像を同時に監視するには限界がある。収集したい情報が1台の撮影範囲にとどまらないこともあるだろう。防犯カメラがシステムとして私たちの生活に浸透する中、膨大な映像の解析を省力化しつつも高精度に管理する仕組みが求められている。

 

注1:矢野経済研究所 IPカメラ国内市場に関する調査結果(2016)

このような要求を背景に登場したのが、東芝による「複数のカメラ映像から人物ごとの移動経路を把握するAI技術」である。本技術を開発した研究開発センター メディアAIラボラトリーの柴田智行氏に、本技術の概要を具体的に解説していただこう。

 

不審な人物が1台のカメラの撮影範囲から離れて動き回っていても、いろいろなカメラで撮った映像を横串にして移動経路が把握できます。具体的には、映像の中でチェックしたい人物をクリックすると、その人がどのように移動したのか、複数のカメラをまたいで追い続けられるのです。これは、カメラに映っているすべての人物で可能です」(柴田氏 以下同)

東芝 研究開発本部 研究開発センター メディアAIラボラトリー 研究主務 柴田智行氏

東芝 研究開発本部 研究開発センター メディアAIラボラトリー 研究主務 柴田智行氏

Person Re-identification人物対応付け

 

従来から、1台のカメラに写った特定の人物の画像認識は可能だったが、今回開発した技術により複数台のカメラの映像を関連付け、横串での分析が可能になった。さらに、映像に写ったすべての人を認識し、移動軌跡を追えるのが本技術の斬新さだ。その精度は88.4%に及び、また従来の技術よりも圧倒的に高速である。

 

この動画は2017年8月7日に公開されたものです。

「白い服」「長髪の男性」といったキーワードから画像の人物を絞り込める

高精度の解析を実現させたのは東芝のコミュニケーションAI「SATLYS(サトリス)」。柴田氏らはAIの活用によって立ちはだかる技術的な課題をクリアした。

 

「同じ人でも、別のカメラで撮影すると画角や明るさ、色味や姿勢によってまったく違う人に見えることがあるのは皆さんもご存じでしょう。個人が特定できるだけの特徴を抽出する手法(※図1)、複数の画像から、特徴が重なったときにだけ同一人物だと特定する手法(※図2)を開発。さらに、複数カメラ間で同一人物をマッチングさせる判定手法(※図3)を実現したことがブレイクスルーになりました」

図1:場所やカメラが違う条件でも同一人物が類似する特性を表現する特徴量を抽出する手法

図1:場所やカメラが違う条件でも同一人物が類似する特性を表現する特徴量を抽出する手法

カメラ内で追跡した複数枚の画像から、同一人物を高速に判定する手法

図2:カメラ内で追跡した複数枚の画像から、同一人物を高速に判定する手法

図3:複数カメラ間で同一人物をマッチングさせる判定手法

図3:複数カメラ間で同一人物をマッチングさせる判定手法

従来の手法では膨大な処理時間がかかっていたが、新たに開発した手法によって計算量を削減。高い精度を実現しながら処理時間は大幅に短縮した。

 

さらに、キーワードによる絞り込み機能も実装。迷子を捜すアナウンスのような感覚で『白のワンピースで赤いリュックを背負った女の子』といったキーワードを指定すると、その特徴から人物を絞り込み、居場所や移動経路を特定できる。

 

この言語検索では、技術者が操作せずとも、現場の作業者がテキストを入力して容易に探すことが可能だ。簡便なインターフェースはITリテラシーを問わず、汎用性が高い。これは商業施設など実際の運用においても大きなメリットをもたらすだろう。

東芝が培ってきた画像認識技術がベースになった

さまざまな分野のスペシャリストが刺激を与え合う環境も、今回のプロジェクトを強力に推し進めた。「画像認識の研究者がこれだけ集まっている企業は国内では他にないでしょう」と柴田氏が自負する研究開発センターには、画像認識や音声解析、自然言語処理の技術者が揃う。手書きの郵便番号を読み取って自動仕分けする郵便区分機を世界に先駆けて開発したのは1967年のこと。以来、AIの技術開発で業界をリードし続けている。

 

「世界トップレベルの研究者がいて、国際学会での発表実績も重ねてきました。私たちが画像解析で壁にぶつかっても、周囲に相談すると『こういう切り口があるんじゃない?』『このアプローチは?』など、どんどんとアイデアが出てきます。また、ラボの中にこもることもありません。お客様のリアルな声を聴くために、事業部の担当者に連れて行ってもらって外部の声を収集できる機会もあります」

 

お客様の意見を収集し、顧客視点でビジネスの完成型をイメージする。理想的な開発環境とオープンな組織風土が本技術の利便性、カスタマイズ性を高めている。今後もさまざまなシーンでの汎用性を高めていく構えだ。

 

「同じ制服を着た人が多数いる場合、個人を見極めるのは人間の眼でも困難です。そして、本技術でもそれは同じ。たとえば、通勤ラッシュ時の駅など、多くの人が同系色のスーツやコートを着ているシーンです。認識の精度は現時点でも担保できていますが、特徴抽出や処理速度を向上させ、さらに使いやすくなるように開発を進めます」

マーケティング分野への活用にも期待

本技術は2017年8月の発表から多くの企業に注目され、警備会社などと実証実験の準備を進めている。また、海外の小売業大手からも打診があり、商談化の検討も進んでいる。

 

東芝が培ってきた画像認識技術が進化し、多くの業種・業態で活用されていく。本技術には歴史と最先端の融合がある。不審人物の検知特定、迷子捜しといったセキュリティニーズにとどまらず、マーケティング分野での活用にも期待がかかる。

マーケティング分野での活用イメージ

「東芝にはリテールソリューション、クラウドサービスを提供するグループ会社もありますので、セキュリティでの活用として安心・安全を担保するのはもちろんのこと、業種・業態を問わず、いろいろなサービスとして提供していきたいです。エンドユーザーの満足度が向上するような、ワクワクするサービスにもアイデアを出し合っていきたいですね」

 

* SATLYS(サトリス)は、東芝デジタルソリューションズ株式会社の日本またはその他の国における登録商標または商標です。

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